鈴懸ねいろ

綴リスト*エッセイ.小説.空写真。日本左利き協会ホームページにてショートストーリー連載…

鈴懸ねいろ

綴リスト*エッセイ.小説.空写真。日本左利き協会ホームページにてショートストーリー連載中*AJINOMOTO PARK×noteコンテスト『おいしいはたのしい』審査員特別賞。秋の読書感想文コンテスト佳作。ショートショートnote杯佳作。

マガジン

  • *エッセイ集。

    自選エッセイをいくつかまとめました。 時々入れ替えたり追加したりしています。

  • ショートショート集

    自作のショートショートのマガジンです。

  • ⭐︎創作集。

    ショートストーリー、ショートショート、短編小説などの創作作品を集めました。

  • 「日本左利き協会」掲載中の物語

    【日本左利き協会】さんにて連載させていただいている ショートストーリーです

  • Music Lover.

    音楽に関するエッセイを集めました。

最近の記事

サラダをつくる。【詩】

大きな白い琺瑯のボウルに レタスを敷いた 千切りにした紫キャベツと にんじんを盛った ざく切りの水菜と とうもろこしの粒も少し クレソンと赤いミニトマト 黄色いパプリカものせた 今日の出来事をスライスして フライパンで煎った 少し煙がたつくらいカリカリにすると 今日の出来事はごゅっと縮んで 鼻の奥がツンとする匂いを放った それでもまだまだしつこく煎って 焦げ目がついたら 色とりどりのサラダにまぶす 夕焼けみたいな色の ドレッシングをかけて いっさいがっさい 和えるのだ

    • 夜のお出かけ帰り。

      子どもの頃は夜に外を歩くことなんて ほぼなかったのだった。 夕焼けの色がさめて、 空が群青に変わる頃にはもう、 子どもたちは家のなかで 夕ごはんを食べたりお風呂に入ったり、 だらだらとテレビを見たり、 絵本を読んだりしているのが常だった。 夜というのは、 居間を出てトイレに行くまでの 暗い廊下の窓の向こうで 大きな庭木を揺するもの。 あるいは、 布団に入って天井から下がる常夜灯を 黙って見つめる私のまわりでじっとしている、 大人しくも少しこわいもの、だった。 めったにない

      • 脳よ、静かに眠れ。

        本屋には今日もたくさんの本が並んでいた。 著者別の棚から平台までぎっしりと。 本の顔を眺めながら彷徨っていると、 ふと、視線を感じた気がした。 私はたくさんの脳に囲まれていた。 ここには書いた人の脳みそが 並んでいるようなものなのだ。 誰かが夜通し頭のなかで考えたものが 目に見える文章となり、 本となってここにある。 そのことに少し畏れを感じたのだった。 こんなにもたくさんの書き手がいて、 その脳が読み手との出会いの瞬間を じっと待っているのだ。 特に目指す本があるわけで

        • 思い出を束ねる。

          先日のこと。 自宅の本棚の整理をしている時に、 好きな本と再会しました。 いつもは視線が素通りする本でも、 読みたくなるタイミングは突然やってきます。 なんとなく秋が似合いそうで、 そろそろこれが読みたいなと思いながら手に取り 表紙を開きました。 するとそこには ↓ いつ挟んだとも知れない銀杏の葉がありました。 もっと秋が深くなった頃、 いつかの私は銀杏の葉を拾い、 思い出を束ねるようにして ここへ挟んだのでしょう。 過去から手紙をもらったようでした。 その時の私は、何を

        サラダをつくる。【詩】

        マガジン

        • *エッセイ集。
          49本
        • ショートショート集
          23本
        • ⭐︎創作集。
          33本
        • 「日本左利き協会」掲載中の物語
          17本
        • Music Lover.
          21本
        • 食べることは生きること。
          28本

        記事

          あなたの人生がfeelin'goodであるように。

          誰かに寄り添う方法は 人によってさまざまである。 優しく手に触れたりハグをしたり、 温かい言葉をかけたり、 ただただそっと隣にいたり、 あなたのことをちゃんと見てるよと メッセージを伝えようと試みたり。 あの人にとって寄り添うことは、 どこにいても必ず歌を届ける、 ということなのだろう。 ステージが見えない『参加席』の人たちに向けた 巨大モニターが用意されていたことに、 私はひどく心を揺さぶられたのだった。 まだ暑さがたっぷりと残る八月の下旬、 2日間だけの藤井風さんのライ

