144.三題噺「レジェンド、国語、ドリル」
中間テスト初日の今日、束の間の解放感に包まれている教室で、僕は隣の席の同クラさんを見た。
「同クラさんはテストどうだった?」
「えっと……。いつも通り、かな?」
そっか……。つまり満点か。
「同クラさんって、実は神様から能力貰ってたり、人生二回目だったりしないよね?」
「えっ? 急だね。どうしたの?」
「いつも学年一位でしょ? だからチートだなって思って」
そんな冗談を言ったら、くすっと笑われた。
「君はどうだったの?」
「いつも通りと思ってたけど、ケアレスミスに気づいて落ち込んでるところ」
「明日からは気をつけないとね。わ、私もよくする……。うん、よくするよ?」
「そうなの? 意外だな」
僕が親近感を抱いた目で見ると、同クラさんは後ろめたそうにふいっと目を逸らした。
これはまさか、と思って鎌をかけてみる。
「同クラさんはどんなケアレスミスしたことある? 僕は解答欄が一個ずつずれてたことがあって焦ったのが一番かな」
「そ、そんなことあるんだ……」
「しかも気づいたのがテスト終了五分前だったから焦ったよ」
「へ、へぇ。大変だったんだね」
よし。信じてくれた。
「そういえば、うちの高校入試で名前書き忘れた人がいたらしいよ」
「わ、私もそんなことあったかな〜……」
「そうなんだ。まぁ、全部嘘なんだけどね」
「えっ!? そ、そうだよねっ。わ、私も流石に名前の書き忘れはないかな〜?」
同クラさんはドリルみたいな掌返しをした。
「いい加減苦しいんじゃない? 実はケアレスミスしたことないでしょ?」
「はい。ありません。ずっと満点しか取ったことないです……」
申し訳なさそうに言ってるけど、かなりすごいことだ。
敗北を知りたいとはこういうことなのかもしれない。
うぅぅ……。と唸って同クラさんは恨めしそうに僕を見た。
「騙すなんて酷い……。私たちの気持ちにも気づかないままだし……」
なんのことだろう。国語の問題かな?
「同クラさんもそういうこと思うんだ。僕も作者の気持ちは永遠にわからないままだよ」
「……君の鈍さは、現代の生きる伝説、天然記念物。つまりレジェンド級だよ」
「えっと……。うん、ありがと?」
急にソシャゲの話に変わって僕は困惑した。
もしかしたら同クラさんは疲れているのかもしれない。
そんなことを伝えたら同クラさんに教科書の角で叩かれそうになった。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
⤵︎
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?