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The Beatles 全曲解説 Vol.182 〜Hey Jude

シングル『Hey Jude』A面。
ポールの作品で、リードボーカルもポールが務めます。

世界中の痛みを背負う人々へ贈る、「人を愛する勇気」を歌った傑作 “Hey Jude”

7分超の大作でありながらアメリカでは9週連続1位という記録を達成し、覚えやすいメロディと力強い歌詞で、現在でも全世界に勇気を与え続ける大名曲です。
「勇気を与える」という言い方は現在では批判されがちですが、この曲は堂々とそれを宣言できる格別の存在でしょう。

『The Beatles (White Album)』の最後を飾った “Good Night” と同様に、この曲もジョンの息子であるジュリアンに向けられた楽曲です。

ジュリアンに素直な愛情を向けることが出来なかったジョンに対して、積極的に彼に接し、「優しいおじさん」の役に回ったのがポールでした。
そんな様子を見てジョンはポールに、ジュリアンとの接し方について相談することもあったそうです。

ジョンのヨーコ・オノとの不倫が明るみに出て、完全に打ちひしがれたシンシアのもとを最初に訪ねたのもポールでした。
彼は花を携えてシンシアとジュリアンの前に現れ、失意の底に沈む2人を慰めたのでした。

ジョン自身がそうであったように、息子であるジュリアンもまた、幼くして父親に去られる運命を辿ったのです。
そんな彼に対してポールが贈ったのが “Hey Jude” だったのでした。

歌詞は一貫してジュリアンへの励ましの言葉で彩られていますが、一方でジョンとの繋がりの深さを示すエピソードもいくつか。

曲中盤「♪You have found her, now go and get her あの娘を見つけたんだろう?行ってモノにして来いよ」という一節が登場します。
このフレーズは、「人を愛することに後ろ向きになるな」という意味が込められていると言われています。

この言葉をジョンは、「自分に対して『ヨーコのもとに行っちゃえよ』と背中を押している」と解釈していたそうです。
いやー、己の立場を顧みよ(笑)。
当時はヨーコにお熱だった時期であるだけに仕方ないんですけどね。恋は盲目というか…。

もう一つは、最後のバース直前「♪The movement you need is on your shoulder やるべきことは、もう両肩に乗っているから」という一節。
レコーディングでこのフレーズにしっくりこなかったポールは、新たな詞に差し替えようとします。
ところが、ジョンがそれに対して「この曲はそこがイイんじゃないか!」と一喝。
詞はそのままの形で世に出ることになったのです。

現在でもポールは、このフレーズを歌うたびにジョンのことを思い出すそうです。
ポールの優しさ・人間愛が前面に出た楽曲ですが、このように良くも悪くもジョンあってこその “Hey Jude”。
正真正銘の “レノン=マッカートニー作品” だと言えるでしょう。

曲後半の「♪Nanana」のリフレイン。
近年では、どの公演でも男女が交替で歌うパートを入れるのがお約束になっています。

2012年ロンドンオリンピック開会式では「Just men, come on boys!」「Just women, just girls, come on!」と、指揮者のように会場をリードするポールの姿が印象的でした。


ジョンと別れたシンシアは、その後数度の再婚を経た後、2015年に亡くなりました。
その傍で彼女を常に支えてきたのはジュリアンでした。
“Hey Jude” におけるポールからのメッセージは、きっと2人を前向きに生きる勇気で結びつけたに違いありません。

補足情報: アルバム『LOVE』バージョンについて

“Hey Jude” の『LOVE』バージョンは、約4分の短縮版となっています。
短縮版とは言え、終盤の「Nanana」ではバックがドラム演奏だけの部分を加えたり、オリジナルのフェイドアウト時に聴けるベースを主役に持ってきたりと、新たな色が加えられています。
スマートでロック色が前面に出たアレンジとなっています。

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