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『君たちはどう生きるか』の映画感想まとめ

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『君たちはどう生きるか』についてのすてきな映画感想をまとめるマガジンです。 #君たちはどう生きるか
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2024年5月の記事一覧

【読書録】『君たちはどう生きるか』吉野源三郎

今日ご紹介する本は、吉野源三郎著の『君たちはどう生きるか』。初出版は1937(昭和12)年。盧溝橋事件が勃発した年だ。私が持っているのは、岩波文庫の1982年改訂版。 著者の吉野源三郎は、1899(明治32)年生まれの編集者であり、児童文学者、評論家、翻訳家、ジャーナリスト。新潮社の「日本少国民文庫」の編集主任となり、本書をその1冊として刊行した。その後、岩波新書の創刊を主導し、雑誌『世界』初代編集長となり、岩波少年文庫の創設にも尽力した。明治大学教授、岩波書店常務取締役な

【後編】校閲記者がうだうだ考える「宮崎駿」と「宮﨑駿」

前編はこちら▼【以下後編】字体統一のメリットとデメリット新聞のルールで名前の字体を変えた結果、その人が普段使っている表記や他のメディアでの表記と異なることで、「同じ人物」を指すことが分かりにくくなってしまうとすればデメリットと言わざるをえません。 新聞は「分かりやすい」記事を旨とします。普段「臺」を使っている人の名前を「台」にすると、字体は「分かりやす」くなりますが、「臺」と「台」が〈字体が異なる同じ字種である〉という知識を読者に要求する、という点では「分かりにく」くなって

ハラールの屠畜でさえ大規模工場で実施されており、祈祷は録音されたものをエンドレスで流す場合が多い

教養のある人は時間を大切にするので、時間を節約するための用語を学びます。サイコパスという用語は、教養のある人が時間を大切にするために使用する用語です。

【前編】校閲記者がうだうだ考える「宮崎駿」と「宮﨑駿」

「宮﨑 駿 監督作品」泣く子も黙るスタジオジブリ作品「君たちはどう生きるか」が公開された2023年夏、校閲部内(の一部)に動揺が走りました。 宮崎駿が「たつさき」になっている…ざわ…ざわ アシタカ「じいじ、何だろう」 じいじ「分からぬ。人ではない」 アシタカ「村の方はヒイさまが皆を呼び戻している」 じいじ「来おった……タツサキだ!!」 アシタカ「タツサキ!?」  ♪ デッデー、デデデッデー 映画ポスターの監督名表記がこれまでの「宮崎駿」から「宮﨑駿」にさりげなく変わって

君たちは どう生着るのか。 そして誰と生き、何をするのか?ブラックジャックと大門未知子になった研究者達。出逢いこそがすべて。登壇記録Vol,2

前回のポストからの続きです。 そう、ブラックジャックと大門未知子になったお2人のこと、思い出してくださいね。なんのこっちゃ、という方は、こちらの記事からどうぞ。 日本検査学会IN金沢 そこでファッションという異色の登壇。 リスキーな決断をした油野教授との出会い。私の本「人生は服・次第」をきっかけに会いに来てくださった行動力。そして、まず最初は こんなご依頼を受けました。 石川県臨床衛生検査技師会・創立65周年記念式典での登壇です。 題目は『人生は服、次第・Power

239 生き方は生きて学ぶしかない。

どう生きるか? その問いズルくない? まあ、見ていない映画のことを言うのもなんだけど。映画『 君たちはどう生きるか 』のタイトルを見たとき、もちろんその前に吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』があって、そこからの漫画『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著、羽賀翔一著)が話題になっていたことを思い出した。  いまのところ、書籍も漫画も読んでないし、映画も見ていない。  ただ、「どう生きるか」は、生きている間にずっと、ただしふわっと浮かんでいるテーマだろうから、きっと誰もが一度は

【「THE ONE」制作記①】強く生きるとは何か

はじめに今年の9月に、僕が理事をしているNPO法人LES WORLDの大きなイベントがあります。それは今まで訪れた孤児院の子ども達を日本に招待して、人種も言語も宗教も違う一つのステージ「THE ONE」を作るというもの。 実際に来る予定の子ども達は、タイ・カンボジア・インド・ネパール・モザンビーク・ザンビアから二人ずつ。 ちなみに僕はそのステージの舞台監督兼演出チームリーダー兼ミュージシャン。正直舞台のことなどほとんどわからないので、みんなに助けてもらいながらやってます。

