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141.三題噺「三つ編み、固まる、ラジオ」

「同じクラスの男の子に告白されたの」

 同クラさんは急にそんなことを言った。

「えっ!? ……へ、返事は?」

「断ったよ。私には好きな人がいるから」

「それって……。誰?」

「もぅ。ここまで言って気づかないの?」

 同クラさんはちょっとだけいじけて僕の耳に口を近づける。

「……君のことだよ」

 そこで僕の意識は急浮上した。

「はっ……! 夢、か……」

 気になってる女の子から告白されるという夢のような展開が夢オチだったことに、僕はちょっと落ち込んだ。

 現実だと勘違いしていた僕の心臓は未だバクバクしている。

 そうだ。図書館に勉強しに行こう。

 静かな空間にいれば気持ちも落ち着くだろうし、もうすぐ中間試験だ。

 さっそく図書館に着いて自習スペースに向かうと、まさかまさかの同クラさんがいた。
 今日は髪の毛を三つ編みにしていた。

「一緒に勉強しよ?」

 同クラさんは空いている隣の席を指した。

「じゃ、じゃあ、お邪魔しようかな……」

 僕は座って勉強道具を取り出した。
 静かな空間、隣には夢の中で告白してくれた気になる女の子。
 僕の鼓動は落ち着く暇がない。

 ちらっと横を見ると、同クラさんは髪を耳にかけていた。
 その仕草が色っぽくて、僕は目を離せなくて固まる。

「ん? どうしたの?」

 その質問にも返事ができなかった。

 同クラさんが顔を近づけてくる。
 あ、あれ? このシチュエーションって、今日見た夢と似てる。

 もしかして、正夢になってしまう!?

 聞こえたのは告白……では当然なかった。

「大丈夫? 具合悪いの?」

 僕の前髪が掬い上げられ、おでこに少し冷たい手が当てられた。

 その刺激に僕の体はびくっと跳ねた。
 同クラさんはそんな僕の様子がおかしかったのか、くすくすと笑った。

「やっと戻ってきた。なに考えてたの?」

 言えない。夢で同クラさんに告白されたから、現実でもそうなるかもしれない、なんて。

「ちょっと体も熱いみたいだけど、風邪?」

「大丈夫……。なんでもないよ……」

 僕はそう言って勉強に集中しようという姿勢だけは見せた。

 結局、勉強は全然捗らなかった。
 同クラさんのことで一杯な頭に隙間なんてなくて、何も記憶できなかった。

 いや、ひとつだけ覚えていることがある。

「集中できない時は、ラジオを聞きながら勉強するのがおすすめだよ。私もよくしてる」

 というアドバイスだ。これも同クラさん関連の情報だというのは、後から気づいた。



作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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