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旅のはじまりに『 自由 』を知る。

 ドイツ生活のはじまり。
 私が出発した日は、週末でもゴールデンウィークでもないのにとてつもなく混んでいて、手荷物検査場は通常のポールとロープで作られた並ぶためのコースを遥かに越えた、夏休みでも見たことのない行列ができていました。

 そんなとんでもない列には、日本人よりも外国人らしき方のほうが多くて、並んでいるだけですでに外国に来ているような感覚になります。
 その列に並び手荷物検査場を抜けた後、私は様々な経験をしていくことになるのでした。

初めての空港ラウンジはこみっこみ

 そんなドキドキとともに手荷物検査場を越えると、私はある場所へ向かいました。それは空港に設置されているANAラウンジ。
 飛行機が見える広々としたラウンジの中でお茶やジュース、アルコール類、そして軽食などが無料で飲食できるようになっています。
 シャワールームなどもあって、出発までに思い思いの時間を過ごせるようです。

 この日はラウンジもとっても混んでいたのですが、初めて空港のラウンジに来た私はソワソワ。
 ほとんど空いている席はなく、取り合いのようになっていたうえ、周りにいる人達が別に着飾っているわけでもないのですが、なんだかラグジュアリーな方々のように見える…(偏見)

不慣れな庶民が必死に皿に乗せた軽食。そら豆がサンドウィッチにかかっているところがポイント。

 完全に雰囲気に飲まれています。
 とりあえず、目立たない感じで過ごそう。
 そんなことを思いながら私もなんとか席を見つけ、軽食を食べながらすこしのんびりするのでした。



ギスギス夫婦と寝転ぶ外国人

 そろそろ搭乗時間となり、搭乗ゲートへ。
 するとまもなく搭乗が始まるというアナウンスの後に遅延が決定。

 先にドイツへ向かった夫が、昨今のストライキのせいでフライトキャンセルに遭い、四苦八苦していたので「キャンセルにならないだけましだ、ラッキー」と思っていました。

 そしてそれよりも気になっていたのが、アナウンスを聞いた途端迷いなく空港のカーペットに座り込む外国人の方々。(笑)

整列のアナウンス後に遅延発表したので、搭乗ゲートが大混雑

 思えば、私は今まで空港のカーペットに座り込んだことがありません。
 椅子に座れないほど混雑した空港にいたこともなかったので、わざわざ地べたに座る機会がなかったのですよね。

 いい機会だし(?)試しに座ってみようかな?などと思っていたら、すぐ後ろの日本人夫婦が言い合いを開始。
 最初は待たされることに文句を言っていたのですが、そのうち二人もギスギスしていき……しまいに言い合いを始めたという感じでした。

 地べたに座るかどうかでずっと悩んでいた私は、だいぶ呑気だったようです。
 そしてそんな夫婦の言い争いなんてまったく目にも耳にも入れず、カバンを枕に地べたに寝転がる外国人観光客……。
 羨ましいくらいの自由さです。

どっちかを選べと言われたら、私はまちがいなく寝転ぶ方だな。

 呑気と言われようが、小さいことに悩んでぶつかり合う人よりも、私は地べたに寝転がれる側の人でありたい。
 そんなよくわからない意思を固めて、私は初めて空港の床に座り込むのでした。


ちょっと良いお席はラグジュアリーの香り

 そんなこともありつつ、1時間ほどの遅れで飛行機は離陸することになりました。夫の仕事の都合ということもあり、乗せてもらった席がちょっぴり良いクラスでした。
 もちろん今までそんな席を使ったことがない私は、離陸前からドキドキです。

私は窓寄りの席だったので、右側が広々空間。
椅子の脇には物置き放題なテーブル。そして体の前に引き出せるテーブルもここから出てきます
グローブ・トロッターのアメニティ!!!中に歯ブラシなどが入ってます


 1人でエコノミーの2席分くらいのスペース専有できるし、椅子は思いっきり倒れるし、オシャレアメニティついてるし、優雅の塊のような席です。

 15時間以上乗るので、周りの人をほぼ気にしないでいられるのは、本当にありがたい。

 長距離のフライトなのもあって、同じクラスの席が私の他に40席ほどあり、殆どが日本の方ではありません。
 そんな人達が手慣れた様子で自分の席に着席していきます。乗り慣れていないのは自分だけのように思えました。

 良い席にテンションがめちゃくちゃ上がっている一方で、そんな不慣れな自分に「似つかわしくないやつがいるな、とか思われているのだろうか」などと、妙に自分を卑下する言葉が心に浮かびます。
 不慣れなところにいくと、いつもこんな気持ちになってしまうのが私の癖です。

 でも、今更この席から引きずり出されることもあるまい。
(そもそも自分の席がそこなのだから、引きずり出すもなにもない)

