鈴懸ねいろ

綴リスト*エッセイ.小説.空写真。日本左利き協会ホームページにてショートストーリー連載…

鈴懸ねいろ

綴リスト*エッセイ.小説.空写真。日本左利き協会ホームページにてショートストーリー連載中*AJINOMOTO PARK×noteコンテスト『おいしいはたのしい』審査員特別賞。秋の読書感想文コンテスト佳作。ショートショートnote杯佳作。

マガジン

  • 「日本左利き協会」掲載中の物語

    【日本左利き協会】さんにて連載させていただいている ショートストーリーです

  • *エッセイ集。

    自選エッセイをいくつかまとめました。 時々入れ替えたり追加したりしています。

  • ショートショート集

    自作のショートショートのマガジンです。

  • ⭐︎創作集。

    ショートストーリー、ショートショート、短編小説などの創作作品を集めました。

  • Music Lover.

    音楽に関するエッセイを集めました。

最近の記事

    • インターバルシーズン。

      11月にはどこか中途半端な印象がある。 秋から冬へと移りゆく途中。 その年の大団円を迎えるまでの途中。 時間の流れは暖色のグラデーションを帯びて、 染まりきらないものたちが 目の前を通り過ぎていく。 そんな狭間にある今は、 ゆっくりと落ち着いて物事を考えるのに 向いているようだ。 忙しい喧騒の季節が訪れる前に、 しておきたいことを整理する。 それは、 これから使いたい器を 吟味することに似ている。 正面から 真横から 斜めから 時には裏返して糸底に触れ、 手にした感触から

      • 夢の通い路。

        • 深夜日記。

          夜更けにシャワーを浴びた。 銀色のカランをひねると、 シャワーノズルから温かいお湯が ザアーっと出てきた。 お湯を肩にかけると体がほっとして、 今日一日の疲れが排水口へと流れ落ちていった。 栓をひねればお湯が出る。 昔からそう決まっていたかのように、 透明なお湯の束が威勢よく途切れることなく 出続けていた。 私はそのいかにも当然な流れを、 不思議な思いで見つめるのだった。 申し訳ないけれど、これは、 きれいな水もままならない国や地域もあるのだから恵まれている環境にあることに

        マガジン

        • 「日本左利き協会」掲載中の物語
          18本
        • *エッセイ集。
          49本
        • ショートショート集
          23本
        • ⭐︎創作集。
          33本
        • Music Lover.
          21本
        • 食べることは生きること。
          28本

        記事

          外は斜線の雨。 湿った土の匂いが立つ。

          外は斜線の雨。 湿った土の匂いが立つ。

          それでも幻日は現実なのだ。

          それでも幻日は現実なのだ。

          十月を充月にするって言ってね。

          十月らしさ、秋のはじめらしさとは何だろう。 空の高さと、湿度の低い涼しい風と、 夏の間は身を潜めていた花たちの香りのこと。 金木犀が咲き始めた街を、 長袖のブラウスで歩くこと。 だとしたら 熱い陽射しを避けて日傘を差し、 半袖のシャツで出歩く今は、 いったい何という季節と 名づければいいのだろう。 きっともうすぐ。 もう少しで秋は来るはずと何度も思い 待ち焦がれていたのに、 秋の使者の姿は 街なかにも、銀杏や楓の並木道にも、 見当たらないのだった。 それならば 自分から秋

          十月を充月にするって言ってね。

          100日間の光跡。

          あと100日で2024年が終わる。 使いかけのスケジュール帳をめくっていて そのことに気づいた。 年の初めに 意気揚々と書き始めたスケジュール帳は、 大抵最後まで使い切れない。 なぜかというと、 日々の予定は 目につくリビングのカレンダーに 書き込んでしまうからなのだ。 視覚的にすぐに予定がわかることは 私にとって大切で、 わざわざ手帳を出してスケジュールを確認する ということを、しなくなっていたのだった。 なんだ。 それならもうスケジュール帳を買わなくたって いいのじゃな

