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146.三題噺「中間テスト、フリスビー、ゲーム機」

 中間テストを終えた僕は、先輩と空き教室にいた。

「中間テスト終わったね」

「そうですね」

「九月が終わっちゃうね」

「そうですね」

「文化祭楽しみだね」

「そうですね」

「……後輩くん、空返事じゃない?」

 それもそうだ。僕は先輩と格闘対戦ゲームをしているのだから。
 画面と手元に集中する必要があるから返事がおざなりになるのも仕方がないというものだろう。

「いい加減、私たち付き合っちゃう?」

「そうで……え?」

 僕の操作が止まった瞬間、先輩に倒された。

「なんてね。冗談だよ〜」

 先輩はお腹を抱えて笑っている。

「冗談言わなくても先輩の圧勝じゃないですか。僕なんて全力でやっても全敗ですよ?」

 ゲームをあまりしないとはいえ、たぶん知り合いの中で最弱じゃないだろうか。

「本当に冗談かは私のみぞ知るんだけどね」

「はいはい。冗談なんですね」

「あ、信じてくれないの?」

「姑息な手段を使う人は信じられません」

「あはは。信頼度が下がっちゃった〜」

 ひとしきり笑って先輩はゲーム機を置いた。

「ゲーム飽きちゃったね。どうしよっか」

「僕、仕事あるので生徒会室行きますね」

「ダーメ。それ嘘だって私知ってるんだよ」

 先輩は立ち上がってダンボールを漁り出す。

「なんで生徒会事情を知ってるんですか」

「後輩ちゃんから聞いたんだ〜」

 僕は後輩ちゃんに売られたのかもしれない。
 いつも先輩の犠牲になるのは僕だ。

「たまには他の人と遊んだらどうですか?」

「やだ。後輩くんと遊ぶのが一番楽しいんだもん。そんなこと言わないでこれで遊ぼ?」

 先輩の手にはまあるいフリスビー。
 僕は思ってもない不満を言うことをやめて大人しく先輩に着いていった。

 校庭の隅で僕らはフリスビーを投げ合う。

 野球のバッドにボールが当たる音やサッカー部の掛け声、吹奏楽部の演奏が遠くから聞こえる。
 なんだか……。

「青春だね」

 先輩も同じことを考えていたみたいだ。

「私とばかりじゃなくて、後輩くんも友達とか、他の女の子と青春したかった……?」

 どうやら僕が冷たい反応ばかりしているせいで不安がらせてしまったみたいだ。

 先輩との青春も悪くはない。
 いや……。これじゃ冷たいか。

「先輩との青春は最高ですよ」

「そっか……。嬉しい」

 先輩は幸せそうにはにかんだ。

 僕たちはフリスビーを投げながらいつまでも他愛もない話をして青春を謳歌した。



作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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