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*エッセイ集。

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自選エッセイをいくつかまとめました。 時々入れ替えたり追加したりしています。
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記事一覧

夜のお出かけ帰り。

子どもの頃は夜に外を歩くことなんて ほぼなかったのだった。 夕焼けの色がさめて、 空が群青…

鈴懸ねいろ
3週間前
60

ハグ・マイベア。

ぬいぐるみを抱きしめてみればわかるさ どんな子でもいいんだ ひとつくらいクローゼットの奥に…

鈴懸ねいろ
4か月前
59

I wanna be with U forever.

今だってそうだけれど、 思春期の頃は特に 写真を撮られるのが嫌いだった。 友だち同士ならば…

77

ドッペルゲンガーサービス

世の中には 自分によく似た人間が三人いると 言われている。 それが単なる迷信だとしても、 違…

鈴懸ねいろ
4か月前
80

まいにち、おみそ汁をどうぞ。

夕餉の始まりにおみそ汁をひとくち啜ると、 ああ、と声が漏れてしまうのだった。 今日も一日お…

鈴懸ねいろ
5か月前
101

いちばん遠いと思った場所へ。

自分の目で見ることができる いちばん遠い場所へ、 行ってみたいと思っていた。 電車の窓から…

鈴懸ねいろ
7か月前
55

子どもの頃何になりたかったですか。

一週間が始まったばかりだ。 帰り道は冷える。 本当は温かいロールキャベツを 食べたかったけれど、 キャベツを破かずに料理できる自信が 1ミリもない今夜は、 他のものを作ることにしようと思う。 ♢ 子ども時代の あなたの夢は何でしたか。 小学生の時の友人の1人は 「コックさんになりたい」 と言っては、 自分で編み出した摩訶不思議な料理を 遊び仲間に振る舞ってくれたものだった。 彼の実験台だった私たちは、 なんとかお腹も壊さずに生き延びて、 彼は今では立派なシェフとして働い

風になびくものが好き。

風になびくものが好きだ。 それらを眺めていると、心がふわりとしてくる。 風をはらんで膨らむ…

鈴懸ねいろ
11か月前
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花の咲く場所

これは世の中に疫病が蔓延るよりも もっとずっと前に書いたエッセイです。 ****** 数…

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細く、長く。

今日のちょっとした曇り空から漏れる 日差しには、見覚えがあった。 開発まもない新しい海辺の…

118

私の中の海であそぶ。

冬だというのに、夏の海のことを思い出した。 思い出す行為は、いつだって唐突だ。 急に「そう…

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永遠じゃないからこそ、今から届けにゆこう。

ねえ。 あの人も おばさんになっちゃったよね。 カフェの隣の席の会話に耳を澄ます。 かつて…

150

ビタースイート、そしてビター。

青い時代だった。 なんだってどうにかなるさ、と思っていた。 あれとこれを足せばこうなるので…

108

後悔先に立たず、または、後悔あとを絶たず。

これで最後だとわかっていたから、 とにかくずっと笑ってばかりいた。 懐かしいタイプのモンブランを食べながら、 私たちは夢のある楽しい話ばかりしていた。 「次に会う時までに編み物上手になって 毛糸の帽子をプレゼントするね」 「今年は金柑はあまりならなかったね。 1年おきに豊作になるから 来年はきっとたくさん実るよ。 金柑のジャムを作って近所におすそ分けしよう」 「庭の草取り頑張るから 次にどんな花を植えるか考えておいて」 これが最後の会話になっても悔いのないように、 希