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トウキョウ百景

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東京生まれ東京育ちの30代。 太と環は、それぞれの東京で生まれ育ち、二十歳の時に東京で出会いました。 2人が見てきた東京の景色、東京での物語を、紹介していきます。 ぼくらが育…
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2023年11月の記事一覧

雑司ヶ谷にあるお墓は怖くない

雑司ヶ谷にあるお墓は怖くない

友達の学がカナダから帰ってきて、東京で遊んでいた。あちこち歩き回っていた私たちは、池袋から逸れ、なぜか雑司ヶ谷のお墓に足を踏み入れた。雲一つない秋晴れで、午後の陽光が眠気を誘うような日に来るようなところではないと感じつつ、次の目的地に向かうためには通るしかなかったのだ。

雑司ヶ谷にあるその名も「雑司ヶ谷霊園」は、東京ドーム一個分とか言いたくなるような広大な霊園で、碁盤の目のようにお墓が整然と並ん

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品川シーサイドの公園で、同級生のヤンキーがかけてくれた言葉

品川シーサイドの公園で、同級生のヤンキーがかけてくれた言葉

「あ、やめろーーー!」
と思いっきり叫んだけれど、時すでに遅しだった。
クラスメイトの寺田が壁に投げつけた僕のスクールバッグの中身を見ると、友だちから借りたばかりのORANGE RANGEのロコローションのCDがパキッと割れていた。

寺田は中学で出会った同級生のヤンキーで、入学直後から目立ちまくっていた破天荒なやつだった。
自分の衝動を押さえることができず、相手がクラスメイトでも先輩でもたとえ先

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吉祥寺で表舞台に立って泣いた日

吉祥寺で表舞台に立って泣いた日

体調は悪かった。正直なところ外に出ていいかどうかはギリギリな日だった。

2023年10月28日、吉祥寺のPARCOでやったZINEフェスに出展した。太と3年以上にも及ぶこのOLiの活動を、手のひらサイズの折本にまとめてみたのだ。一人で出展するのは心許なかったので、親友の美香とマサにも絵を販売してもらい、一緒に当日を迎えた。ただし、私は5日ほど前から体調を崩し、ようやく稼働できるようなギリギリの体

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青空の下、永福町の公園で思ったこと

青空の下、永福町の公園で思ったこと

6年前の夏の終わり。
パワハラにあって、自主退職に追い込まれた。
一時期は無職になってしまうかと思われたけれど、なんとかギリギリのところで次の転職先が決まった。

その転職先で働き始める、前日のことである。
初出勤日が近づけば近づくほど、僕は超不安になっていた。

ひょっとすると、転職先にも同じような気質の上司がいて、まためちゃくちゃに否定される毎日が待ち受けているのではないか。
食事が喉を通らな

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