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大晦日、正月、日常

「あけましておめでとうございます」より、「良いお年を」の方が私は好きなのだということに、年が明けてから気がついた。残り僅かな年末の数日にグッドラックを送るそれは、儚いが故に尊い。もっと言ってやりたかったのに。年末の馬鹿。



「大晦日は浴びるほど酒を飲むんだ」という自分への約束は、2杯のスパークリングワインで簡単に破ることとなった。年が明けた頃にはベットの上。気が抜けてるとはこのことだ。翌日、食卓に放っておかれた3杯目のスパークリングがただの白ワインになっていて、炭酸が抜けてもなおちゃんとした名前があるそいつが羨ましかったりもした。俺なんて気が抜けたただの二日酔いだよ。あ、名前あるじゃん。やったぁ。


あ、マヂラブだ。漫才じゃない論争とかがあるらしいけど、私からしたら彼が床に転がる姿を見るだけで安心する。ルンバを買った友人が「ペットみたいで可愛い」って言っていたのはこういうことなのかと思う。でもたぶん違うと思う。


1月2日。2日ぶりに乗る電車には、私の他にもスーツのおじさんやオフィスレディらしき人も乗っていて、働き始めるのが私だけではないのだと安心した。車窓が切り取った朝9時の四角い日射は、やけに眩しく赤い。鬱陶しそうにそいつを睨みつけていたおじさんもまた、代々木上原で重い腰を上げ、その日射の中に溶けるように消えていった。新年が明けたかと思えば、呆気なく日常は始まる。こうして私も、新宿という日常に、少しずつ溶けていく。

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