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フェミニズムと、渋谷と、ナイジェリア映画と。|#映画にまつわる思い出

「映画のある人生を。」

これは、年間を通じて映画を放送しているチャンネル「WOWOWシネマ」のキャッチコピーです。

映画は人生を豊かにするものであると、私たちは信じています。

お題企画「#映画にまつわる思い出」で募集します。


日本で映画を鑑賞する、といえば娯楽や趣味という印象が強いが

アフリカ大陸西岸部に位置する国『ナイジェリア』で映画とは、

もはや『人生そのもの』といってもいいかもしれない。


女性を取り巻く見えざる暴力
『Blood Sisters』

世界三大映画と言われているのが、
ハリウッド (米国)
ボリウッド (インド)
続いて、ノリウッド (ナイジェリア) である。

それだけナイジェリアは、映画産業が盛んだ。


ナイジェリアの人口は2億人を超えアフリカ最大(世界6位)であり、原油や天然ガスなど豊富な天然資源に恵まれた国でありながら、貧しい国でもある。2022年のニュースでは、平均給与所得は、世界でもワーストであるにも関わらず、物価の高さでは世界のベストに入る。

これは何を意味するかというと、貧しくて食料も満足に買えない人が多くいるということ、そして貧富の格差が激しいということだ。

先月、ZOOMで直接ナイジェリアの状況を見聞きすることが出来たのだが、行政サービスである役所では、度々、電気が止まる。

電気の供給が不安定なため、一般家庭でも止まることは日常茶飯事。中流家庭以上は、むしろ政府に頼らず、みんな自家発電機を持っていたりする。ただ、さすがに役所の電気が止まるというのは、政府がきちんと機能していないに等しいと私は思っている。

実際に現地のニュースを見ると、物価高でインフラも整っておらず、それでいて富豪はどんどん海外へ出てしまうこの現状に、不満が爆発している市民の怒り嘆きが聞こえる。

そんな環境のナイジェリアでは『女性に対する人権』というのも厳しいものがある。

それでもナイジェリアの女性達はとても強く、たくましく

そして、美しい。

ナイジェリア映画は、もはや娯楽ではなく、社会問題に一石を投じるような生々しい凄みがある。
それは実際に日々、周りで起こることだからだ。



後ほど映画も紹介するが、
一作目は、ナイジェリアの海外ドラマ『Blood Sisters』を紹介したい。

美しいナイジェリア文化やファッションを感じられながらも、ナイジェリアにおける『女性の人権とは何なのか』を問われている。


「…お母さん、私、結婚式を止めたい。」

「どうして」


「彼は、私に暴力をふるった…」

「…それだけ?」

「暴力をふるったんだよ!お母さん!」


「それがどうしたの? たった、それだけでしょ」

主人公は仲良し姉妹。

姉の結婚式が行われるのだが、姉の新郎はDVをする男で、恐怖に日々震えていた。

いつか自分は殺されるんじゃないか、そう思い勇気を出して訴えるも、実母ですら「そのくらいのこと」と娘を守るどころか我慢しろと叱咤するのである。

新郎家族は資産家で、娘が結婚すれば同じく裕福になれる。
女性は”所有物”という構造である。

結婚式当日、姉に暴力を振るう場面を見てしまった妹は、咄嗟に新郎を殺してしまうのだが…



サスペンスやホラーの要素も強く、とても観やすい。
面白いので、ノリウッド映画が初心者の方でも飽きずに楽しめると思う。

ストーリーの面白さもさることながら、多方面で描かれている女性のあらゆる人権がおざなりになった『現実』にも是非、目を向けてもらいたい。


もちろん、ノリウッドには軽快な恋愛映画もある。
そこでもやっぱり垣間見れるのは『女性の人権に対する問い』なのである。


結婚とは?女性の幸せとは?
『A SUNDAY AFFAIR』

ナイジェリアで30歳を過ぎた女性は「結婚できないお荷物」と周りから苦言されることがあるらしい。

日本に住んでいる私からしたら「30歳なんて、まだまだこれからだろう」と思うのだけど、ナイジェリアでは『女性は働くより早く結婚して家庭を守るべき』という考え方がまだ根強いのだ。

二作目に紹介する『A SUNDAY AFFAIR』は、そんな風潮に一撃するような爽快な映画である。

少し大人の甘酸っぱいラブコメディなのだけど、例えば、好きなことを仕事にするためには”男性からのサポートが必要”など。ここでも、女性をとりまくナイジェリア社会の様々な現実と、しがらみが絡みつく。

それでも、たくましく生きる主人公の女性二人が美しい。

米国ドラマ『SEX AND THE CITY』を彷彿させるようなストーリーであり、女性の友情や恋愛観、そして結婚のことなど、前者のドラマが好きな方やラブコメディが好きな方なら楽しめる映画。重さはなく、さくっと見れる。

