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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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#家族

のり弁とやきとり弁当

今私は、立体駐車場に車を停めて 仕事が始まるまでの1時間、 のり弁を食べながら過ごしています。 真っ白の衣装をきて、 のり弁のフライの油を落とさないように フライにつけるソースをこぼさないように 豪快にカッ喰らうはずのものを、そろりそろりと食べています。 午前中はタイヤ交換をしたため、 後部座席には取り替えられた方のタイヤがゴロゴロ4つも転がっていて、運転席を圧迫しているということを忘れていたのが盲点。 仕事までの空き時間、北大の近くを運転していたら、美味しそうな弁当屋

上田豪さんに名刺デザインをお願いしたら、人生を全肯定できた話。

タイトルと矛盾するが、いま自分のズボラをとても情けなく思っている。 上田豪さんに名刺を作ってもらったことをnoteにアップしようと思っていたら、書いている途中で、私より後に作ってもらった坂上薫さんがnoteを先に公開された。薫さん、やること早っ。 ちなみに坂上薫さんとは、昨年11月の稲田万里さん著『全部を賭けない恋がはじまれば』のイベントをご一緒させていただいてからのご縁だ。 名刺の話の前に、人にはどうでもいいことで恐縮だが、私は昨年からアカウント名を「タカハシ ユカンチ

娘の帰省で知る潮時

離れて暮らす娘が先日しばらく帰省していた。 この日に帰るよという連絡をもらった時は、そりゃあ嬉しくて、よく晴れた日に彼女の部屋の窓を開け放ち風を通したり、布団を干しておいたり。 何が食べたい?と聞いて食材を準備したり。 そうだ、ちゃんと家中…特に水回りを綺麗にしておくか、と念入りに掃除する。 このあたりで、ふと「ん?」と自分のやっていることに、これまでとは違う感覚を覚えたものの、忙しいので気にしないようにして諸々準備を進める。 娘を新幹線駅に迎えに行き、近況を聞きながら車を

父のお土産

「お土産」が好きだ。 旅のお土産はもちろん、たとえばコンビニで買ってくれたちょこっとした何かでもとても嬉しい。 母方の祖父はお土産をしょっちゅう買ってくる人だったそうだ。 夜中に酔っ払って帰ってきては、ぐっすり眠っている幼い頃の母たち(6人姉弟)を片っ端から叩き起こしていたという。 「キャラメルやチョコレートなんてなかなか買えなかったから嬉しかったよ。」 「アイスキャンディーなんか取り合いして食べたっけね。」 祖父の夜中のお土産は母たち姉弟にとって、とても嬉しかったようで

じぃちゃんとカメラ(時々ばぁちゃん)

私が生まれた病院に、じいちゃんは入院していた。ガンだった。 私が生まれたその日から、じいちゃんは毎日のように私のことを見に来ていたそうだ。 点滴スタンドをキコキコ引きずって、 私の顔を覗き込み、 満面の笑みを浮かべ、 長いこと見つめてくれて居たらしい。 初孫だった。 自分の死期が近いことを感じながら見つめる孫の顔は、 じいちゃんにどう映っていたのだろう。 じいちゃんはそこに、何を見ていたのだろう。 若い女性ばかりの産婦人科病棟に、病衣を着て点滴スタンド引きずったどう

恋人の家族と1泊2日のキャンプをしたら "ちょうどいい距離感" を越えたくなった。

彼の家族と、はじめて1泊2日の旅行をした。 正確には、泊まりでキャンプに行った。 ちなみに、「彼」というのは付き合って1年半の恋人のこと。 まだ正式に結婚や婚約などをしている間柄ではないのだけれど、将来のことはふたりで話していて、お互いの家族にも何度か会ったことがある。 「今度の休みに家族でキャンプに行くんだけど、一緒にどう?」 1ヶ月前、彼にそう誘われたわたしは、 「楽しそう。行きたい!」 と、すぐに返事をした。 ところがそれを両親やまわりの人に話すと、 部

母のことが知りたい|聴こえない母に訊きにいく|五十嵐 大

 すべてを詳らかにされるのが公正中立な世の中だとしても、それでもぼくは、この世には明らかにされなくていいこと、知らなくていいことがあると思っている。友人がついた嘘、パートナーの過去、家族の傷跡。大体の場合、それらを「知る」という行為には痛みを伴う。  でも、「これだけは知るべきではないか」と個人的に思っていることがある。ぼくの母が抱えている、過去だ。  母は耳が聴こえない。生まれつき聴力がない、先天性の聴覚障害者である。彼女はろう学校時代に、同じく耳が聴こえない父と出会い