          100日間の光跡。

          サラダをつくる。【詩】

          大きな白い琺瑯のボウルに レタスを敷いた 千切りにした紫キャベツと にんじんを盛った ざく切りの水菜と とうもろこしの粒も少し クレソンと赤いミニトマト 黄色いパプリカものせた 今日の出来事をスライスして フライパンで煎った 少し煙がたつくらいカリカリにすると 今日の出来事はごゅっと縮んで 鼻の奥がツンとする匂いを放った それでもまだまだしつこく煎って 焦げ目がついたら 色とりどりのサラダにまぶす 夕焼けみたいな色の ドレッシングをかけて いっさいがっさい 和えるのだ

          サラダをつくる。【詩】

          夜のお出かけ帰り。

          子どもの頃は夜に外を歩くことなんて ほぼなかったのだった。 夕焼けの色がさめて、 空が群青に変わる頃にはもう、 子どもたちは家のなかで 夕ごはんを食べたりお風呂に入ったり、 だらだらとテレビを見たり、 絵本を読んだりしているのが常だった。 夜というのは、 居間を出てトイレに行くまでの 暗い廊下の窓の向こうで 大きな庭木を揺するもの。 あるいは、 布団に入って天井から下がる常夜灯を 黙って見つめる私のまわりでじっとしている、 大人しくも少しこわいもの、だった。 めったにない

          夜のお出かけ帰り。

          脳よ、静かに眠れ。

          本屋には今日もたくさんの本が並んでいた。 著者別の棚から平台までぎっしりと。 本の顔を眺めながら彷徨っていると、 ふと、視線を感じた気がした。 私はたくさんの脳に囲まれていた。 ここには書いた人の脳みそが 並んでいるようなものなのだ。 誰かが夜通し頭のなかで考えたものが 目に見える文章となり、 本となってここにある。 そのことに少し畏れを感じたのだった。 こんなにもたくさんの書き手がいて、 その脳が読み手との出会いの瞬間を じっと待っているのだ。 特に目指す本があるわけで

          脳よ、静かに眠れ。

          思い出を束ねる。

          先日のこと。 自宅の本棚の整理をしている時に、 好きな本と再会しました。 いつもは視線が素通りする本でも、 読みたくなるタイミングは突然やってきます。 なんとなく秋が似合いそうで、 そろそろこれが読みたいなと思いながら手に取り 表紙を開きました。 するとそこには ↓ いつ挟んだとも知れない銀杏の葉がありました。 もっと秋が深くなった頃、 いつかの私は銀杏の葉を拾い、 思い出を束ねるようにして ここへ挟んだのでしょう。 過去から手紙をもらったようでした。 その時の私は、何を

          思い出を束ねる。

          あなたの人生がfeelin'goodであるように。

          誰かに寄り添う方法は 人によってさまざまである。 優しく手に触れたりハグをしたり、 温かい言葉をかけたり、 ただただそっと隣にいたり、 あなたのことをちゃんと見てるよと メッセージを伝えようと試みたり。 あの人にとって寄り添うことは、 どこにいても必ず歌を届ける、 ということなのだろう。 ステージが見えない『参加席』の人たちに向けた 巨大モニターが用意されていたことに、 私はひどく心を揺さぶられたのだった。 まだ暑さがたっぷりと残る八月の下旬、 2日間だけの藤井風さんのライ

          あなたの人生がfeelin'goodであるように。

          季節を招く。

          季節を招く。

          『わたしの知る花』読了。 家族という近しい存在に、本当はこうしてほしかったとかもっと褒めて欲しかったとか、心にしまっていた想いが溢れ出した時。自分願望ばかり並べるけれど、じゃあ自分はそうしてあげていたのかい?と心が尋ねる。そんな気づきをもたらす、それが小説の力なんだと思った。

          『わたしの知る花』読了。 家族という近しい存在に、本当はこうしてほしかったとかもっと褒めて欲しかったとか、心にしまっていた想いが溢れ出した時。自分願望ばかり並べるけれど、じゃあ自分はそうしてあげていたのかい?と心が尋ねる。そんな気づきをもたらす、それが小説の力なんだと思った。