 きっと(本当は絶対)大丈夫だろうから、人生に何度もない機会を味わおう。そう思い、ベルトを締めるのでした。


フリーダムな乗客たちに学ぶ、高い席で得る「自由」

優雅の極みです

 離陸して少し気持ちが落ち着いた頃に、ウェルカムドリンクのような感じで、シャンパンとおつまみのサービスがありました。

 おつまみもスナックではなくて、ちょっとしたマリネなどが出ておつまみというよりちょっとした前菜のよう。それだけでも感動です。

 そしてそこから、渡してもらったメニューに載っているものは、ほとんど食べ放題飲み放題の16時間が始まるのです。

 いい席に不慣れな私は、とりあえず紅茶(陶器のティーカップとソーサーで出てきて驚いた)を頼み様子を見ていたのですが……

オシャレなおつまみとジョージ・スチュアートの紅茶

前の席の方は、日本酒とワインを飲みまくる!
他の方はウィスキーを飲みまくる!
はたまた他の方はビールや日本酒を飲みまくり、最後にシメなのかラーメンを食べ始める!

 自由に食べられるメニューの中に、ベジタリアン仕様の一風堂のラーメンがあって、漂うラーメンの良い香りとすする音。
 人気なのかつられてなのか、どんどんラーメンが色々な席に運ばれていきます。

 その一方でほとんどサービスを受けずにずっと映画を見ている人、離陸早々眠ってしまった人。CAさんと妙にコミュニケーションを取ろうとしている人。(笑)

 この時点で日本時間の0時近かったと思うのですが、皆さん思い思いの時間を過ごしています。

 席が広いので、立ったり座ったりもし放題です。
 上の手荷物入れを1時間ごとに開け閉めして何かしている人もいるし、お散歩なのか通路をウロウロする人もいるし……とにかくフリーダム。
 私のように他人の様子を観察している人もいないようでした。(それこそ、ラーメンの匂いにつられているくらいだと思う)

 エコノミー席にも似たような人がたまにいるけれど、大体鬱陶しがられている印象があるので、こういう好き勝手ができるのがいい席の特権なのでしょう。

 でも逆に言うと、立って動く以外の行動は意思を示さないと受けることはできません。どれだけ沢山のサービスがあっても、それを求めていると自分から言わない限り手元には来ないのです。
 もちろんCAさんも気遣ってくれますが、1時間毎に御用伺いに来ることはないので、やはり自分からのリクエストが必要になってきます。

 「これがしたい」「あれがしたい」が自分の中にあって、それを伝えることで自分たちの心のままに動くことをサポートしてもらえる。
 お金を多く払うことで、好きに動く自由を得ている。

 慣れた様子でいい席に座っていた人たちは、食べ放題飲み放題を満喫したかったり、ラグジュアリーな気分を味わいたくて使っていると言うより、自由を得たくてその席に座っている、そんな感じに見えました。

 「『自由』って自分の意思がないと楽しめない」


 日本から発って早々、飛行機の中でそんなことに気づかされます。

 私も日本では比較的自由に、好き勝手に生きている方だと思っていますが、やっぱり日本の好き勝手と日本以外の自由ってなんだかレベルが違う感じがしました。

 ヨーロッパの中でも真面目で勤勉な人が多く、一部では日本人と性質が近いとも言われるドイツ。
 しかしこれまでの準備の中で「やっぱり日本人の生真面目さはないな」ということにも気づいていて。(もちろんそういう人もいるでしょうが)

 まず大前提として、他人への気遣いや配慮よりも、自分の気持ちと自由が最優先なんですよね。
 みんなが自分の心を優先するから、他人の自分勝手さも「困る」と思う一方で、相手が自分を優先するのが当たり前だから「仕方がない」とも思っている。
 自分と他人の優先順位が、多くの日本人とは逆な人が多い印象がありました。
 それが良いとか悪いではなく、そういう国民性の国に行くのだから、そこに自分もなじんでいくしかないわけで。

 これからは人の顔色よりも自分の心を優先する国で暮らすことになる。
生活に必要なのは、自分をしっかり持つことなのかもしれない。
 もっと自分の意思を示そう!


 そう思った私はこっそりCAさんを呼び、ラーメンを頂くのでした。(笑)


深夜のラーメンは美味しい


出国後初めての朝日は雲の上

映画を見ながらラーメンを頂き、好きなだけリクライニングして眠りについた後。
窓の外には朝日が昇り始めていました。

この眺めは何度見ても綺麗です。
寒いため空気が澄んでいたからか、今までで一番綺麗なような気がしました。

繊細な味付けが美味しかった、和食の朝ごはん

 そんな美しい朝日を見ながら、軽い朝食を食べました。
 日本食を選んだのですが、今まで味わったことがない美味しさの機内食でびっくり。
 割烹のような味わいの食事に舌鼓を打ち、優雅で学びの多いフライトが終わりを迎えるのでした。


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