          あなたの人生がfeelin'goodであるように。

          季節を招く。

          季節を招く。

          『わたしの知る花』読了。 家族という近しい存在に、本当はこうしてほしかったとかもっと褒めて欲しかったとか、心にしまっていた想いが溢れ出した時。自分願望ばかり並べるけれど、じゃあ自分はそうしてあげていたのかい?と心が尋ねる。そんな気づきをもたらす、それが小説の力なんだと思った。

          『わたしの知る花』読了。 家族という近しい存在に、本当はこうしてほしかったとかもっと褒めて欲しかったとか、心にしまっていた想いが溢れ出した時。自分願望ばかり並べるけれど、じゃあ自分はそうしてあげていたのかい?と心が尋ねる。そんな気づきをもたらす、それが小説の力なんだと思った。

          夏で空に線をひく。

          夏で空に線をひく。

          夜のいるか。

          夜のいるか。

          夏の布団と天井と。

          他の人の家に泊まった時の 夏掛けの匂いが好きだ。 落ち着かないのに好きなのだ。 自分が遠いところに来たのだと実感するのは、 慣れない布団に入った時なのだと思う。 ぱりぱりとした麻混のシーツや、 サッカー地のカバーのついた薄い夏掛けと タオルケット。 客人が来るのだからと 陽の高いうちに寝具を干しておいてくれたのだとわかる匂いに、心遣いを感じる。 いつもの自分の寝床を離れて、 知らない夜のなかにいる。 寝入りばなに聞こえてくる その家の人が廊下を歩く足音や、 雨戸の外の風の具

          夏の布団と天井と。

          夏雲を捕まえにいく。《エッセイ》

          まだまだ暑さは真夏を告げているというのに、 明け方にこおろぎの声を聴いた。 朝の温度がほんの少しやわらいだ。 日の出が遅くなった。 店頭には秋服。 夏服のセールが始まっている。 生き急がされているみたいだ。 だから 今のうちに夏雲を捕まえにいこう。 そうして虫かごに雲を入れて飼い、 雲が膨らんだり 夕立を降らせたり 茜色に染まったりするさまを観察して 絵日記に記そう。 この夏の宿題は まだ終わっていないはずでしょう。 提出日までに 夏の跡を 心と体に残しておかなきゃいけ

          夏雲を捕まえにいく。《エッセイ》

          夏を捕まえにいこう。

          夏を捕まえにいこう。

          スタンダード・サマー

          休むことを知らないエアコンが 今日も微かな音をたてている。 窓辺の観葉植物たちにとっても ここは快適なようで、 新しく柔らかい芽をどんどん伸ばしている。 目にも優しいものたちが 気持ちを和ませてくれている。 なんてありがたこと。 たった1枚の窓ガラスを隔てた向こうとこちらでは、環境はまったく違う。 この暑さのなか、 野良猫たちはどうしているのか気にかかる。 この暑さが 特別なものではなくなっていく予感がする。 当たり前のように 夏は40度近くまで気温があがることに、 いつ

          スタンダード・サマー

          藤井風さんの新曲Feelin'good 『嵐は』と『私は』.『あらためて』と『温めて』.『と化す』と『溶かす』等歌詞にも遊び心が炸裂している。米のレコード会社との正式な契約発表後最初の楽曲は全編日本語詞。英語が堪能な藤井風さんだがだからこそのこだわりも感じられる。ポップで軽やか

          藤井風さんの新曲Feelin'good 『嵐は』と『私は』.『あらためて』と『温めて』.『と化す』と『溶かす』等歌詞にも遊び心が炸裂している。米のレコード会社との正式な契約発表後最初の楽曲は全編日本語詞。英語が堪能な藤井風さんだがだからこそのこだわりも感じられる。ポップで軽やか

          貝殻雲の寄せる海辺で。

          貝殻雲の寄せる海辺で。