俳諧は三尺の童にさせよ
明日2月7日は、旧暦では1月7日、七種です。(2022年)
「功者に病あり。師の詞にも俳諧は三尺の童にさせよ。初心の句こそたのもしけれなどゝたびたび云ひ出られしも、皆功者の病を示されし也。」(服部土芳『三冊子』)
服部土芳は、芭蕉の弟子で、「三冊子」は芭蕉から伝え聞いた話を記した俳論です。
引用部をざっくり自分なりに解釈すると、
「師(芭蕉)は、俳句を作るのが上達すると、手練れの句は出来るけれど、初心の頃のような味わい深さはなくなってしまうという病にかかるので、小さな子供の発想で作るぐらいがよい、とたびたび言われていた。けれど、みんなその病にかかってしまう。」
ということでしょうか。
ある年の1月7日(新暦)のことです。
三尺六寸ほどになる娘に、七草粥を教えてあげようと、台所へ誘いました。
娘は乗り気になってくれたので、一緒にお米を研いで、炊飯器の目盛まで水を入れるのを手伝ってもらいました。
お店で買った「七草かゆ」のパックを開けて、ひとつひとつの草を説明して、なんでお粥を食べるのかも話をしてあげました。
それから、私が草の一つ一つを包丁で刻んでいたときのことでした。
脇にいた娘が、“いろんな音がするね!”と言いました。
この言葉の表現に、俳句を詠む私ははっとしました。
娘は、三尺六寸の背丈では俎の上を見ることができません。
包丁の音だけを聞いて、大根や蕪を切る音と、葉の部分を切る音の、音色やリズムに違いがあることに気付いて、それを「いろんな音」と表したのです。
良い句をつくろう、などという私意のない子供の、感じたままの発想とはこのことなのだと思ったのです。
炊きあがった七草粥に、娘が大好きな梅干しを入れてあげると、おいしそうに食べてくれました。
七草を刻むいろんな音立てて
三尺六寸の童
(岡田 耕)
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