石川十九

北海道出身 1996世代 シンガーでソングでライターだ 毎週日曜更新「歌詞についての…

石川十九

北海道出身 1996世代 シンガーでソングでライターだ 毎週日曜更新「歌詞についてのエッセイ」

最近の記事

南多摩

知らない街の知らない風に吹かれながら泣いてた。姉に呼び出された南多摩は肌寒く、最近ろくな外出をしていない鈍った身体を強く抱きしめるように痛めた。もうすぐ読み終わるボロボロの文庫本を閉じて日記を書いてる。 適応障害という名前を貰ってから、ずっとそれを舐めて過ごしてる。一ヶ月経てばこんな謹慎生活も抜け出して、またバリバリと働くことができる。頭さえ冴えればまた出世コースに乗れる。そんなたらればが首を絞めて、ちょっと電車に乗ってサラリーマンを見るとやるせなさで涙が出る。根性論だけで

    • サラリーマンという才能

      サラリーマンが楽しいと思える才能があることに気がついたのはちょうど1年前くらい。ギターを手に取らず、歌詞を書かず、表現というものをしなくても生きていけることに気がついたのもその時だ。夢の代わりに数字を追い、曲の代わりに資料を作った。ただ、誰かを蹴落としてのし上がっていくことは共通していて、そんなことも性に合っていた。 サラリーマンである私は車だった。昇給出世のガソリンを補給していればどこまででも走っていける。ハイブリッドや電気自動車、外車なんてものではないけれど、丈夫でどこ

      • 今も昔も音楽しか愛してないよとか言うな

        固いプリンが好きだ。隣にはホイップクリームが横たわる。カラメルは苦いより香る方がいい。私のぶれぶれの食へのこだわりをそんなところも面白いと言ってくれたあなたは、ホイップクリームのように白い肌、でもなかったなぁ。無印カフェのプリンはちょうど良かった。相変わらず風邪だからエッセイを書く。 チャイティーが好きだ。でもカフェインアレルギーだ。コーヒー、並びにそういったカフェイン類を摂取すると、動悸、目眩、息切れ、震えが止まらなくなる。私の場合は特に、動悸から来る不安症だ。昨日までは

        • 風邪

          風邪をひいた。職場の子供達からいただいたありがたいウイルスだ。今、全国の幼稚園保育園ではRSウイルスが大流行している。大人に感染るのはわりと稀で、重症化しない、一般的な風邪の症状で治ると言われている。そうか、私は風邪をひいたんだ。 風邪をひいた。鼻は詰まっているくせに、出るものはちゃんと出てくる。こんな身体の矛盾も抱きしめて、私達人間は今日もベッドの上で鼻をかみ続ける人生を歩んでいる。鼻詰まりという現象には、些か言いたいことがたくさんある。詰まるなら詰めとけよと。栓をしたな

          大晦日、正月、日常

          「あけましておめでとうございます」より、「良いお年を」の方が私は好きなのだということに、年が明けてから気がついた。残り僅かな年末の数日にグッドラックを送るそれは、儚いが故に尊い。もっと言ってやりたかったのに。年末の馬鹿。 「大晦日は浴びるほど酒を飲むんだ」という自分への約束は、2杯のスパークリングワインで簡単に破ることとなった。年が明けた頃にはベットの上。気が抜けてるとはこのことだ。翌日、食卓に放っておかれた3杯目のスパークリングがただの白ワインになっていて、炭酸が抜けても

          大晦日、正月、日常

          フジファブリック 「赤黄色の金木犀」

          大学在学中、嗅いだことのない花の匂いがした。 秋を感じるのはどんなときだろうか。 私の場合だとスマホのsafariに秋の季語が並んでいるサイトを留めておき、何かを調べようとしたときにその季語が垣間見える時だろう。 「秋澄む」「秋風」「花野」「若煙草」こんなものがちらつくだけで、いつか見た山梨の秋景色が広がる。季語だけで頭の中を旅行することができるのは、これまでどれだけ良い体験を出来て来たかわかる瞬間でもある。 そんな季節の言葉の中でも最も一般的な秋の季語といえば「金木

          フジファブリック 「赤黄色の金木犀」

          ただのエッセイ 「キングオブコント2020」

          ジャルジャルの優勝で幕を閉じたキングオブコント2020 圧巻だった。何が圧巻だったかというと、もちろん大会で披露したコントもそうだし、その大会までの準備の仕方、ネタ数、場数、何を取ってもジャルジャルはすごかったし、今年優勝するのはジャルジャルで良かった。 コロナウイルスの影響で事務所の持っている劇場数や公演数に関係なく、ほとんどの芸人が賞レースまでにネタを詰めるために客のウケ方で確かめるっていう機会がごっそりなくなってしまった。 これはシンガーソングライター目線のことで

          ただのエッセイ 「キングオブコント2020」

          きのこ帝国 「夏の夜の街」

          花火を粋に感じないのは、表現者として失格なのだろうか。 打ち上げ花火を無理やり美しく見ていることに気がついてしまった。 あ、花火は美しいものです。これは間違いないことです。 何というか、携帯で撮った写真のような感覚だ。 昨今、携帯電話のカメラは著しいほどに精度を上げ、ポートレートやらタイムラプスやら知らなかったカタカナが当たり前に公用語になった。 それに伴い、フィルターというものが流行った。 フーディ?ユーライク?たぶん私が知ってるものだけでも中高生にとっては古い

          きのこ帝国 「夏の夜の街」

          石川キャミー 「行方不明」

          ニュースの見方がたまに分からなくなる。 幼い頃から、ニュースをテレビで見るときは決まってNHKだった。 相撲中継を爺ちゃんが見て、その後すぐにニュースが始まり、それに合わせて夕飯が食卓に並ぶ。これが我が家の夕方ルーティーンだ。 ただ淡々と余計なコメントもなくその日あった出来事(もちろん北海道情報が多め)が読み上げられていく様は、幼い私にとっては色のない積み木をただ並べていくだけのようでつまらなかった。 テレビは華やかなものだ。フリップがあり、めくりがあり、芸能人が一つ

          石川キャミー 「行方不明」

          クリープハイプ 「ごめんなさい」

          ドラマ「半沢直樹」が予定よりも撮影スケジュールが押し、一週休みになったことを生放送で主演の堺雅人が必死に謝っている。毎週、ほぼ無料に近い媒体であるテレビで、あんなにも素晴らしく面白いものを見させてくれているのだから謝らなくていいのに。 小田急線が今日も遅れた。10分程度の遅れで、各駅停車に関しては元々10分置きに走っているから、同じような時間に乗ることができたし、到着時間も変わらなかった。だけれど、ホームでも車内でも駅員さんが丁寧にお詫びの言葉をアナウンスしている。私は、す

          クリープハイプ 「ごめんなさい」