夢野猫作

A literatura é a maneira mais agradável de …

夢野猫作

A literatura é a maneira mais agradável de ignorar a vida. 小説、詩、短歌を書いてます。掲載の写真は特記しない限り全て私が撮影したものです。 好きなもの: 猫、お喋り。

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作品リスト

増えてきたのでまとめました。 【短編・SS】 『アイザックの夢』 近未来・SF。抑圧される側では終わりたくなかった。 『猫の婿取り』 現代・ファンタジー。未来に希望持てます? 『シーシーとユナ』 現代。友情って何だろうね。 『前世鏡』 現代・へっぽこホラー。魔法も出るよ。 『果ての間の聖女』 幻想。聖女は68歳。 『機械クジラの鳴く夜に』 近未来・SF。少年と少女は永遠。 『ステージ』 近未来・SF。お題『最近の学び』に参加しました。 『最後の日』 現代・幻想。ヒトの攻撃性

    • 久々に自分がnoteに書いたものを読み返してみたら中々病んでいたなあと思った。でも消さずにおきたい。あの頃の苦しみを忘れてはいけない。

      • バイバイ、マリア 【SS】

         マリア・ウォンに再会したのは、帰国まで後一月を切った、雨上がりの土曜日だった。  私は友達へ贈る出産祝いを買うため、ショッピングモールへ向かって歩いていた。地面の水溜まりは既に蒸発し消えていたものの、空気中に立ち籠める湿気が身体中に纏わり付き、顔の半分を覆うマスクがいつも以上に息苦しく感じられた。マスクを少し浮かせて深く息を吸い込もうとすると、斜め前をゆっくりと歩く老人たちから酷い雑巾の臭いが漂ってきて顔を顰めた。何故この国の人たちは、ここまで洗濯物の臭いに無頓着なのだろう

        • 命懸けの帰国準備

           少し前から、本格的に帰国の準備をしています。生活基盤がない場所へ、外国人とペットを連れての移住……経験者はわかると思いますが、物凄く大変です。絶対にミスの許されない各種手続きの数々。そして、いまだ続いている人権無視のゼロコロナ政策のストレスもあり、まともに眠れない夜が続き、配偶者と共にガリガリに痩せてしまいました。  今のところ、日本政府は帰国者に出国72時間前の陰性証明を求めていますが、本当にやめて欲しいです。単に「忙しいから出発直前に病院なんかに行っている場合ではない

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        作品リスト

          『未完の告白』(アンドレ・ジッド)読了。

           ジッドの小説を初めて読みました。本当は『地の糧』を読んでみたかったのですが、電子書籍ですぐに手に入るものが『未完の告白』だったので(しかもとても安かった)、取り敢えずポチッと買って読んでみたのですが……。うーん……。古臭いというか、青臭いというか、アカ臭いというか……(どれだ)。当時はきっと最先端だったのだろうと思いますが。正直あまり好きなタイプの小説ではなかったので感想を書くのも面倒くさくてどうしようかなと思ったのですが、せっかく読んだので少し書きます。読んでから数日が経

          『未完の告白』(アンドレ・ジッド)読了。

          『『罪と罰』を読まない』を読みました。

           『『罪と罰』を読まない』(岸本佐知子、三浦しをん、吉田篤弘、吉田浩美)を読みました。『罪と罰』を読んだことのない作家四人が、その断片を参考にして『罪と罰』の中身をああだこうだと推理してゆく……という、アヴァンギャルドかつ非常に親近感を覚える内容の対談本です。  親近感を覚える……そう、私も『罪と罰』を読んでいません。正確には、最初の1ページで「つまんなそう。」と思い、脱落しました。中学生か高校生の頃だったと思いますが、「何が、つまんなそう、だこのスカポンタン!」と、若かり

          『『罪と罰』を読まない』を読みました。

          2022春の短歌集

          ●望郷編 <一> 節分だ 雛祭りだと はしゃいでる 大人も子供も 桃色の頬で <二> 新しい 教室に怯え 震えてる 幼い私に ミモザの抱擁を <三> 好きでした 伝えたかった それだけを 忘れられぬ 美術室のにおい <四> 一年で 一番苦手な 季節です 不安でいっぱい 就活で失敗 <五> 新卒で 入社した日の ことなんか 桜の海に 溶けて消えたよ <六> ふるさとの 雪解けの便り 目にすれば 思い出すのは 泥に濡れた靴 <七> 裏庭で 辛夷の花びら 拾い上げ 口

          2022春の短歌集

          ウルシュラについて 【SS】

           ウルシュラが死んだ。死んでしまった。ウルシュラが死んでから、これまで巧妙に隠されていた彼女に関する事柄が明るみに出た。  ウルシュラはかつらを被っていた。誰よりも美しいと思われていた彼女の金髪はフェイクで、剃り上げられた頭皮は青白く、彼女の髪がより深い色をしていることがわかった。そして実際、剃られていなかった彼女の体毛は闇夜のように艶やかな黒だった。  ウルシュラの美しい翡翠の瞳は義眼だった。ビオン社の最高級ラインのもので、視力は左右2.0に設定されていた。でも彼女はいつも

