ただのエッセイ 「キングオブコント2020」

ジャルジャルの優勝で幕を閉じたキングオブコント2020

圧巻だった。何が圧巻だったかというと、もちろん大会で披露したコントもそうだし、その大会までの準備の仕方、ネタ数、場数、何を取ってもジャルジャルはすごかったし、今年優勝するのはジャルジャルで良かった。


コロナウイルスの影響で事務所の持っている劇場数や公演数に関係なく、ほとんどの芸人が賞レースまでにネタを詰めるために客のウケ方で確かめるっていう機会がごっそりなくなってしまった。

これはシンガーソングライター目線のことであるが、誰かの目に触れられないままで製作を続けるっていうのは結構怖い。

曲だってコントだって基本は一人の脳で作っていることだから如何せん作り手のエゴっていうのが組み込まれている。このエゴっていうのは様々な解釈でろ過され、「味」だとか「らしさ」とか「真骨頂」などとして評価される。

ある程度のえぐみがなければ面白味がないっていうのは皆さんにもお分かり頂けるだろう。


例えば、私はジンギスカンが大好きだ(北海道キャラのゴリ押し)。ラム肉のさっぱりとした脂、力強く香ばしい赤身、そしてやはり大事なのはあの独特なくさみだ。肉の中にまるで藁を燻したような香りを感じられるのがラムの醍醐味、「らしさ」ではないだろうか。

ラムが好きな人間とって、あのくさみは最高だ。臭ければ臭いほどたまらない。普段地元で食べているようなラムは、冷凍されたもの(これは美味い)から国産ラム(これもかなり美味い)まで様々な鮮度のものを食べれる。だから舌が肥えたというか、慣れた。どんなラム肉でも美味しいポイントを見つけることができるようになったのだ。

ただ、ラム肉の苦手な人にとってあのくさみは旨味ではない。昔、当時の彼女と割と高めのビュッフェに行った際、外国産の本格ラムが置かれていた。「これぞラム!」と言わんばかりに羊の香りがするその肉に「牧場食べてるみたい」という感想を言わしめたあの子はラム肉を初めて食べたらしかった。


このくさみってのはなければ面白くないし、ありすぎると受け入れ難いものになってしまう。この塩梅というものを一人の頭の中で調整するのはあまりに難く、間違えやすいものだ。

だから、誰かに披露することを目的としているものであればあるほど、できるだけ他人の目には触れさせた方が良いのだ。

特にコントというお笑いのコンテンツは、客があって成り立つもので「面白い」というのが大前提であり、全てのお笑いににおける共通認識材料だ。

自分だけでなく、他人にも面白いと評価されて初めて「お笑い」の一つとして数えられるのではなかろうか。


他人の目に触れる機会を極端に奪われたコント師達は、大会の後評判からしても総じてすごい苦労をされたと思う。

しかし、そこで手を緩めるどころか、更に強く握り締めたのがジャルジャルだ。


毎日、Youtubeに新作コント動画をアップする。正直、誰がこんなことできるんだと思っていた。

それをジャルジャルはやった(やっている)。


売れっ子の二人のスケジュールやそもそもネタをこしらえる時間なども含めて、その労力はえげつないことだろう。

そんなことも視聴者はちゃんとわかってるだろうし、実際、キングオブコント前でも色んな著名人が「ジャルジャル頑張ってるなぁ〜」と口にしていた。


決して、ジャルジャルを特別推してきてはなかったが、長年賞レースというものを楽しませていただいている身として、M-1やキングオブコントで奮闘するジャルジャルは見てきた。やっと手にした栄冠は悲願のものだったと思う。

おめでとうございます。



1年間、いや、芸歴の全てを込めたネタを見ることができる賞レースは素晴らしいものだ。

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