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オオキユーヒ三題噺まとめマガジン

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2022年9月の記事一覧

147.三題噺「四角形、マッサージ、注意書き」

147.三題噺「四角形、マッサージ、注意書き」

「あ、あのさ。今から時間あるかな?」

 昼休み、同クラさんから声をかけられた。

「どうしたの?」

「い、一緒にお昼を食べたいなって思って……。ダメ、かな?」

 特に断るつもりもなかったから、僕は同クラさんとお昼を食べることにした。

 中庭のベンチに座り、同クラさんは魅力的な色とりどりのおかずが詰められている小さな四角形の弁当箱をひろげた。

「お、おいしそう……」

 思わず喉がごくりと

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146.三題噺「中間テスト、フリスビー、ゲーム機」

146.三題噺「中間テスト、フリスビー、ゲーム機」

 中間テストを終えた僕は、先輩と空き教室にいた。

「中間テスト終わったね」

「そうですね」

「九月が終わっちゃうね」

「そうですね」

「文化祭楽しみだね」

「そうですね」

「……後輩くん、空返事じゃない?」

 それもそうだ。僕は先輩と格闘対戦ゲームをしているのだから。
 画面と手元に集中する必要があるから返事がおざなりになるのも仕方がないというものだろう。

「いい加減、私たち付き

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145.三題噺「ボディチェック、グライダー、魔法使い」

145.三題噺「ボディチェック、グライダー、魔法使い」

 中間テスト二日目を終え、昇降口に行くと後輩ちゃんがぼうっとした様子で立っていた。

「後輩ちゃん? 大丈夫?」

「あ……。先輩だぁ」

 後輩ちゃんは突然僕に抱きついてきた。

「先輩の匂い……。落ち着く」

「こ、後輩ちゃん……?」

 僕の手は、後輩ちゃんの細い腰に回すわけにもいかず、行き場を失い空中を彷徨う。

 数秒経って、後輩ちゃんはハッと離れた。

「い、今のはボディチェックです!

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144.三題噺「レジェンド、国語、ドリル」

144.三題噺「レジェンド、国語、ドリル」

 中間テスト初日の今日、束の間の解放感に包まれている教室で、僕は隣の席の同クラさんを見た。

「同クラさんはテストどうだった?」

「えっと……。いつも通り、かな?」

 そっか……。つまり満点か。

「同クラさんって、実は神様から能力貰ってたり、人生二回目だったりしないよね?」

「えっ? 急だね。どうしたの?」

「いつも学年一位でしょ? だからチートだなって思って」

 そんな冗談を言ったら

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143.三題噺「インターネット、ペーパーナイフ、震える手」

