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舞い散る花びらのように(Deseo)

春。草原に寝転がり、流れる雲をぼんやりと眺めながら1人の女性は考える。

もしも稼がなくて良い世界に転生したら。
私は周りから言われるような「優しい人間」にはなっていなかっただろう。

全ての問題が解決し、自分が動き助けなければならないような。私の過去みたいな悲しい生き方をしている子供たちがいなく、平和になっていたのなら。何も考えずに生きていただろう。

「父の会社の跡を継いだ方が最短で儲かる」という選択をしなくて良かったら、私は鳥のように自由に羽ばたいた。決して「リーダーになろう」「将来の為に力を蓄えよう」などという本来の自分に相応しくない生き方や価値観、考え方は胸に抱くことはなかっただろう。

ある世界では風俗を駆け巡り思いっきりクズになり、遊んで暮らしていただろう。

違う世界では周りから金を集るお姫様や乞食に成り果てていただろう。

更に違う世界では自分より大柄で強そうで(体が)男の人や、賢さの象徴のような(体が)男性を掻き集め、女帝のように偉そうに振舞っていただろう。(幸い知的な人に囲まれるというのは今とあまり変わらない…か?)

もっと違う世界では。
限られた「一生」の時間を。
自分が最愛を示す恋人と、ずっと。
死ぬまで共に時を分かち合っていただろう。

流石に最初の方の欲望は「今私がいる世界」ではとても出来ることではないけれど、やりたいことなど山ほどありすぎる。

少し前に大切な人は「問題はこれからをどう生きるかによっては未来は変わるからそのため今をどう扱うかが大事なんだ」と、苦しむ私に教えてくれた。

クズにもなるし、聖人にもなる。
フラフラしている自分が憎くて仕方ない。

*.゚
*.゚
❁⃘

そう考えてぼうっとしていると。
目の前にふぁさ…と数多の花びらが舞い散った。
驚いて我に帰ると声が聞こえる。

『迷ってるの?これ見て元気だして!』

嗚呼、愛する君か。

「……。ごめん。」

君は迷っている時に、いつも私に光を。
美しいものを見せてくれるよね。

「行こうか」

『大丈夫?』

「大丈夫。」

「……」

「君が綺麗なものを見せてくれたから。もう少し今のまま生きてみることにするよ。
疲れていたけれど、ありがとう。
とても元気になった。」

『それならよかった!』

欲望に飢えてても。自分が「甘えられたくない」と言い放っていても。「救い救われの関係は嫌だ」と言い放っても。

それでも『好きだよ、愛してるよ。』と言ってくれて、存在を好きでいてくれて、隣にいてくれる君に。私は何度も何度も惚れている。

やっぱり、どれだけ疲れていても。
どんなに違った世界に行ったとしても。

君の笑顔だけは見ていたい。

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