おらんうーたんになりたい。

「アジール」/「記憶のメディア」としての動物園・水族館に関心があります。短歌もやってい…

おらんうーたんになりたい。

「アジール」/「記憶のメディア」としての動物園・水族館に関心があります。短歌もやっています。

マガジン

  • 【訪問記録】動物園・水族館等施設展示を掘り下げる。

    動物園・水族館・博物館の訪問記録は数あれど、「展示施設の微細な心遣い」に焦点を当てたルポは案外少ないのではないでしょうか。本マガジンでは、これまで訪問した園館等施設の「ここ好き」ポイントや、開かれた解釈可能性を取り上げていきます。 なお、このマガジンに収録されている記事の記述内容及び写真は訪問当時のものであり、感想に当たる部分はいち訪問者である私の個人的見解であることをあらかじめお断りします。 また事実誤認等があれば、大変お手数ですがご教示頂けたら幸いです。

  • さるのうた

    詩歌です。霊長類はじめ動物を主題にした作品が多いです。

  • 雑記/「おらんうーたんになりたい。」以前のわたしについて。

    動物園・水族館に強く関心を向けて活動を行うようになる以前に取り組んできた活動や、関心があった物事などについてまとめました。またその他雑多な話題も詰め込んでいます。いわば「動物園・水族館以外」の雑記集です。しかし、ここで触れている事柄は、私の動物園・水族館観にも間違いなく大きく影響を及ぼしているはずです。

  • 総曲輪通りでつかまえて

    絲山秋子さんの小説『まっとうな人生』に触発され、北陸地方で過ごした日々のことを回想しています。

  • 霊長類フリーマガジン"【EN】ZINE"

    2020年に制作した霊長類フリーマガジン"【EN】ZINE-エンジン-"及び2021年に制作した霊長類フリーマガジン"【EN】ZINE Re:Boost!!"についての告知記事です。

最近の記事

【ご報告】クロージング・フィールド・ノート――これまでのこと、これからのこと

 こんにちは。動物園・水族館を中心とした趣味活動を発信してきたX(旧・twitter)アカウント(@weiss_zoo)の稼働を止めてから、数ヵ月が経過しました。  この間の私自身の環境や心境の変化を辿りつつ、これまでとこれからについて簡単に覚書としてまとめたいと思います。 結婚しました  6月に交際相手と入籍しました。知的好奇心にあふれていて、動物園や博物館にも明るく、話題が尽きないひとです。  初めて一緒に出かけた日、上野動物園の「日本の鳥 Ⅰ」のベンチに腰掛けて閉園

    • 二重らせん構造の往来――微塵の子Ⅲ

      5月某日。同棲していた部屋に新しい蒲団が届く。単身赴任先からの一時帰宅できる日の目途が立ったため、婚約者から同意を得てから搬入した。彼女は前に進もうとしていた。結婚前のふたり暮らしの中で諦めていたこともあったのだと思う。ダイビング、小旅行、気兼ねなく出かけることの喜びを語る彼女。職務命令で行動制限をかけられている僕は少しだけ複雑な気分になった。でも、僕が抱いた思いは、現代の社会状況の中で、子を持ち育てる多くの女性(彼女も遠くない未来に望んでいる)が家のソトで過ごす配偶者に対し

      • 【小説】Dry and Mighty――poíēsis #1

        poíēsis(希)制作/生産 ※この物語はフィクションです。実在の人物、出来事、場所、事件とは、何ら関係はありません。  冬という季節が冬の特質をまだ備えていた時分だった.あの頃彼が棲んでいた築数十年経つ狭い部屋には絶えず隙間風が差し込み,しばしば冬枯れた葉が窓に打ち付けた.部屋からほど近い,街で最も汚れた川にも鴨が飛来していた.びろうどのように輝く風切羽根を隠した鴨たちは汚染された水草を啄み,毒を素嚢に蓄えていった.  それでも,もはや戻ることは叶わない,現存するかも

        • 【雑記】海は凪いでいるか

           この春の転居が人生で何度目だったかは忘れた。  交際相手と半年前から同棲を始め、婚約し結婚式場を決めた矢先だった。単身赴任を命じられ、慌ただしく家を出た。その葛藤はすでに他の形でも発表しているから、ここで詳述はしない。  いま私が綴りたいと思っているのは、単身赴任先まで持ってきた「だいじなもの入れ」の中身のことだ。  あまり荷物は増やしたくなかった。けれど、「だいじなもの入れ」は置いていけなかった。そこに収めているものたちに意味を見出すのは私ひとりだけだから。  私

        【ご報告】クロージング・フィールド・ノート――これまでのこと、これからのこと

        マガジン

        • 【訪問記録】動物園・水族館等施設展示を掘り下げる。
          59本
        • さるのうた
          65本
        • 雑記/「おらんうーたんになりたい。」以前のわたしについて。
          58本
        • 総曲輪通りでつかまえて
          6本
        • 霊長類フリーマガジン"【EN】ZINE"
          16本
        • 本棚の森 〜書評集〜
          27本

        記事

          【短歌連作】粉微塵――微塵の子Ⅱ

          ふたり暮らし。それは楽しいことだけじゃない。次第にぶつかり合うことも増えた。ぶつかった後、やり直すための時間が思うように取れないまま、すがりつくこともあった。 教育的配慮だったな。あの笑顔。あの励まし。あの、あれは、あなたの 一、換気。二、給湯器の主電源。三、継続は力。と、あなたは 内心で永平寺。と唱えていたらまるで永平寺なの。あなたが 遅くなります、返信は不要です、帰れない、変われないと、あなたへ 休日はあなたと過ごす。そうやってこころを守る。あなたと、あなたと…