じいちゃんと、一生の後悔。

 大好きなじいちゃんがガンを患ったと知ったのは、暑い夏の日だったか。  日直係の元気の良い号令の後に続いて、口パクのさようならを言う。4年生になってからは、帰りの会が終わるとひとりで帰ることが多くなった。いわゆる「思春期」の前段階に突入していたらしく、先生、親、それまで仲の良かった友達にまで、理由もなくとがった態度を取るようになった。代わりに、スクールカーストの上の階層に位置していた、少しやんちゃな子たちと仲良くするようになった。何をするにもやる気が出ず、かと思えばすぐに感

「月が照らしたのは家族の時間」究極の感覚ボードゲーム

『あんたはだんだん面倒くさくなって適当になるから負けるんだって!』 姉が私に言った。全員が納得して笑った。 ちょっと悔しいけど図星だから何も言えず「ふ〜、やっと終わったぁ」と勝負が決まるまでソファでダラっとして勝負を観戦する。 『お父さんすごー!さすが手先の器用さで全国1位になった男!最強やん!』 ターンのたびに、みんなにそう言われてニコニコと嬉しそうにガッツポーズをするお父さん。 ボードゲームは人の性格やクセがモロに出る。だから面白くて好きだ。 キャッチ・ザ・ムー

でこぼこの私たちが、不完全なまま一緒にいるために

夫は、仕事がいそがしい。 結婚して14年、いろいろな時期があったけれど、ここ数年は特にいそがしい。 たとえばこの1ヶ月、平日は午前2時とか4時に帰ってきて、朝7時前には出かけていく。 (少しでも睡眠時間を取れるように、職場まで自転車で行ける距離の家に住んでいる) 夫の選んだ人生とはわかっていても、そのような働き方が長く続くと、何と言っても体が心配だ。 今は下の子どもが5歳になったので育児もだいぶ楽になったけれど、子どもたちが小さいときは、ひとりで育児と家事をこなしな

己の人生を追い求める父の人生ゲーム

数年前の冬。 実家に帰った時に、いつもあまりタイミングの合わない兄と私の帰省が重なり、珍しく家族が4人実家に揃うことがあった。 仕事の都合でお正月に休みを取れないこともある兄や、交通費が跳ね上がるため、帰省シーズンをずらして帰ったりする私。 両親は祖父の介護をしていたことなどもあり、ここ数年は各々が忙しい毎日を送っていた。 そんなわけであまり昔のように家族で団らんをするようなタイミングがなかったのだが、偶然が重なり、その年は数年ぶりに4人で落ち着いたお正月を迎えた。 ゆっ

母の4年ぶりの桜

母が、4年ぶりに桜を見た。 というと、語弊があるかもしれない。もちろん毎年、目には入っていた。ただこの春、母は4年ぶりに、自ら桜を見に行ったのだ。近所の桜並木を、ひとりと、心の中の一匹で。 桜のうつくしいこの季節は、私たち家族にとってすこし切ないものだ。 2018年の3月25日、愛犬のラブラドールレトリバー、ハナが亡くなった。14歳の大往生であった。 私が10歳の頃 家にきたハナは、それは賢い犬だった。一緒に育ったことを、私は誇りに思う。私と弟にとって妹そのものだった

こどもを抱く彼の背中は

 このところ残業続きで、おまけに週末は休日出勤だった。でも、休日出勤はキライじゃない。仕事に集中できるから。  世間に合わせて電話もメールもお休みモード。確認したり思考を組みたてたりする作業に追われるこの時期は、これが心底ありがたい。古くておカタい業種なのもあって、宣言解除後は在宅勤務が認められなくなってしまったから、しかたがなく職場にいる。  業務内容を共有している玉森さんは、週明けの研修内容の最終打合せを終え、12:15に席を立った。この男、朝も早いが帰りも早い。毎日定

93歳のばあちゃんは、メールの返信が誰よりも早い

私はこの春、ちょっと子どもに戻ろうと思う。 ふらりと入った雑貨屋で、空柄の綺麗な便箋を見つけた。しばらく会えないあなたへ、今の気持ちを1文字1文字、素直に丁寧に綴ってみる。 きちんと伝えられるかは、まだわからないけれど。 ♢♢♢ 先月の終わり頃、ばあちゃんが入院した。 身体は年々細くなっているけれど、頭はしっかりしているし、何より、よく食べるばあちゃんだ。 朝食は、自分でパンとスープとヨーグルトを準備する。昼と夜は家族が用意した食事に、食後のデザートまでぺろりと平ら