芦田央(DJ GANDHI)

フリーライター / 映画好き / ノンフィクションとドキュメンタリー愛好家 / 札幌出…

芦田央(DJ GANDHI)

フリーライター / 映画好き / ノンフィクションとドキュメンタリー愛好家 / 札幌出身・東京と秩父二拠点生活 / 古今東西の映画を貪るように日々是鑑賞 / 国内外の色んな映画祭に出没中 / スキを押していただくと私の好きな映画の悪役が出てきます

マガジン

  • ドキュメンタリーのススメ

    「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもんで、ドキュメンタリー映画はオールジャンルで、玉石混淆で、予測不可能で面白い。周知の事実にすら新しい視点を与える、そんなジャンルです。個人的にグッと来た、そんなドキュメンタリー映画をご紹介します。

  • レア職業図鑑

    珍しい職業、何やってるか分からない職業、そもそも存在の知られていない職業。そんなお仕事の業界知識と現場の声を発信し「世界は誰かの仕事でできている」を地で行こうという連載です。さらには日本の伝統文化に関わる職業にもフォーカスし、それらを保存・アーカイブしていきます。

最近の記事

  • 固定された記事

みなさん、映画の”エンドロール”観てますか?その歴史と最新事情

一度は話題になったことがあるのではないでしょうか、映画で”エンドロール”観るのか観ないのか問題。 もちろんそれは個人の自由ですが、私は必ず観ますし、また他の方にも”エンドロール”を楽しんで欲しいと思っています。なぜなら映画の本編にこだわって製作してきた監督をはじめ映画製作陣が、最後の最後であるエンドロールにこだわらない訳ないだろうと、思うからです。曲とか、フォントとか、順番とか。 という事で今回は「最後まで観てね!」という事を強く主張したく、またエンドロールを楽しめるとい

    • 映画『シサム』シャクシャインの戦いとアイヌを苦しめた不平等な交易

      江戸時代の蝦夷地、現在でいう北海道を舞台にした時代劇映画『シサム』が劇場公開中である。「シサム(正式にはムの表記は小文字)」とは、アイヌ語で”隣人”という意味で和人(アイヌから見た日本人)など、アイヌ以外の人のことを指す。 松前藩士の息子、主人公の考二郎もいわゆる「シサム」である。彼は兄と共にアイヌと交易をするため蝦夷地へと入るが、兄は使用人の善助に殺されてしまう。武士として仇討ちを誓った考二郎は、善助を追ってアイヌの住む森へと足を踏み入れる。 『シサム』は考二郎の感情の

      • 時代がようやく追いついた?29年目の「あいち国際女性映画祭 2024」

        第29回 あいち国際女性映画祭 名前に「女性」と冠されている通り、世界各国・地域の女性監督による作品、女性に着目した作品を集めた、国内唯一の女性映画祭である。 日本でも少しずつ意識改善の兆候が見られるものの、世界経済フォーラムの発表した「ジェンダー・ギャップ指数2024」では、日本は146か国中118位と、未だジェンダー意識の後進国と言わざるを得ない。 映画祭が始まった29年前は今以上に課題が多かったであろう。しかし「あいち国際女性映画祭」は早くから女性映画人の活躍にフ

        • 『箱男』50年前の小説が映画化される安倍公房の先見性

          1973年に刊行された作家・安倍公房の『箱男』。ヨーロッパやハリウッドの著名な映画監督らが、何度かこの小説の映画化を試みるものの、安部公房サイドからの許諾が下りず、企画が立ち上がっては消えていた。最終的に安倍公房本人から映画化を託されたのが、本作で監督を務めた石井岳龍(当時は石井聰亙)である。 そして1997年、映画『箱男』の製作が決定。スタッフ・キャストが撮影地のドイツ・ハンブルクに渡り、巨大病院のセットを八割がた完成させるも、製作会社の資金繰りに問題が発生し、クランクイ

