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横浜FC観戦記2024

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2024年J2第26節横浜FC-V・ファーレン長崎「追い抜かせる訳にはいかない」

2024年J2第26節横浜FC-V・ファーレン長崎「追い抜かせる訳にはいかない」

前半アディショナルタイムだった。長崎の縦パスが長崎エジガル・ジュニオに入る。ボニフェイスはマークをしていたが入れ替わられ、裏に走りこむ長崎マテウス・ジェズスにラストパス。このボールを受けた彼は、GK市川との1対1を迎えた。今シーズン、中盤の選手でありながら何度もスーパーゴールを決めている名手と対峙。
市川は少しずつ相手との間合いを詰める。そうしないとゴールのスペースががら空きのままだからだ。非常に

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2024年J2第25節横浜FC-ジェフユナイテッド千葉「2分で未来は変えられるが」

2024年J2第25節横浜FC-ジェフユナイテッド千葉「2分で未来は変えられるが」

サッカーの世界では「1分あれば1ゴール奪える」的な格言があるのだが、それは一種の例えで、エンジニアが「技術的には可能」というのと同じ意味だと思っている。理屈上可能だが、実際にそれを達成するのは様々な条件が揃った時だけ、つまり実質不可能を示している。

その実質不可能を可能にしたのが横浜だった。後半アディショナルタイムの2分間で2点、もう少し細かく言えば約90秒程度で2点を奪って逆転した。蒸し暑い夏

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2024年J2第24節水戸ホーリーホック-横浜FC「夏の水戸はご用心」

2024年J2第24節水戸ホーリーホック-横浜FC「夏の水戸はご用心」

リーグ戦8連勝で水戸に乗り込んだ横浜。それまでのチーム記録だった7連勝を記録したのは、2019年。その2019年の7連勝を止めたのは水戸だった。
初のJ1昇格を達成した2006年、開幕戦限りで足達監督が解任されその後昇格した高木監督が率い15試合無敗、継続していた無失点記録を770分で終わらせたのはこれまた水戸である。(J2の連続無失点時間の最長記録は今でもこの770分である。)
前回の水戸戦の観

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第104回天皇杯全日本サッカー選手権大会3回戦サガン鳥栖-横浜FC「連勝に冷や水を」

第104回天皇杯全日本サッカー選手権大会3回戦サガン鳥栖-横浜FC「連勝に冷や水を」

試合の行方を暗示するような黒い雲はスタジアムのスタンドから顔を覗かせていた。J2リーグで8連勝中の横浜はJ1で17位の鳥栖とどこまで戦えるかは、今の自分たちの強さが本物なのかを計るには絶好の相手だった。

ボールが回らないのは風のせいなのか

試合後松下は「前半のうちは風も強かったせいか、自分のところにボールが来なくて」と話したのだが、果たしてそうなのか。前半中盤にあった、松板、中村、そして永井と

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2024年J2第23節横浜FC-ブラウブリッツ秋田「信じるものは救われる」

2024年J2第23節横浜FC-ブラウブリッツ秋田「信じるものは救われる」

前節難敵いわきを下して横浜は7連勝を飾った。その間の失点数はわずかに3。半分以上がクリーンシートとほぼ完ぺきな内容で勝点を積み重ねている。前回の7連勝は2019年18戦負けなしを記録した中で達成している。そう考えると連勝を達成する事は当たり前だが、昇格への近道である。
ただ、7連勝をしても首位には立てず、3位清水とも勝ち点差がないのが今年のJ2である。平均勝ち点で考えると通常なら昇格してもおかしく

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2024年J2第22節いわきFC-横浜FC「炭鉱と温泉の町で」

2024年J2第22節いわきFC-横浜FC「炭鉱と温泉の町で」

試合翌日とある温泉での話。湯本の温泉は基本的に熱くて30分程でのぼせそうになったので上がって脱衣所でのこと。そこに居合わせた4、5人の初老の男性たちは顔見知りのようで世間話をしていたが、突然いわきの試合のことになった。

Aさん「新聞で、「いわき 4発」とあったからお?と思って開いたら、4点決められて負けてたわ。(自虐気味に)ハハハ」
Bさん「相手どこよ。」
Aさん「横浜よ。」
Bさん「横浜強いな

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2024年J2第21節横浜FC-ロアッソ熊本「仮初め(かりそめ)の」

2024年J2第21節横浜FC-ロアッソ熊本「仮初め(かりそめ)の」

秋田が清水を下したことで、上位3チームが勝ち点43で並ぶものの得失点差の関係で横浜が暫定ながら首位に躍り出る事になった。

自分がまさしく清水戦の観戦記で書いたことが起きている。首位のチームを横浜が粉砕した途端に音を立てて崩れていく清水。ここ最近のアウェイゲームは横浜、山口、愛媛、そして秋田と4連敗。6試合で4敗、1ゴール10失点と急ブレーキがかかった。勝ち点12もあった差が今節でなくなった。

