芦田央(DJ GANDHI)

フリーライター / 映画好き / ノンフィクションとドキュメンタリー愛好家 / 札幌出…

芦田央(DJ GANDHI)

フリーライター / 映画好き / ノンフィクションとドキュメンタリー愛好家 / 札幌出身・東京在住・古今東西の映画を貪るように日々是鑑賞 / 映画の記事がメインですが、好奇心丸出しの「レア職業図鑑」という連載もしています

マガジン

  • ドキュメンタリーのススメ

    「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもんで、ドキュメンタリー映画はオールジャンルで、玉石混淆で、予測不可能で面白い。周知の事実にすら新しい視点を与える、そんなジャンルです。個人的にグッと来た、そんなドキュメンタリー映画をご紹介します。

  • レア職業図鑑

    珍しい職業、何やってるか分からない職業、そもそも存在の知られていない職業。そんなお仕事の業界知識と現場の声を発信し「世界は誰かの仕事でできている」を地で行こうという連載です。さらには日本の伝統文化に関わる職業にもフォーカスし、それらを保存・アーカイブしていきます。

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みなさん、映画の”エンドロール”観てますか?その歴史と最新事情

一度は話題になったことがあるのではないでしょうか、映画で”エンドロール”観るのか観ないのか問題。 もちろんそれは個人の自由ですが、私は必ず観ますし、また他の方にも”エンドロール”を楽しんで欲しいと思っています。なぜなら映画の本編にこだわって製作してきた監督をはじめ映画製作陣が、最後の最後であるエンドロールにこだわらない訳ないだろうと、思うからです。曲とか、フォントとか、順番とか。 という事で今回は「最後まで観てね!」という事を強く主張したく、またエンドロールを楽しめるとい

    • 2024年上半期 映画ベスト10

      2024年の前半戦が終了です。上半期に公開された新作映画の中からベスト10を選ぶとともに、全部ではないですが、ピックアップした各作品について書いた過去記事をご紹介します。 すでに配信済み、これから配信、まだ劇場公開中の映画が混在していますが、これから観ようかなという方の参考にしていただければ嬉しいです。 ※選んだ十作品は順位ではなく順不同 オッペンハイマー ▶クリストファー・ノーラン監督 ご存知の通り、今年のアカデミー賞の「作品賞」受賞作です。登場人物が多く歴史的背景

      • 『関心領域』の原作小説について寄稿しています

        毎日新聞社さんの運営する映画サイト「ひとシネマ」に、『関心領域』の原作小説についての記事を寄稿しました。 ▼記事はこちら 原作の発売が映画公開と同時期だったため、珍しく映画→原作の順で読みました。驚いたのが、映画の内容とは結構違うんですよ。 ザンドラ・ヒュラーが演じていた所長の奥さんに、映画では登場しなかった若き将校トムゼンが、稲妻に打たれたように一目惚れするところから原作小説は幕を開けます。もう、のっけから違うんです。 ただ映画の持っていた残酷さは小説にも共通する重

        • 『HOW TO BLOW UP』パイプラインの爆破は「正義」か「テロ」か

          本作は「環境テロ行為を助長する」と、FBIが警告を出した作品である。 若き活動家たちが環境破壊行為を止めるため、また自身の主張に耳目を集めるために、テキサス州の石油精製工場のパイプライン爆破計画を立案する。ただ爆破するだけではない。誰も傷つけず、環境も破壊することなく、石油を1滴もこぼさず、この任務を遂行するのである。 本作には原作があり、「パイプライン爆破法 燃える地球でいかに闘うか」という、よりその意味が直接的に伝わってくるタイトルの本だ。 スウェーデンの気候変動学

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        • ドキュメンタリーのススメ
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          22本

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          お下品なB級低俗コメディ『ドライブアウェイ・ドールズ』(誉め言葉)

