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⭐︎創作集。

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ショートストーリー、ショートショート、短編小説などの創作作品を集めました。
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記事一覧

夜中の黒糖ぷりん。

ただいま。 玄関の外で大きなため息をついてから、 なんとか取り繕ってドアを開ける。 おかえ…

119

カンテラ掲げていちご狩り【短編小説】

足元がとても暗いので気をつけてくださいね。 そう言われて咄嗟にわたしのつま先は身構える。 …

97

トートバッグいっぱいの呪いを。1. 【ホラー小説】

【あらすじ】 自分が既に死んでいることに気づかないまま学校へ通っていた少年カイ。日々の小…

鈴懸ねいろ
4か月前
77

花、送れ。【2000字のホラー】

いい?合言葉を決めておくわね。 何かあった時のために。 高齢者施設での虐待のニュースを観…

84

星さらい。#シロクマ文芸部

銀河売りが屋台を引いて僕らの街にやってくるのは、夏の夜と決まっていた。 夕立が引いた後の…

105

ココアと神様の王国

神様はベッドの中。 遠い洞穴から吹いてくる風みたいな、 深い寝息を立てている。 今、夢のど…

58

大掃除の日。【詩あるいは短編小説】

窓拭きをした カーテンを洗った 冷蔵庫を磨いた 食器棚を拭いた 下駄箱を整理した 洗面台と鏡をぴかぴかにした クローゼットの中に掃除機をかけた 似合わなくなった服をハンガーから外した 珈琲を飲んで休憩した 苺クッキーをつまんだ スマホで音楽ビデオを観た 気づくと次々と観ていた 我に帰った 夕食の買い出しに出かけた マフラーを忘れていったん取りに戻った ピンク色のセーターを着た柴犬とすれ違った スーパーの白菜も長葱も売り切れだった 豆腐と春菊鍋にするしかなかった 年賀状を出

旅。【短編小説】

 旅を一頭飼っている。  部屋から出られない私のために、母親が用意したものだった。  旅は…

鈴懸ねいろ
10か月前
89

永遠チョコレート #シロクマ文芸部

チョコレート、食べたでしょう。 さっきまで唇を重ねていた真白が 笑いながら囁いた。 わたし…

鈴懸ねいろ
9か月前
83

雪の華 #シロクマ文芸部

雪化粧をする初めての冬になった。 「華もいよいよ 雪化粧をする歳になったんだねえ」 鏡に…

鈴懸ねいろ
9か月前
115

訃報。#小牧幸助文学賞

母シンダ桜ノ木ニ散骨ス春ニハ帰レ父ヨリ。 *** 小牧幸助さんの企画に 参加させていただ…

72

紅葉鳥。#シロクマ文芸部

紅葉鳥を捕まえる季節になった。 山に踏み込む狩人たちの、 落ち葉を踏みしめる足音がする。 …

79

最後の願い。【ショートショート】

この心臓はもうすぐ動きを止めるだろう。 吸って吐いて。 吸って吐いて。 呼吸をするたびに肺…

90

朝からドーナツ屋の列に並んではいけません。【ショートショート】

朝からドーナツ屋の屋台の列に並んでいた。 明らかに出勤前とわかるスーツ姿の人たちが、 何人も大人しく立って待っている。 私もその列に加わったのだった。 みんな朝食がわりにドーナツを食べるらしかった。 自分の順番がくると 小声でぼそぼそとドーナツの名前を言い、 砂糖をまぶした赤茶色の輪っかを受け取っている。 ドーナツを包む紙に油染みが浮かんで 半透明になっているのも気にせず、 誰もが足速に駅へ向かいながら ドーナツをかじっていた。 いよいよ私の番がきた。 みんなと同じものを