『来世まで泳ぐ鯉のぼり』 泳泳

小学生の頃、幼馴染にK君という男の子がいた。 口下手で、怒ったり恥ずかしがったりするとすぐに顔が真っ赤になる子だった。 毎日のように遊んでいたが、何をして遊んでいたのかは覚えていない。家が近いという理由だけで毎日一緒に遊べる人がいるなんて、今となっては考えられないぐらい幸せなことだ。 学校終わりに何人かでK君の家に向かい、玄関前でK君が出てくるのを待つ、というのが毎日のルーティーンだった。 5月。いつものようにK君の家に向かい、庭を見て私は驚愕した。 大きな大きな鯉のぼり

宮崎駿の放つ渾身の矢は我々の心に届いたか?〜「君たちはどう生きるか」所感。

5月12日(日)の夜、尼崎のシアターで宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」を観た。これが2度目だ。1度目は、まだ作品に関する情報がほとんど開示されていなかったので、正直、ストーリーの構造がよく分からなかった。しかしそれでも十分に面白い。何だかよく分からないまま感動した。 その後、NHKが7年にわたって宮崎駿を追いかけ、それを80分に編集したドキュメンタリーを見る機会があり、彼がこの映画にかける執念を目の当たりにした。実は作品中の大叔父のモデルは盟友パクさん(高畑勲)で

海外へ向けて説明したい『君たちはどう生きるか』のポイント

とあるご縁から、海外向けに『君たちはどう生きるか』の記事を書くことになった。バイリンガルの翻訳家と一緒に映画を鑑賞し、どんなポイントが海外の方にとって伝わりづらいかを話し合ったのだが、いつもと違う視点と考え方で、新鮮かつ非常に面白い。 そこで英語に翻訳される前の日本語記事(少し日本用に整えたもの)を下記に掲載してみた。日本人による日本の解説は「当たり前」と思われる部分もあるかもしれないが、本来は海外向けであるので広い心で読んでいただきたい。 ▼ここから記事(翻訳前) 宮

アオサギからの贈り物 〜 私はどう生きるか

先週の今日、私は神と出逢った。 前回の記事にも書いたが、この方だ。 お堀端を歩いていて、ふいに視界に入ってきた、その姿。 その時の私たちの会話をざっくりと再現してみる。 この神の名は、 アオサギさん だそうだ。 上記会話の中に出てきた橘鶫さんと、KaoRu IsjDhaさんから教えていただきました。ありがとうございました。 (前回記事のコメント欄参照) 調べてみると、日本や海外の広い範囲に生息している鳥だそうだ。 私も過去に見たことがあるのかもしれないが、寡聞にし

お前は今まで読んだ漫画の巻数をおぼえているのか? 【 その1】

面白かった漫画の感想(というかメモ)です。完結、未完で連載購読中、WEB マンガなど問わず、読んだ順で関連作品も紹介。 1ヶ月単位か、1記事に入る適当なボリュームになったらまとめて出していきます。 さよなら絵梨(藤本タツキ)#001 『ルックバック』が良かったので、同じくらいのボリュームの1巻完結作品を見つけて。藤本タツキは『ファイアパンチ』が一番好き。 ファイアパンチ(藤本タツキ)#002 ザ・ファブル The second contact(南勝久)#003 いつ

岩倉博『吉野源三郎の生涯 平和の意志 編集の力』 (2022、花伝社)を読む

吉野源三郎と言えば児童小説『君たちはどう生きるか』の作者であり、その作品が宮﨑駿監督作の映画の発想の元になったことでその名も改めて周知されることになった。改めて、とあえて記述したのには意味がある。本書を読むと第二次世界大戦後の日本社会において、吉野がいわゆる進歩的知識人・言論人・編集者・作家として歩んだ生涯の足跡の大きさ、もっと言えば偉大さを感じる。しかし、私自身は宮﨑監督作を観るまでは、これまで特に吉野自身に注目したことはなかった。不勉強ではあるが、1981年にその生涯を閉