          『ビッグ・リボウスキ』(1998年)のようなシリアス色の強いコメディか、『ファーゴ』(1996年)のようなコメディ色の強いシリアスな映画が多い印象のコーエン兄弟。弟のイーサン・コーエンによる初の単独監督作品となった『ドライブアウェイ・ドールズ』は、コメディ色の強いコメディで完全に振り切っている印象だ。 しかもかなりお下品な路線の、B級低俗コメディ(誉め言葉)である。 イーサンの妻であり、今作では共同製作及び脚本を務めたトリシア・クックは次のように語っている。 社会的意義

          お下品なB級低俗コメディ『ドライブアウェイ・ドールズ』(誉め言葉)

          『マッドマックス:フュリオサ』は「怒りのデス・ロード」で予習・復讐

          アクション映画というジャンルが敬遠されがちなアカデミー賞においてすら、技術部門で6つのオスカー像をかっさらった『マッドマックス 怒りのデス・ロード』から9年。前日譚となる『マッドマックス:フュリオサ』がいよいよ日本でも公開された。 前作「怒りのデス・ロード」の作り込まれた世界観には、劇中で語られることのなかった膨大な量の設定があり、そんな奥行きがビジュアルや俳優の演技に昇華され、リアリティの下支えとなっていた。 例えばジョージ・ミラー監督は撮影時点で、フュリオサの生い立ち

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          「カンヌ国際映画祭」の関係者エリア内はどうなっているのか

          カンヌ国際映画祭についての観光客向け日本語情報があまりなかったことから、実際に来てまとめてみたのが下記の記事。 ただ今回、筆者は幸運にも関係者エリアに入らせてもらい、いくつかの公式上映に参加することができたので、一般公開されない「関係者エリア」内についても、せっかくなので併せてご紹介したい。 まずは映画祭のメイン会場である「パレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレ(Palais des Festivals et des Congrès de Cannes)」、そのメイン

          「カンヌ国際映画祭」の関係者エリア内はどうなっているのか

          カンヌ国際映画祭の歩き方

          2024年の5月にカンヌ国際映画祭へ初めて来た思ったのは、日本人の観光客がほとんどいないということだ。本家「歩き方」を含め、確かにネットにも情報があまりない。昨今の円安の影響もあるかもしれないと思ったが、毎年来ているという映画関係者の方に話を聞くと「いつもこんなもん」だそうだ。 映画祭は基本的にビジネスの場でもあるので、一般の観光客では入ることのできないエリアもあるが、カンヌどころか、初の映画祭体験となった筆者の感想としては「もっとみんな来たらいいのに」である。 南フラン

          カンヌ国際映画祭の歩き方

          映画”4Kリマスター”の流行とフィルムアーカイブ

          数年前から映画界に”4Kリマスター”や”デジタルリマスター”の波が来ている。過去の名作が「リマスター版」と銘打たれ、映画館で再上映されるこの流れは、多くの映画ファンにとっては非常に嬉しい傾向である。 2024年に入ってからだけでも、『テルマ&ルイーズ』(1991年)、『レザボア・ドッグス』(1992年)、『ピアノレッスン』(1993年)や、イーストウッド主演の名作マカロニウエスタン「ドル箱三部作」などの錚々たるラインナップが公開され、いま注目の映画会社A24も『ストップ・メ

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          海外へ向けて説明したい『君たちはどう生きるか』のポイント

          とあるご縁から、海外向けに『君たちはどう生きるか』の記事を書くことになった。バイリンガルの翻訳家と一緒に映画を鑑賞し、どんなポイントが海外の方にとって伝わりづらいかを話し合ったのだが、いつもと違う視点と考え方で、新鮮かつ非常に面白い。 そこで英語に翻訳される前の日本語記事(少し日本用に整えたもの)を下記に掲載してみた。日本人による日本の解説は「当たり前」と思われる部分もあるかもしれないが、本来は海外向けであるので広い心で読んでいただきたい。 ▼ここから記事(翻訳前) 宮