          ウルシュラについて 【SS】

          糠漬けでIBSが楽になったが、コロナ禍が枷だという愚痴。

           中学生ぐらいから、ずっとIBS(過敏性腸症候群)で苦しんでいる。主にガス型、調子が悪くなるとすぐにお腹を下し、最近では便秘にも悩まされていた。さらに、コロナ禍という名の人災でメンタルはズタズタ、IBS悪化はもちろんのこと、他にも胃がまともに働かなくなったり、体のあちこちで悲鳴が上がり始めた。そしてmRNAワクチン接種後、加速度的に体調がおかしくなり、今では謎のアレルギーにも悩まされている。  mRNAワクチンについてはともかく、自律神経がストレスで狂ってしまっていることは

          糠漬けでIBSが楽になったが、コロナ禍が枷だという愚痴。

          きれいな水と空気と自由は当たり前じゃない

          ◉狂った国で暮らしています。  前回、有栖川有栖作品の感想ついでにコロナ対策やマスクへの嫌悪を少しばかり吐き出しました。本当は帰国後に全部まとめて書こうと思っていたのですが、私がコロナ禍を海外(の中でも制限が異常に厳しい国)で過ごしてどう思ったのか、現段階で書けるだけ書きます。  まず、コロナ以前から海外で感じていたこと。きれいな水ときれいな空気は当たり前に存在しているものではありません。この国の空気は酷く汚れていて、水道水には頻繁に異物が混入し、とても飲めたものではありま

          きれいな水と空気と自由は当たり前じゃない

          コロナ禍表現が辛い、『捜査線上の有映え』(有栖川有栖)

           有栖川有栖『捜査線上の有映え』読了。  私は『鍵の掛かった男』で初めて有栖川作品に触れたのだが、「ミステリでもこんな風にエモーショナルな人間を描いている作品があるんだ……!」と感動し、以来少しずつ作品を買って読んでいる。先日hontoを眺めていたところ、たまたま火村シリーズ新刊が出ているのを発見、「つらいコロナ禍生活の慰めに。」と、早速購入した次第である。  さて、今回の『捜査線上の有映え』であるが、殺人が絡むミステリにもかかわらず、読書中は美しい場所に旅に連れて行かれ

          コロナ禍表現が辛い、『捜査線上の有映え』(有栖川有栖)

          「臭い」のは、文化の違い問題。

           何度かここ(note)に書いたが、私の夫は日本人ではなく、日本育ちでもない。そして私が今暮らしている国は、私の国でも夫の国でもない。私たちは縁あって日本からとある国へ移住し、平和がバラバラに破壊されるまでは本気で永住を考えていた。(今は一刻も早くこの腐れ縁を切りたくて仕方がない。)  正直なところこの国のことは最初から好きではなかったのだが、稼ぐ力さえあればそこそこ快適かつ自由に暮らせる場所だったので(稼ぐ力がなければ悲惨な目に遭うが)、たとえ好きになれなくても馴染もうと努

          「臭い」のは、文化の違い問題。

          スズランの香水

           マヌエルがルイ・ヴィトンで買った小物がうちに届いた。  「またそんな無駄に高いものを買って。もうちょっと安価なものを探すべきだったんじゃないの。」  「いいからいいから。ほら、香水のサンプルがついてるよ。あげる。」  マヌエルは小言を言い始めた私の右手をとり、小さな白い箱をふたつポンと載せた。  「これで僕だけじゃなく、君にも良いことがあった。」  「えー……これ、男性向けじゃないの?」  「さあ?とりあえず、ちょっと嗅いでみなよ。片方は僕がつけてみよう。」  私はしぶしぶ

          スズランの香水

          ロックダウン短歌

          見上げれば 猛禽類が 滑ってく ガラスの塔に 囲まれた空 僕を蹴る 老いた群れが 叫んでる 貴方の健康の為 貴方の健康の為 「食べ物を どうか買わせて」 泣く老婆 冷たい霧が しんしんと降る 君たちは 今日から二級市民です 閉ざされた門 野犬が笑う 水・風・自由 全て無料と 思っていた 明日を生きる 金がもうない 貸した本 まだ返してもらってない あいつは今日 空へと翔んだ どこまでも 果てなく続く 空と海 僕たちだけが 足枷嵌めて 規則破り ユーチューバーが 

          ロックダウン短歌

          アイザックの夢

           『超高性能アンドロイド人権法案が国会で可決』  ニュースサイトに速報タイトルが表示された瞬間、活動家は拳を突き上げ、やった!と叫んだ。そして、隣で一緒にディスプレイを覗き込んでいたアンドロイドの手を取った。滑らかで美しい、陶磁器のような手。活動家は自身の肉厚な手で、ほっそりとした機械の指をぎゅうっと強く握った。  「アイザック、あなたは今日から人間よ。私たち、やっと、やっと結婚できる!ついに夢が叶ったわ!」  活動家はそばかすでいっぱいの丸い頬を桃色に上気させ、輝く瞳でア

          アイザックの夢

          猫の婿取り

           時は満ちた。私との約束を破ったあの男の子供が、十五の誕生日を迎えた夜。私は夏の夜霧と共に、小さな家の赤い屋根に降り立った。男の子供がいる部屋はわかっていた。かつて、あの男が私を愛でたあの部屋だ。既に子の刻だが、室内からは青白い蛍光灯の光が漏れている。  「風よ、あの窓を開けておくれ。」  私が囁くと静かに目的の部屋の窓が開き、懐かしいあの家の匂いが鼻をくすぐった。私は静かに部屋に滑り込み、驚いている少年の目の前……本が広げられた机の上にそっと着地した。少年がひゅう、と息

          猫の婿取り