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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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#note

その燈(ともし火)は燃え続ける

「店を閉めることにしたよ」 マスターは電話口でそう言った。 来るべき日が来たんやなあ・・・。僕は目を閉じ、言葉にならない感情が押し寄せるのを感じた。 先日、僕が30年通ったバーが閉店した。 マスターが大病を患い、カウンターにもう立てなくなったからだ。 僕がこのバーに通い出したのはちょうど20歳の時だった。美味い酒とマスターの厳しくも人情あふれる人柄に惹かれて、当時は3日と空けずに店に通った。 学生の頃は親友や後輩とここでよく飲んだ。若者らしく青臭く語り合った。僕の

【追記絶対読んで!!!!】「跳ばないこと」を誓った日/水樹奈々「LIVE PARADE」福島初日

2023年7月22日。僕は推しである水樹奈々夏のライブツアー「LIVE PARADE」福島公演に参加していた。 会場であるいわき芸術文化交流館アリオス大ホールは、どうやら普段は主にクラシックコンサートなどで使用されるハコのようで、大変落ち着いた雰囲気の素晴らしい会場だった。 僕はその最上階である4階席で、「おいホール公演は水樹奈々との距離が近いって言ってたやつ誰だ、大嘘じゃねえか!」などと文句を垂れつつも、開演をいまかいまかと心待ちにしていた。 さて。 突然シモの話で恐

エッセイ/深夜の

久しぶりにガンプラを作った。小さなSDガンダム。二頭身のかわいいやつだ。購入したのは1ヶ月ほど前なのだが、疲れていたのかなかなか組み立てる気になれなく、ようやく先日の深夜に組み立てたいという衝動にかられ、取り憑かれたかの様にガンプラを組み立てた。 深夜にガンプラを作るという子供の頃ならば確実に母親に怒られるであろう行為を、堂々と自室の蛍光灯を全開にして組み上げるのは大人の特権である。はじめはガンダムのテーマソングをガンガンにかけながら作業していたが、組み立てが複雑になるにつ

「伝わり方の濃縮還元ジュース」 - あなたが本当にその言葉を伝えたい人は、誰ですか? -

時は遡って4月ごろ。 所属するコミュニティの勉強会にて、 とあるカメラマンさんの書いているブログの話を聞いた。 そのブログは世界でたった2人しか見られない、 お子さんの成長記録を綴った非公開のブログ。 見られるのは彼と、その奥さんだけ。 「いつか、自分の子供たちにそれを見せてあげたくて」と 彼は言っていた。 私はその頃自分に起こった出来事を書いたnoteが偶然にもバズって、 世の中から見たら誰でもない私のnoteを 5万人近いの方が読んでくださって、 メディアの方から取

空白の2時間を埋める

朝8時に目が覚める。昨晩は2時か3時位に寝たはずだ。5,6時間の睡眠の後、布団のすぐ脇に置いてあるダンボールからエネルギーゼリーを2つ出して飲み込む。それから、ポカリスエットも一本飲む。これが私の朝ごはん。 問題は私がその後すぐにまた眠ってしまうということだ。 本来起きたい時間は11時だ。それなのに8時に目が覚めてしまう。すると、この何も決まっていない3時間で私は何をすればいいのだろうか。 何もせず、横になっていても良いように感じられる。他にも本を読むとか、音楽を聞くと

一周まわってせまい世界

小中高は学年全員友達!みたいに明るく努めていた。 そのことに疑問を感じたことはなく、自分はそういう性格だと信じて疑ったことはただの一度もなかった。高校2年の冬までは。

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「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって

24才のある夜。その日も私は一番最後にオフィスを後にし、帰路についてもまだ仕事のことを悶々と考えていた。すると、急に堰を切ったように脳内から溢れ出してくる言葉があった。そのドーパミンに従うままにパソコンを開き、キーボードを乱暴に叩き、読み返しもせず朝日新聞の「声」に投稿したことがある。 それですっかり満足してさっさと寝たのだが、翌日携帯に着信があり、出ると朝日新聞の人だった。「掲載させていただきますね」。 自分の文章が初めて不特定多数の人の目に触れる場にさらされた。それは