143.三題噺「インターネット、ペーパーナイフ、震える手」

 僕は先輩が占領している空き教室にいた。
 強制連行された結果だ。これは逃れられない災害だし、仕方がない。

「今日は特に遊ぶつもりじゃないんですね」

「そーだねぇ。後輩くんと一緒にいたかっただけだから」

 先輩は座って机にぐでーっとしている。

「後輩くん。インターネットタトゥーは怖いんだぞぉ?」

「突然ですね。実体験ですか?」

「ちがうよ。後輩くんが黒歴史を量産しないように、先輩らしく

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142.三題噺「引く、風呂、神」

142.三題噺「引く、風呂、神」

 僕は後輩ちゃんと通話をしながら勉強をしていた。
 ちなみに後輩ちゃんはベッドでごろごろしているらしい。

 もうすぐ中間テストだけど、後輩ちゃんは大丈夫なのかな。
 もしかしたら忘れているのかもしれない。生徒会選挙があったし……。

 これは先輩として後輩の面倒を見てあげなければ。

「後輩ちゃん。今から僕の家に来ない?」

「え、えええ! ど、どうして急に……。で、でも、これってチャンス到来か

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141.三題噺「三つ編み、固まる、ラジオ」

141.三題噺「三つ編み、固まる、ラジオ」

「同じクラスの男の子に告白されたの」

 同クラさんは急にそんなことを言った。

「えっ!? ……へ、返事は?」

「断ったよ。私には好きな人がいるから」

「それって……。誰?」

「もぅ。ここまで言って気づかないの?」

 同クラさんはちょっとだけいじけて僕の耳に口を近づける。

「……君のことだよ」

 そこで僕の意識は急浮上した。

「はっ……! 夢、か……」

 気になってる女の子から告

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140.三題噺「スクラッチ、散らばる、朝寝坊」

140.三題噺「スクラッチ、散らばる、朝寝坊」

 僕のもとに後輩ちゃんが慌てて駆け寄ってくる。

「ごめんなさい。朝寝坊しちゃいました!」

 祝日の今日、学校が休みだから僕は後輩ちゃんと朝から待ち合わせをしていた。

「気にしなくて大丈夫だよ」

 さっきまで目の前の広場でライブをしていた。
 今は転換時間だから比較的静かだけど、さっきはDJがいて、かっこよくスクラッチをきめていて熱かった。

 パフォーマンスは圧巻で、退屈することはなく、む

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139.三題噺「まとまる、ページ、旅路」

139.三題噺「まとまる、ページ、旅路」

「本当に終わってしまったんだな」

 生徒会長をしていた俺は、生徒会室の窓から見る景色がこれで最後なのかと感慨深くなり、呟いた。

 受験というビッグイベントを控えているが、それも終わればあっという間に卒業だ。

 生徒会長から元生徒会長へ。元高校生へ。
 時間と共に立場も変わっていくのだろう。

「やはり、ここにいたのか」

「……先生。顔出すなんて珍しいっすね」

「こんな日くらい生徒会顧問と

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138.三題噺「万札、攻撃、応援」

138.三題噺「万札、攻撃、応援」

 生徒会選挙最終日の今日、朝のHRが始まる前に僕と後輩ちゃんは、生徒会室にいた。

 もうできる事はないし、待つしかないけど、後輩ちゃんはそうでもないみたいで……。

「万札で、こう……ほっぺを往復ビンタすれば財力の力で屈服させて投票してもらえますかね?」

「それは買収とか賄賂って言うんじゃないかな。よくないね」

「それじゃあ、直接拳で攻撃するとか?」

「うん。やめようか。今日の後輩ちゃんの

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137.三題噺「星座、太鼓判、セイウチ」

137.三題噺「星座、太鼓判、セイウチ」

 僕は掲示板を見て、緊張していた。
 なぜなら……。

「ついに今週、新生徒会のメンバーが決まるんですね……」

 いつの間にか隣にいた後輩ちゃんが言った。

「そうだね。胃が痛いよ」

「先輩は生徒会長当選確実じゃないですか」

「そうとも言えないよ。他にも立候補者いるし」

「でも、実績はないし、公約だって曖昧。内申点目当てなのは明らかじゃないですか」

「それはそうなんだけど、何があるか分か

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136.三題噺「前人未到、夕顔、力」

136.三題噺「前人未到、夕顔、力」

 祝日で学校が休みだからと、自習を終えてから妹が呆れるくらいダラダラしていた時だった。

 先輩から電話がかかってきた。

「もしもし?」

「──力が、欲しいか?」

「は?」

「だからぁ〜。後輩くんは力が欲しい?」

「いえ、別にいらないです」

「そっかそっか。それなら、一緒にボウリングしない?」

 それなら、が何も繋がってないけどボウリングは楽しそうだったから行くことに決めた。

 ア

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135.三題噺「初恋、句読点、ハンドボール」

135.三題噺「初恋、句読点、ハンドボール」

 僕は後輩ちゃんに誘われてハンドボールスクールの体験に来ていた。

「先輩、今日は一緒に来てくれてありがとうございます」

「たまにはちゃんと運動して汗掻いたほうがいいと思ったからちょうどよかったよ」

 説明を聞きながら一緒に受けている人たちを見てみる。

 高齢の人もいれば、大学生っぽい人もいて、最年少はたぶん僕と後輩ちゃんだ。

 僕はその中でも大学生らしき男女が気になった。

「あの男の人

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134.三題噺「雨の中、ケーブル、HIPHOP」

134.三題噺「雨の中、ケーブル、HIPHOP」

 出かけていた僕は、突然の雨に降られてしまって、仕方がなく近くのコンビニで雨宿りすることにした。

 そこには、偶然にもひとりの女の子がいた。

「同クラさん?」

 僕が声をかけると同クラさんは「あ」とぷっくりしたピンクの唇を開いて、イヤホンを外した。

「まさか降ると思わなかったから傘、忘れちゃって、雨宿りしてるの」

「秋の天気は春と似て気まぐれって言うからね。僕も一緒に雨宿りしていい?」

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