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2024年J2第20節藤枝MYFC-横浜FC「あなたはあなたのままで そのままで」

2024年J2第20節藤枝MYFC-横浜FC「あなたはあなたのままで そのままで」

私にとっては1年ぶりの藤枝となった。サッカーではなく、神社仏閣と城跡をめぐりに昨年もこの地を回っていた。小山城、相良城、諏訪原城や焼津神社を回っていた。藤枝には朝ラーで食事をしただけだったが。。。藤枝、焼津、牧之原、吉田などはまとめて志太榛原と呼ばれる地域で、藤枝のゴール裏に「志太榛原軍」と弾幕が出ていたのは、それをもじっているのだろう。それも懐かしい響き。(過去に志太郡と榛原郡は実在していた郡で

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第104回天皇杯全日本サッカー選手権大会2回戦横浜FC-ヴァンラーレ八戸「働き方改革」

第104回天皇杯全日本サッカー選手権大会2回戦横浜FC-ヴァンラーレ八戸「働き方改革」

残業代で食っている。そういう言葉を耳にしたことがある。基本給が低いので、残業代をベースに乗せる事で生活できるレベルの給料にしている意味だそうな。数年前まで、ボーナス無し年俸のみの仕事だった自分にとってはその感覚がわからないでいた。深夜残業以外は特に残業代なしなのでわかりやすくて仕事をいかに効率良くするかが求められたし、個人の裁量も大きかったからそれがしやすかったので、相当な繁忙期でもない限りはフレ

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2024年J2第19節徳島ヴォルティス-横浜FC「喜びの歌」

2024年J2第19節徳島ヴォルティス-横浜FC「喜びの歌」

「SUMO SUMO SUMO SUMO 横浜SUMO♪」というのは試合後、横浜のゴール裏に挨拶に来た福森の去り際に際してのチャントだった。「○○に家を買おう」的な言葉の意味は、そこに骨をうずめて欲しい=ずっといて欲しいの意であるが、福森自身は桐光学園卒で藤沢出身。引っ越していなければ藤沢に戻ってくる実家はあるはず。(彼の出身中学は、その昔ソシオが集まってフットサルをしていたミズノフットサルプラザ

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2024年J2第18節横浜FC-愛媛FC「君は生き延びることができるか」

2024年J2第18節横浜FC-愛媛FC「君は生き延びることができるか」


その左足に口づけを

ゴールを挙げた櫻川がセレブレーションの次に向かったのは、座り込んでいた福森の元へ。福森が立ち上がり左足を櫻川の膝の上に置くと、靴磨きのパフォーマンスと思ったら、さらにキスまでも。きっとそれは留まらない程の感謝と歓喜がそこにあったのだろう。苦しんで苦しんで最後の最後にもぎとった勝利だった。

勝った者が強い

前半開始2分伊藤翔が抜け出してGKとの1対1を迎えた。このシュート

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2024年J2第17節ヴァンフォーレ甲府-横浜FC「万物流転の法則」

2024年J2第17節ヴァンフォーレ甲府-横浜FC「万物流転の法則」

2023年のJ2で話題になったのは町田の昇格でもあるが、甲府のACLでの奮闘も忘れられないだろう。22年の天皇杯に優勝し、23-24シーズンのACLを戦った。甲府にはACLの試合を開催できる規模のスタジアムがなく、新国立で試合をし、スタジアムの一角は来場をクラブからも促された他クラブのサポーターが埋め尽くすといった甲府でしか出来ない光景もそこにあった。
甲府がACLに出場するだなんて2000年代初

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2024JリーグYBCルヴァンカッ3回戦横浜FC-名古屋グランパス「陽の当たる場所」

2024JリーグYBCルヴァンカッ3回戦横浜FC-名古屋グランパス「陽の当たる場所」

ルヴァンカップは2024年に開催形式をこれまでのJ1クラブメインでの開催から、J1からJ3の全チームが参加するトーナメント形式に変更された。この変更により、特に下位カテゴリに所属するチームには様々な恩恵があることが報道されている。
サポーターの多いJ1クラブが大挙することによる地域への経済効果、普段より多い観客を入れての試合運営の課題洗い出しと改善、上位カテゴリーのチームや選手を相手にして高いパフ

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2024年J2第16節横浜FC-清水エスパルス「イシを積み上げる」

2024年J2第16節横浜FC-清水エスパルス「イシを積み上げる」

2点目のゴールを決めた後、伊藤翔の周りに歓喜の渦が出来る。守備陣のボニフェイスも駆け寄ったほどだ。1点差のまま突入した後半アディショナルタイムに試合を決定付ける追加点が生まれたらポジションに関係なく喜びたくなるだろう。
その一方で、ゴールの後にフィールドに仰向けになっていた選手がいた。櫻川である。その伊藤翔のゴールを結果的にアシストする形になったが、フリーで放ったシュートを枠にすら飛ばせない自分の

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