        • 固定された記事

        みなさん、映画の”エンドロール”観てますか?その歴史と最新事情

        マガジン

        • ドキュメンタリーのススメ
          15本
        • レア職業図鑑
          22本

        記事

          オープニングでよく見る、映画監督が設立した製作会社のロゴは要チェック

          映画の冒頭には、決まって製作会社や配給会社などのロゴ映像が流れる。海外の映画でよく見かけるのは、 などだろうか。 映画をよくご覧になる方は、ほかにも知っているロゴがあるかもしれない。しかし普通は製作会社のロゴなんていちいち気にして鑑賞しないので、見せられて初めて「ああ、見たことあるかも」程度だろう。 ただそんな中にも、いくつか覚えておいて損がないロゴがある。それが今回紹介したい「映画監督が立ち上げた製作会社のもの」というわけだ。 例えばスティーヴン・スピルバーグ監督が

          オープニングでよく見る、映画監督が設立した製作会社のロゴは要チェック

          Netflixで観られるおすすめドキュメンタリー映画4本

          Netflixについて、この機会に知っていただきたいことがある。それはNetflixではドキュメンタリーが、質量ともに素晴らしいということだ。あまり知られていない可能性を感じているのだが、ドキュメンタリー映画の愛好家として、これは声を大にして言いたい。 NetflixのTOPページから「映画」タブを選択し、ジャンル選択で「ドキュメンタリー」のページをのぞいてみてほしい。かなりの本数の作品があることがお分かりいただけるだろう。数ある作品群の中から、食指の動く映画に出会えるはず

          Netflixで観られるおすすめドキュメンタリー映画4本

          『地面師たち』積水ハウス事件から小説を経てドラマへ、物語はどう変化したか

          ”地面師”とは、他人の土地や建物の所有権を偽造し所有者になりすますことで、第三者に売却する不動産専門の詐欺師である。 現在公開中のNetflixオリジナルドラマは、小説「地面師たち(著:新庄 耕)」を原作としており、さらにこの原作小説は2017年に実際に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルに描かれている。 実在の事件から小説、そしてドラマへ。作品が生まれ、それがまた別メディアの作品に生まれ変わる時、物語にも変化が生じるのが視聴者としては非常に興味深い。 ※小説及び

          『地面師たち』積水ハウス事件から小説を経てドラマへ、物語はどう変化したか

          村上春樹 原作初のアニメ映画『めくらやなぎと眠る女』

          そもそも村上春樹先生はアニメが苦手だそうだ。過去のエッセイに、あまり良い印象を持っていないことを綴っている。 それは業界的にも有名らしく、事実『めくらやなぎと眠る女』のピエール・フォルデス監督が原作権の取得のためにパリのエージェントにコンタクトを取った際には、「村上春樹がアニメーション化を許すわけがない」と門前払いを食らったそうだ。 だがアニメ化は実現した。どんなポイントが、かの村上春樹の許しを得る要因となったのだろうか。 「ライブ・アニメーション」という、実写とアニメ

          村上春樹 原作初のアニメ映画『めくらやなぎと眠る女』

          カンヌ「ある視点」部門グランプリ『HOW TO HAVE SEX』モリー・マニング・ウォーカー監督

          2023年の第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門のグランプリ受賞から始まり、世界の映画祭で19受賞、30ノミネートを果たした『HOW TO HAVE SEX』。 仲良しの女の子3人組で1人だけ性経験のない主人公は、いつものメンバーで行く卒業旅行で、なんとかバージンを捨てようと計画している。 「大人になろう」と背伸びする感覚、クラブでなぜか自分1人だけ冷静になる瞬間、朝帰りの静寂。多くの観客が懐かしさと、若き自分を思い出す少しの気恥ずかしさと共に観られる作品である。年代

          カンヌ「ある視点」部門グランプリ『HOW TO HAVE SEX』モリー・マニング・ウォーカー監督

          ”インティマシーコーディネーター”についてあらてめて学ぶ

          俳優が監督にインティマシーコーディネーターの手配を依頼したにもかかわらず、結局導入されなかったことで非難が集中するという一件があった。 その存在や業務内容について、なんとなくは知られているインティマシーコーディネーター。きっかけは非常に残念なものであるが、この機会にもっとよく知っておこうと思った方も多いのではないだろうか。筆者もその1人である。 そこで2024年7月現在、日本には数名しかいないというインティマシーコーディネーターの1人、西山ももこ氏の書籍を拝読。その内容に

