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みなさん、映画の”エンドロール”観てますか?その歴史と最新事情

一度は話題になったことがあるのではないでしょうか、映画で”エンドロール”観るのか観ないのか問題。

もちろんそれは個人の自由ですが、私は必ず観ますし、また他の方にも”エンドロール”を楽しんで欲しいと思っています。なぜなら映画の本編にこだわって製作してきた監督をはじめ映画製作陣が、最後の最後であるエンドロールにこだわらない訳ないだろうと、思うからです。曲とか、フォントとか、順番とか。

という事で今回は「最後まで観てね!」という事を強く主張したく、またエンドロールを楽しめるという方が1人でも増えるよう、歴史や最新事情をご紹介します。

※エンドロールはスタッフロール、エンドクレジット、クレジットタイトルともいわれますが、本記事では”エンドロール”に統一します。

初期はなかったエンドロール

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(※写真は『市民ケーン(1941)』より)

昔の映画を観ていて「あれ?エンドロールがない!」と思ったことがある方もいるかもしれません。昔の映画は、敵を倒してドン!ヒロインと結ばれてドン!と「THE END」の文字が出て終了。エンドロールがある事に慣れてしまってる映画現代っ子の私には、余韻なく終わってしまう事に物足りない感すらあります。

1960年代頃まではオープニングに製作陣のクレジットを集約させて、エンディングは省くのが主流でしたが、1970年代に入ると、オープニングは主要クレジットで、エンディングはそれ以外のクレジット(それでもまだ全員ではない短めのエンドロール)という形式が主流になります。

この時期に、エンドロールに関する慣習を大きく変えるきっかけとなった映画が登場します。それがあのスター・ウォーズシリーズで有名なジョージ・ルーカス監督の『アメリカン・グラフィティ』という作品です。

長くなってきたエンドロール

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(※写真は『 アメリカン・グラフィティ(1973)』より)

この映画は、非常に低予算で製作が開始され、撮影が進んでいくうちにスタッフ全員の給料を払えそうにないという状態に陥ったそうです。そこで、監督であるジョージ・ルーカスは、メインスタッフでない人達に対して「給料を払う代わりにエンドロールに名前を載せる」と提案したところ、スタッフたちはこれを承諾

こうやって長いエンドロールの第1号ができた、という訳です。

ジョージ・ルーカス監督のその2年前の監督作品である『THX 1138』の時には、まだ主要スタッフしかクレジットされていない形式だったので、ここが大きな転換点だったことが分かります。

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(※写真は『THX 1138(1971)』より)

長いエンドロールは『アメリカン・グラフィティ』のみで終わることなく、それ以降の映画界に広く定着していくことになります。その背景には、ビデオデッキの登場と権利意識の変化が関係しているのではないかと私は考えています。

映画鑑賞スタイルの変容

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日本ビクターがVHS第1号ビデオデッキであるHR-3300を発売したのが1976年。最初は高級品でしたが、ビデオデッキが一般家庭にも普及して、1980年代後半には各家庭でも映画鑑賞が楽しめるようになりました。レンタルビデオショップが普及し始めたのも同じ時期です。

VHSもなかった時代には、基本的に映画は映画館で上映されるのみで、大体はその場1回きり、あとからもう1度見て楽しむという文化はありませんでした。

しかしVHSという保存媒体の登場によって、1度しか楽しめなかった映画は、何度でも楽しめるものになり、後世に残ることが前提になりました。その結果、映画の作り手達が映画における自分たちの権利を考え、主張し始めて、それがエンドロールにも反映されていったのではないかと考えています。

ジャッキー映画登場

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(※写真は『ポリス・ストーリー/香港国際警察(1985)』のエンドロール)

エンドロールが長くなったことで、当然「文字だけがタラタラ流れてくる画面なんか観ていたくないよ」という人達が出てきます。そうすると「エンドロールも観て欲しい」と思う製作陣が、あの手この手でエンドロールに工夫を凝らします。

1980年代の映画の中で、特に”楽しめるエンドロール”になるよう工夫されていると感じるのは、ジャッキー・チェンの映画のNG集です。ジャッキー映画ファンにはド定番ですよね。

実は、多くの作品で監督も務めているジャッキー的には「アクションはカッコ良いけど、実際はこんなに失敗してるから真似すんなよ!」というメッセージをNG集に込めているそうです。

エンドロールにおまけ映像

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(※写真は『アベンジャーズ(2012)』のおまけ映像)

エンドロールを最後まで楽しんでもらう創意工夫として、もう1つメジャーな手法がおまけ映像です。

今現在は、エンドロールにおまけ映像がある映画も珍しくなくなりましたが、おまけ映像手法(と勝手に呼称します)を最も効果的に使っているのが2008年の『アイアンマン』を皮切りにスタートしたマーベル・シネマティック・ユニバース(以下:MCU)のシリーズです。

MCUは説明不要ですかね。毎作品、毎作品におまけ映像があって、なんならメインスタッフクレジットの後と、一番最後と2回もある。次回作の内容や未登場のヒーローの存在を匂わせるなど毎回「うおおっ」となります。

おまけ映像があることが普通とすら思っているので、大きな節目である『アベンジャーズ/エンドゲーム(2019)』の時には、おまけ映像がなくて「ない…!」ってなって「ホントに終わったんだな…」ってなりますよね。ないことが演出になるって凄いことです。

エンドロールおまけ映像ランキング

MCUをはじめとした、エンドロールのおまけ映像で作品自体の満足度を上げたり、次回作の期待値を上げるような工夫をした映画が増えてきたことで、登場したのが上記のMedia StingerというWebサイトです。

このMedia Stingerはいわば「おまけ映像まとめサイト」。映画・ゲームにおけるおまけ映像の有無、おまけ映像のランキングなどがこのサイトでは見られます。

映画の鑑賞前におまけ映像があるのかないのか知りたいという方は、このサイトで確認できるのでオススメです。(もちろん大前提としてエンドロールは全部見てほしいと思っていますが…)

ちなみにMedia stingerにおける、おまけ映像ランキングTOP5は以下の通り。

1. Deadpool (2016)
2. The Avengers (2012)
3. The Hangover Part III (2013)
4. Guardians of the Galaxy Vol. 2 (2017)
5. Kingsman: The Secret Service (2015)

100位まで載ってるので気になる方は是非のぞいてみて下さいね。

おわりに

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(※写真は『イングロリアス・バスターズ(2009)』より)

この記事の一番上の画像、メイン画像に設定しているのはクエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』のエンドロールに入った直後の画面になります。数ある映画の中で1,2を争う程好きなエンドロールへの入り方なので、この記事の画像としてピックアップしました。

劇終盤、エンニオ・モリコーネの曲のイントロが小さめに入ってきて、タランティーノ監督らしいオチが付いて、曲の主旋律が入るとともにドン!とエンドロールに入るんですが…もうめちゃくちゃ格好良い。

皆さんもぜひ、自分のお気に入りエンドロールを見つけてくださいね、という話をしたく最後に紹介いたしました。

多くの映画において鑑賞時、最後に目にするのはエンドロールです。
最後の最後まで映画を楽しみましょう!

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