139.三題噺「まとまる、ページ、旅路」
「本当に終わってしまったんだな」
生徒会長をしていた俺は、生徒会室の窓から見る景色がこれで最後なのかと感慨深くなり、呟いた。
受験というビッグイベントを控えているが、それも終わればあっという間に卒業だ。
生徒会長から元生徒会長へ。元高校生へ。
時間と共に立場も変わっていくのだろう。
「やはり、ここにいたのか」
「……先生。顔出すなんて珍しいっすね」
「こんな日くらい生徒会顧問としての仕事をするか、と思ってな」
「なるほどっす」
「っていうのは建前だ」
「何か用事でも?」
「君に伝えたいことがある」
先生は珍しく真剣な顔をしている。俺はそれを受け止めるために背筋を正した。
「人生という旅路に、この一年間の経験が活きることはきっとある。たくさん苦労をしたと思うし、その分だけ喜びもあったと思う。なんにせよ、君はよく頑張った」
おつかれさま。そう言って、先生は俺の首に手を回して胸元に抱きしめた。
少し背伸びをしているのが可愛いと思うよりも、今は感無量の気持ちで胸がいっぱいだ。
今までの経験は確実に忘れられない大切な記憶の一ページだ。
抱きしめられた時間は一瞬だったのかもしれないし、数分だったのかもしれない。
俺は先生から離れた。
「次はあいつが生徒会長か」
「色々、大変そうっすね」
「あの子も少しずつ成長はしてるみたいだ。気負わず見守るとするよ」
噂をすれば影。しんみりとした空気になった生徒会室に、新生徒会メンバーが入ってきた。
幼馴染で無自覚にハーレムを築いているこいつは生徒会長に就任した。その後輩の女の子も無事当選した。
「新生徒会としてこれから一年間、学校をよりよくしていってもらいたい。任せたぞ」
「何言ってるのマカロンくん。しばらくは引き継ぎ作業をしてもらうし、当然僕がわからないことあったら頻繁に生徒会室に呼び出すよ。新生徒会がまとまるまで、いや……卒業まで付き合ってもらうからね」
立場は変わったものの、まだ俺の生徒会長としての仕事は終わってはいないらしい。
「やれやれ。手間がかかる幼馴染だ」
そう言う俺の口角は上がっていた。
最後まで俺の目が赤く、腫れぼったいことについては誰も言及しなかった。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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