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*エッセイ集。

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自選エッセイをいくつかまとめました。 時々入れ替えたり追加したりしています。
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記事一覧

まいにち、おみそ汁をどうぞ。

夕餉の始まりにおみそ汁をひとくち啜ると、 ああ、と声が漏れてしまうのだった。 今日も一日お…

鈴懸ねいろ
13日前
72

プラスマイナス≠ゼロ

何かを手に入れた日は、 別の何かの手を離した日でもあった。 一日のなかの感情として それは…

91

いちばん遠いと思った場所へ。

自分の目で見ることができる いちばん遠い場所へ、 行ってみたいと思っていた。 電車の窓から…

鈴懸ねいろ
2か月前
54

子どもの頃何になりたかったですか。

一週間が始まったばかりだ。 帰り道は冷える。 本当は温かいロールキャベツを 食べたかったけ…

鈴懸ねいろ
2か月前
95

I wanna be with U forever.

あなたはすぐに写真を撮りたがる あたしは何時も其れを厭がるの だって写真になっちゃえば あ…

鈴懸ねいろ
6か月前
74

風になびくものが好き。

風になびくものが好きだ。 それらを眺めていると、心がふわりとしてくる。 風をはらんで膨らむ…

鈴懸ねいろ
5か月前
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花の咲く場所

これは世の中に疫病が蔓延るよりも もっとずっと前に書いたエッセイです。 ****** 数ヶ月に一度、朗読会を行なっていた。 物語の筋や台詞の部分を 数人で分担する朗読劇をやったり、 静かなピアノ伴奏のなか 本を読み聞かせたりするのだった。 いつもはカフェやレンタルルームで その会を開いていたのだが、 友人の誘いで、 ある施設でぜひ、との話を戴き 見学に行くことになった。 ♧ 明るい日射しが入り込む食堂。 みんなで唄う秋の歌が聴こえてきた。 入居者の方も職員の方も穏やか

テレポーテーション。

エアポケットにすとん、と 入り込んだような午後だった。 仕事は終わらせた。 今日やるべき用…

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細く、長く。

今日のちょっとした曇り空から漏れる 日差しには、見覚えがあった。 開発まもない新しい海辺の…

鈴懸ねいろ
9か月前
120

私の中の海であそぶ。

冬だというのに、夏の海のことを思い出した。 思い出す行為は、いつだって唐突だ。 急に「そう…

93

永遠じゃないからこそ、今から届けにゆこう。

ねえ。 あの人も おばさんになっちゃったよね。 カフェの隣の席の会話に耳を澄ます。 かつて…

鈴懸ねいろ
11か月前
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ビタースイート、そしてビター。

青い時代だった。 なんだってどうにかなるさ、と思っていた。 あれとこれを足せばこうなるので…

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後悔先に立たず、または、後悔あとを絶たず。

これで最後だとわかっていたから、 とにかくずっと笑ってばかりいた。 懐かしいタイプのモンブ…

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Tokyo Night ラプソディ

東京の夜景が光の川になって 後ろへ後ろへと流れていった。 車のウィンドウ越しの しんとした立体駐車場や 灯りを落とした瀟酒なカフェが、 後戻りできないスピードで遠ざかる。 そしてまた次から次へと知らない街が 現れては消えていった。 知り合い宅での集まりを終えて、 私達は自分の家へと帰ろうとしていた。 ご馳走の載った皿が立てる かちゃかちゃした音。 さざなみみたいな会話や笑い声。 通り過ぎてきた道路に 今日という過去をどんどん置いてゆく。 イルミネーションの点る街並みが いつ