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The Beatles 全曲解説 Vol.213 〜Real Love

シングル『Real Love』A面。
ジョンの作品で、リードボーカルもジョンが務めます。

それぞれの道が再び交差する時…4人のロック少年たちが贈る、最後のビートルズサウンド “Real Love”

ビートルズの解散以後、ジョン・ポール・ジョージ・リンゴの4人はそれぞれの道をそれぞれのカラーで歩み始めました。

ポールは妻リンダも伴って、自らのバンド「ウイングス」を結成。
自身もマイケル・ジャクソンやエルヴィス・コステロらとのコラボを始め、コンスタントに良質な作品を発表。
常に世界の第一線から音楽を届けてきました。

ジョージは解散後いきなりソロアルバムを大ヒットさせ、ビートルズからの独り立ちを真っ先に宣言。
途中、自曲の盗作騒動やアルバムのセールス不振などに見舞われるも、ボブ・ディランらとともに「ザ・トラベリング・ウィルベリーズ」を結成。
生き生きとした活動で健在を証明しました。

リンゴは深刻な体調不良と闘いながらも、あの「きかんしゃトーマス」のナレーションを務めるなど、音楽と並行して名優としても活躍。
その人柄から、彼の率いる「リンゴ・スター&ヒズ・オールスターバンド」のメンバーは途切れることがありません。

そして、ジョン。
彼はヨーコ・オノと引き続き平和活動を続けていましたが、ヨーコに念願の息子ショーンが誕生したのを機に第一線を退き、「主夫」生活をスタートさせます。

ショーンの成長と3人(特にポール)の活躍ぶりに触発され、1980年にはヨーコと共作のアルバムを発表、カムバックを宣言します。
しかしその矢先の12月8日、ジョンは狂信的なファンに狙撃され、突如として息を引き取るのでした。


それから15年経った1995年。
アウトテイク集『Anthology』シリーズのプロジェクトのためにポール・ジョージ・リンゴが再び集結。

「ジョンの遺した未発表曲をもとにビートルズとして新曲を作ろう」
その掛け声のもとにレコーディングされ誕生したのが、本連載でプロローグとしてご紹介した “Free As A Bird” と、今回の “Real Love” だったのでした。

“Real Love” のベースとなったのは、ジョンが主夫生活を送っていた1979年から80年にかけて録音されたデモテープです。
これにポール・ジョージ・リンゴが演奏やコーラスを重ね、更にはジョージの勧めでザ・トラベリング・ウィルベリーズのメンバーであったジェフ・リンが参加し、曲が完成しました。

“Free As A Bird” では、ポールやジョージが新たに歌詞を加えてリードボーカルもとりましたが、この曲では全編ジョンによる歌詞とボーカルのみを前面に立たせ、他のメンバーはサポートに徹しています。
とはいえ、透明感と情緒溢れるコーラスワークとドラムの力強さはまさにビートルズで、4人のその衰えない結束力を十二分に感じることができます。

3人はレコーディング中、その場にいないジョンを偲び感傷的になることもあったそう。
そんな3人を救ったのは、またもビートルズ流のユーモアでした。

「ジョンが途中まで作っていた曲を、『あとはよろしく』といって休暇に出掛けたということにすればいい」
ポールの発案したこの設定は、レコーディングの雰囲気を和らげ、優しくあたたかなサウンドを創り出す一助となったそうです。

その様子は冒頭のMVでしっかりと目にすることができます。
ビートルズ時代のわだかまりも、後にそれぞれが背負った名誉も苦悩も、一旦傍に置いて純粋に音楽を楽しむ「4人のロック少年」の姿がここにはあります。

そんな4人が最後に発したメッセージが「本物の愛」だったのは、筆者には必然であったように思います。

2001年、ジョージは癌のため亡くなりますが、その精神の本質をつくメッセージは現在でも色褪せることはありません。
2021年現在ポールは79歳ですが、2020年には単独録音アルバム『McCartney Ⅲ』を発表するなど、未だ音楽への飽くなき挑戦を続けています。
リンゴは81歳。驚くべき若さを保ちながら、ジョンから引き継いだ「Love & Peace」のメッセージを世界に発し続けています。

The Beatles 全曲の解説はこれにて終了です!
連載を書き上げた心境と、読んでくださった皆様への御礼は、改めて別記事にておまとめしたいと思いますので、しばしお待ち頂けますと幸いです。

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