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137.三題噺「星座、太鼓判、セイウチ」

 僕は掲示板を見て、緊張していた。
 なぜなら……。

「ついに今週、新生徒会のメンバーが決まるんですね……」

 いつの間にか隣にいた後輩ちゃんが言った。

「そうだね。胃が痛いよ」

「先輩は生徒会長当選確実じゃないですか」

「そうとも言えないよ。他にも立候補者いるし」

「でも、実績はないし、公約だって曖昧。内申点目当てなのは明らかじゃないですか」

「それはそうなんだけど、何があるか分からないのが人生だからさ」

「私の方が不安です」

「後輩ちゃんは僕の後釜狙いだよね?」

「はい。仲良しな先輩の後継になれれば分からないことも聞きやすいですから」

 僕は思い出す。
 そう言った後輩ちゃんの演説は、完璧以外の何者でもなかった。

「絶対、後輩ちゃんは大丈夫だよ」

「なんか、先輩に太鼓判を押してもらえると本当に大丈夫な気がしてきます」

 口元に手を当ててコロコロ笑って、後輩ちゃんはご機嫌に一年の教室へ向かって行った。

 僕も少し歩いて自分の教室に入ると、そこには意外な光景があった。

 先輩と同クラさんが話していたのだ。
 仲良しなのは知ってるけど、こうして二年生の教室で話してる姿はあまり見ない。

「先輩、何か用事ですか?」

「あ! そうだったそうだった。これ!」

「……お守り?」

「う、うん。先輩と祈願しに行ったの」

 疑問を口に出すと、同クラさんが答えた。

「えっと……。どうして僕にお守りを?」

「後輩くんの生徒会長当選祈願だよ」

 先輩が後ろ手を組んで言った。
 ふたりの気持ちが乗せられたお守りがやけにずっしりと感じた。

「嬉しい、です……」

 こんなにも思ってもらえるなんて、僕はちょっと泣きそうになってしまった。

 そんな表情を見られるのは恥ずかしくて、僕は顔を背けた。

 あ、そうだ! と、同クラさん。

「星座占いで未来を占ってみようよ」

 同クラさんはそう言って、カバンから占いの本を取り出した。

 いくつかの項目に答えて結果を待つ。

「えっと……」

 同クラさんは結果を前に口籠った。

 結果は……。かなり不吉な未来だった。
 僕はショックすぎてセイウチみたいにキョトンとした顔になった。

「大丈夫だよ後輩くん!」

「そ、そうだよ! 気にしないで!」

 僕は二人から慰められた。
 きっと……。大丈夫だよね?

 一抹の不安を覚えるものの、気づけば緊張は吹っ飛んでいた。



作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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