          海外へ向けて説明したい『君たちはどう生きるか』のポイント

          ロシアによるウクライナ侵攻後の『マリウポリの20日間』

          第96回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を獲得した『マリウポリの20日間』が公開された。この映画はウクライナ史上初めてオスカーを獲得した作品となったにもかかわらず、監督のミスティスラフ・チェルノフはアカデミー賞受賞式の壇上で「この映画が作られなければよかった」と語っている。 この監督はAP通信の記者であり、自身の祖国であるウクライナへ取材チームと共に入った1時間後に戦争が開始、そこから20日間に渡って現地の様子を記録したドキュメンタリーが『マリウポリの20日間』である。

          ロシアによるウクライナ侵攻後の『マリウポリの20日間』

          毎日新聞「ひとシネマ」に『オッペンハイマー』原作読者目線の記事を寄稿しました

          上中下とボリュームたっぷりな原作『オッペンハイマー』。この記事では、映画との相違点から見える、クリストファー・ノーラン監督はこれを言いたかったのではないか、これを強調したかったのではないかというポイントについて書きました。 映画から何かを感じたという方、原作も気になっているという方はぜひご一読いただけると嬉しいです。 ▼記事はこちらから

          毎日新聞「ひとシネマ」に『オッペンハイマー』原作読者目線の記事を寄稿しました

          エルヴィス・プレスリーの曲が流れない『プリシラ』ソフィア・コッポラの選曲

          「ソフィア・コッポラ監督の作品はサウンドトラックが良い」という筆者の個人的な考えは、新作『プリシラ』でも実証された。 『プリシラ』はエルヴィス・プレスリーの元妻、プリシラ・プレスリーによる回想録「私のエルヴィス(原題:Elvis and Me)」を原作とし、本人もエグゼクティブ・プロデューサーとして製作に参加した作品だ。 プリシラが軍の将校である父の赴任先ドイツで、従軍してきたエルヴィスに初めて会ってから「自分自身の人生を生きる」とエルヴィスから去るまでの物語となっている

          エルヴィス・プレスリーの曲が流れない『プリシラ』ソフィア・コッポラの選曲

          『アインシュタインと原爆』~映画「オッペンハイマー」のお供に

          映画『オッペンハイマー』において、登場シーンは少ないものの極めて重要な存在なのが「一般相対性理論」の提唱者、理論物理学者のアインシュタインだ。 原子力委員会による聴聞会へ参加するオッペンハイマーに対して、アインシュタインが話しかける。自分は国から逃げてきた身だが、オッペンハイマーは国に尽くしてきた。そんな君に対する国の仕打ちがこれかと。 アインシュタインはドイツ生まれのユダヤ人で、1933年にナチスが政権を獲得し、ユダヤ人への迫害が激化するとアメリカへと逃亡してきたという

          『アインシュタインと原爆』~映画「オッペンハイマー」のお供に

          映画『オッペンハイマー』の登場人物・歴史背景ガイド

          「原爆の父」であるロバート・オッペンハイマーを描いたクリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』が公開。 時間のギミックや物理現象などを作品に取り入れ「難解」と言われることも多いノーラン映画だが、『オッペンハイマー』も主人公が物理学者であることに加え、物語が複数の時間軸で進むなど、例に漏れずかんたんとは言えない。 しかし今作の難易度を上げているのは、時間や物理の要素ではなく登場人物の多さや背景の複雑さであると思う。とにかく多くそして説明もないので、事前に何も知らない

          映画『オッペンハイマー』の登場人物・歴史背景ガイド

          ガザ、パレスチナ、イスラエルのことを知るのに観たい映画

          先日とあるTV番組で、ガザ、イスラエル、パレスチナなどのキーワードが、ネットで全く検索されなくなっており、それが興味・関心が薄れている証拠だとコメンテーターが言っていた。Googleトレンドで見てみると確かにその通りである。 ハマース主導による越境攻撃が去年の10月7日、その直後と比較すると2024年3月現在では約50分の1程度まで、検索数は激減している。 人の関心を集め続けることは、この情報量が多過ぎる社会では特に難しい。しかし興味・関心がなくなったからと言って、ガザや

          ガザ、パレスチナ、イスラエルのことを知るのに観たい映画