          ”インティマシーコーディネーター”についてあらてめて学ぶ

          MV監督が撮る父娘バディムービー『SCRAPPER スクラッパー』

          父親と幼い娘を描いた映画の中で、ここ最近では『aftersun/アフターサン』や『ザ・ホエール』などの良作が注目されていたところへ、ラインナップに新たな1本が加わった。シャーロット・リーガン監督の『SCRAPPER スクラッパー』である。 母親を病気で亡くし、1人暮らしていたた12歳の少女のもとに、突然父親を名乗る男が現れる。ただ、あらすじだけではこの映画の魅力はなかなか伝わりにくい。 この少女が、かなりエッジの効いたキャラクターなのだ。 母亡き後のアパートに「おじと住

          MV監督が撮る父娘バディムービー『SCRAPPER スクラッパー』

          2024年上半期 映画ベスト10

          2024年の前半戦が終了です。上半期に公開された新作映画の中からベスト10を選ぶとともに、全部ではないですが、ピックアップした各作品について書いた過去記事をご紹介します。 すでに配信済み、これから配信、まだ劇場公開中の映画が混在していますが、これから観ようかなという方の参考にしていただければ嬉しいです。 ※選んだ十作品は順位ではなく順不同 オッペンハイマー ▶クリストファー・ノーラン監督 ご存知の通り、今年のアカデミー賞の「作品賞」受賞作です。登場人物が多く歴史的背景

          2024年上半期 映画ベスト10

          『関心領域』の原作小説について寄稿しています

          毎日新聞社さんの運営する映画サイト「ひとシネマ」に、『関心領域』の原作小説についての記事を寄稿しました。 ▼記事はこちら 原作の発売が映画公開と同時期だったため、珍しく映画→原作の順で読みました。驚いたのが、映画の内容とは結構違うんですよ。 ザンドラ・ヒュラーが演じていた所長の奥さんに、映画では登場しなかった若き将校トムゼンが、稲妻に打たれたように一目惚れするところから原作小説は幕を開けます。もう、のっけから違うんです。 ただ映画の持っていた残酷さは小説にも共通する重

          『関心領域』の原作小説について寄稿しています

          『HOW TO BLOW UP』パイプラインの爆破は「正義」か「テロ」か

          本作は「環境テロ行為を助長する」と、FBIが警告を出した作品である。 若き活動家たちが環境破壊行為を止めるため、また自身の主張に耳目を集めるために、テキサス州の石油精製工場のパイプライン爆破計画を立案する。ただ爆破するだけではない。誰も傷つけず、環境も破壊することなく、石油を1滴もこぼさず、この任務を遂行するのである。 本作には原作があり、「パイプライン爆破法 燃える地球でいかに闘うか」という、よりその意味が直接的に伝わってくるタイトルの本だ。 スウェーデンの気候変動学

          『HOW TO BLOW UP』パイプラインの爆破は「正義」か「テロ」か

          お下品なB級低俗コメディ『ドライブアウェイ・ドールズ』(誉め言葉)

          『ビッグ・リボウスキ』(1998年)のようなシリアス色の強いコメディか、『ファーゴ』(1996年)のようなコメディ色の強いシリアスな映画が多い印象のコーエン兄弟。弟のイーサン・コーエンによる初の単独監督作品となった『ドライブアウェイ・ドールズ』は、コメディ色の強いコメディで完全に振り切っている印象だ。 しかもかなりお下品な路線の、B級低俗コメディ(誉め言葉)である。 イーサンの妻であり、今作では共同製作及び脚本を務めたトリシア・クックは次のように語っている。 社会的意義

          お下品なB級低俗コメディ『ドライブアウェイ・ドールズ』(誉め言葉)

          『マッドマックス:フュリオサ』は「怒りのデス・ロード」で予習・復讐

          アクション映画というジャンルが敬遠されがちなアカデミー賞においてすら、技術部門で6つのオスカー像をかっさらった『マッドマックス 怒りのデス・ロード』から9年。前日譚となる『マッドマックス:フュリオサ』がいよいよ日本でも公開された。 前作「怒りのデス・ロード」の作り込まれた世界観には、劇中で語られることのなかった膨大な量の設定があり、そんな奥行きがビジュアルや俳優の演技に昇華され、リアリティの下支えとなっていた。 例えばジョージ・ミラー監督は撮影時点で、フュリオサの生い立ち

          『マッドマックス:フュリオサ』は「怒りのデス・ロード」で予習・復讐