「書けないこと」を書けばいい

「noteがなかなか書けません」という人がいる。「こんなレベルの文章じゃ世に出せません」という人がいる。「もっとうまく書けるようになってからnoteにしたい」という人がいる。 そんな人たちに、一言だけ言いたい。 どうかその気持ちを、 いまnoteに書いてほしい。 あなたの不安な気持ちと同じ気持ちを抱えている人がきっといる。文章のレベルに自信がない人がきっといる。もっと上手くなってから書こうと思う人がきっといる。 あなたがいま話している言葉は同じ悩みを抱えた人にきっと届

メイク・ユー・ハッピー

口紅が減らない。 マスク生活が板についてから、 口紅をあまりつけなくなってしまった。 マスクの内側に 口紅が色移りするのが厭で、 唇にのせるのは 淡いリップクリームばかりになった。 コスメ売り場の中で 口紅のある場所が好きだった。 少しずつ違う色のグラデーションが お行儀よく並んでいるのを 眺めているのが好きだった。 今の季節なら 秋の木の実みたいな こっくりとした赤。 ベージュのニュアンスのある 絹地の更紗のようなピンク色。 この色が好きだなと思って買って帰ると、 結局似

自分を救う文章は、誰かを救う

美しい言葉はいらない。強い言葉もいらない。 ただ、自分のための文章を書けばいい。自分の悩みを整理する文章は、似た悩みを持つ誰かの助けになるから。 何かの役に立たなくていい。世界を救わなくていい。自分が知りたいこと、やりたいことに必要な文章を書けばいい。自分のための文章は、誰かのための文章になるから。 自分を救う文章は、誰かを救う。自分のために書くことは、誰かのために書くことにつながっている。だから、自分のために書けばいい。 そういう意図で書かれた文章は、手紙のようにな

クリープハイプ 「ごめんなさい」

ドラマ「半沢直樹」が予定よりも撮影スケジュールが押し、一週休みになったことを生放送で主演の堺雅人が必死に謝っている。毎週、ほぼ無料に近い媒体であるテレビで、あんなにも素晴らしく面白いものを見させてくれているのだから謝らなくていいのに。 小田急線が今日も遅れた。10分程度の遅れで、各駅停車に関しては元々10分置きに走っているから、同じような時間に乗ることができたし、到着時間も変わらなかった。だけれど、ホームでも車内でも駅員さんが丁寧にお詫びの言葉をアナウンスしている。私は、す

卵かけごはんと、書けない私

書けない…。 新型コロナウィルスの影響なのか、ほとんど仕事がなく、ヒマを持て余しているから、noteを書こうと思った。 だけど、書けない…。 思っていることをつれづれに書けばいいのだろうけれど、なんで書けないんだろう?? きっと、「うまく書こう」としているからじゃないだろうか。 以前なら、恋愛のこととか、飲み屋で聞いた話とか、仕事で思ったこととか、毎日のように書いていた。中には、結構どうでもいいこともある。 だけど、それすらも書けなくなった。 なぜなら、いまの私

頂くということ

小さい頃、お年玉をもらうことが苦手だった。お年玉をもらって嬉しくないわけではない。「頂く」過程が苦手だった。 新年の親戚の集まりで、久しぶりに会う縁のある幼い私に「お父さんお母さんには内緒よ」と言って、おじさん、おばさんがお小遣いを握らせてくれる。いいですいいですと、申し訳なさから拒否するも結局頂くことになる。 「内緒よ」と言われても、そういうわけにはいかない。両親にもらったことを報告すると「貰うべきじゃない!謝りに行きなさい!」と言われ、もう一度親と謝罪とお礼をしに行く

嗚呼、俺たちの明日よ。

また、こいつも結婚か。 ふと来る、昔からのLINEグループでの「私事ですが」。 そういや、25過ぎた辺りから、こんな感情が湧き出てきた。 嬉しいんだけど、なんか離れていく。そんな、もどかしい感情。 そういや、そうだな。 学生時代バカやってた時代から、もう幾つも時も重ねてきた。 俺といえば、まぁ知ってる企業に入社して、 若い頃はヤンチャしてたけど、なんか仕事にも慣れて。 このままでいいんだけど、このままでいいのか?という感情が常に付く。 そうか、あいつも結婚か

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