きっと観終わった後は、ハリウッド映画にはない、多方面な視野を得られること間違いなし。

それでいて気付くのだ。

文化や言語は違っても、世界中にいる女性の願いはひとつ

『本当の意味で、自由になること』



渋谷で殴られて歯が折れた。映画のような私の昔話


さて、映画を観て思い出すことがある。

それは今から数十年前。
私がセネガル国籍の男性とお付き合いしていたとき、夜の繁華街、渋谷で起きた事件のことだ。


ある日、20時頃。突然、電話が鳴った。

「今、渋谷で飲んでいるけど来れない?」

突然ではあるが、私は彼からの誘いにワクワクしながら支度をした。

(*'ω'*)

お金が無いなりに、お酒が好きな彼へお土産を渡そうと近所のコンビニで500円のボトルワインを購入して向かった。

渋谷の指定された立ち飲み屋に到着すると、すでに彼はお酒で”出来上がっていた”

「おー、来たか。こっちきて飲めよ」

私はお酒がとても強いので、滅多なことで潰れたりしない。
そんなわけで私も、とりあえず大きなジョッキのハイボールを頼んだ。

しばらく楽しんで時間もそこそこに、私は「もう帰ろう」と彼に言った。

途中で私に帰ろうと水をさされたことが気に食わなかったのだろう。
突然、彼の”スイッチ”が入った。

「つまんねー女だな!」という怒声を皮切りに、私と彼は口論になった。


店内で口論は迷惑だと思った私は、続きを外でしようと彼の服をつかんで引っ張った。

そしてお店の入り口から出た途端。

バッコーン!!!!!

('Д')…!!!!


私は飛んだ。




いきなり彼が顔を殴って来たのだ。

私は華奢な体ではないが、それでも身長190cm近い体格の泥酔男性に思いっきり殴られると、こんな私でも空を飛ぶんだと経験した。

気が付くと、口の中は血の味がいっぱい広がっていた。


「おい、何やってんだよ!」

思わず、同じく立ち飲み屋に来ていたセネガル人の彼の友人が私を介抱してくれた。


そういえば『外国人男性と付き合うなんてもう止めなよ~』と言われたこともあるので、

介抱してくれた彼の友人のためにも、ここは一言強く断っておきたい。

DVする男性に国籍は一切関係ない。

外国人だから暴力振るう、日本人だから暴力振るわないということは一切ないのだ。

さてさて、とにかく話を戻すと。



その後、介抱してくれた彼の友人と彼氏は口論になっていた。

「どうして殴ったんだよ!」

口論している間にも、私の頭はグラグラ揺れる。
人生で初めて、空想のお星さまが見えた。

口論の声がBGMとして流れつつ、私はゆっくり立ち上がった。

そして何を思ったのか、
私はお土産に持っていたワインボトルの瓶を持つと・・・

ガシャーン!!!!!



彼の頭めがけて瓶を投げつけた。

そして命中した。

(/・ω・)/




瓶の割れる音と同時に、通りすがりの人の悲鳴も聞こえた。

「死ぬときは一緒に地獄まで道連れにしてやる!」

これは本当に私がその時、吐いた捨て台詞だ。

我ながらサムイ台詞である。

間違いなく映画の観すぎ…

(;´・ω・)


殴りつけたあと気が抜けたのか、私は道端に倒れた。

ハッと気付いた時には、パトカーが数台。
救急車も到着していた。


ちなみにその後、連行された彼はどうなったか知らない。

私は、「反撃なんてしたらダメだろう!」と警察の方に怒られながら、救急車で手当てを受けて帰った。


自宅に着くと、涙で袖がぐしゃぐしゃに濡れていることに気が付いた。
鏡を見ると、頬には乾いた痕があった。

そっと、彼の連絡先をブロックして消す。

折れた歯と、折れた心と。

何もかも折れまくったボロボロの私は、どうしようもなく苛立った気持ちを抱えて、レンタル屋に向かった。

外は少し肌寒い、秋の夜のことだった。

きみの首に巻きついていたもの、眠りに落ちる直前にきみを窒息させそうになっていたものが、だんだん緩んでいって、消えはじめた。

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『なにかが首のまわりに』より
フェミニスト|ナイジェリア人作家




私はノリウッドが大好きだ。

一日お疲れさまと自分自身を労わりながら、
今日もナイジェリア映画を観る。

元気がないとき。強くなりたいとき。

映画で私は学ぶ。

そして、思い出すのだ。



映画のある人生、ではなく、

『人生そのものが映画である』ということを。




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