          【短歌連作】粉微塵――微塵の子Ⅱ

          ここに確かに居ること、ここへ必ず還ってくることーー黑田菜月《動物園の避難訓練》試論

           動物園という場所を動物園たらしめるものは何だろうか。動物園に足しげく通うようになってから幾度となく問いを繰り返してきた。ある時は幼い頃の日記帳を辿り、またある時は廃墟となった動物園跡地を歩き、私は私たち自身の語りによる価値の再創造(Re-Creation)が動物園を動物園として成立させていることに気付きつつあった。  動物園という装置は巡回展やサーカスのように拠点を変えず、場所に根付いて展示を行う。そこに生きているものたちが居ること、生かされているだけではなく活き活きとし

          ここに確かに居ること、ここへ必ず還ってくることーー黑田菜月《動物園の避難訓練》試論

          【私家訳】マルティン・ハイデガー「メスキルヒ700年」

          年末に地元に帰省し、「都市と地方の文化的格差」をめぐる私のこれまでの関心軸の原点となった懐かしいテキストを再読した。マルティン・ハイデガーの講演録“700 Jahre Meßkirch”。大学2年次の必修ドイツ語で講読したそのテキストは、ローカルな地域社会に「近代」の力が差し迫ることの及ぼす影響を問うものだった。 いま改めて当時の講義ノートを見返し、わたし自身にも影響が大きかったこの講演録の「私家訳」をまとめたい。この講演録が「メスキルヒ市市制700年」に寄せる講演であった

          【私家訳】マルティン・ハイデガー「メスキルヒ700年」

          【短歌連作】微塵の子

          一秒も惜しむあなたが明晰に湯を沸かす音で目覚める六時 いくつかの家財を捨てる アリバイはある 僕なりのその日暮らしの 寝室に物を置かない 寝室で布団畳めば広がる余白 目の前に落ちている塵片付けるあなたの指がただしく動く 真四角に服を畳めず生きてきたことに一緒になって気づいた アイニージュー買えない愛のまぼろしを見わたすために百均へ行く 丁寧な暮らし(パンくず、髪の毛の束、指先の荒れ)と格闘 キッチンのエプロン姿たのもしく実験室で鍛えてきたと 燃えるゴミの日は三

          【顛末書】蜻蛉玉鰐の涙も塩からく

          ご無沙汰しています。お元気でしょうか。 8月の初旬から9月の終わりまで、抑鬱状態にありました。地元を出て以降の約10年間で、もっともこころの状態が荒んでしまっていました。 原因ははっきりしています。これまでの過労がたたり心身ともに疲弊していたこと、本務の環境が変わり適応できないままでいたこと、自身の引越しや実家の法事のため生活が落ち着かなかったこと。暑すぎる長い夏。 休む時間がなかったわけではないし、マッサージ、鍼、カウンセリング、こころの病院(30年生きてきて初めて足を

          【顛末書】蜻蛉玉鰐の涙も塩からく

          【小説】カーニバル

           「はいできましたよ、どうぞ」  熊井はどろんと濁った瞳を配膳された丼のなかに向けた。大盛りの米の上に味噌とくるみで和えられた黒々とした肉がこんもりと盛られている。脇にはごまをふったほうれん草が添えられていた。店内には店主と熊井のふたりしかいなかった。                  *  家電用機器の部品を取り扱う小さなメーカーに入社してから7年。熊井は主に総務や経理の業務を担当していた。取引先の無理な要求に急き立てられた営業との軋轢など不平不満もない訳ではなかったが

          【園館訪問ルポ】詩のある動物園(Ⅲ)―― 盛岡市動物公園ZOOMO「PICNIC FIELD」(岩手県盛岡市)

           東北新幹線に揺られ2時間強。盛岡は快晴でした。「ニューヨーク・タイムズ」によって「2023年に訪れるべき場所52カ所」に選ばれたばかりで、この街はなんだか新しい物語の曲がり角に来たような予兆に満ちていました。  国民的な童話作家、宮沢賢治とも縁深い盛岡。 この地に2023年、リニューアルオープンしたのが「盛岡市動物公園ZOOMO」です。  「動物福祉」を理念の中核に据えているZOOMO。飼育している動物の頭数を見直し、以前よりも飼育種のケアに重点を置くことを

          【園館訪問ルポ】詩のある動物園(Ⅲ)―― 盛岡市動物公園ZOOMO「PICNIC FIELD」(岩手県盛岡市)

          <旅行記>新・総曲輪通りでつかまえて――3年半ぶりの富山(後編)

           富山旅行2日目の朝は早かった。日差しが気持ちいい。雨が多い富山で連続して青空の下過ごせるのはありがたいことだと僕は知っていた。恋人は「私、本当に晴れ女なんだよね」と胸を張っている。  富山駅からあいの風とやま鉄道に乗り、魚津へ。蜃気楼をモチーフにした魚津市のゆるキャラ「ミラたん」の像があちこちに建っている。  少し歩き、「海の駅 蜃気楼」へ。なぜかフォントが古印体で、おどろおどろしい割にカラフルなので「ちぐはぐだね」とふたりで笑った。  「海の駅 蜃気楼」で自転車を借

          <旅行記>新・総曲輪通りでつかまえて――3年半ぶりの富山(後編)

          <旅行記>新・総曲輪通りでつかまえて――3年半ぶりの富山(前編)

           北陸新幹線で中央構造線を抜けるとき、耳鳴りが懐かしい感覚として襲ってきた。「本当に日本の中央を越えているんだね、わたしたち」と恋人が隣で言った。恋人にとっては初の日本海側の都市の訪問だった。僕が暮らした街を彼女はどんな風に新鮮に受け止めてくれるだろう。ただ、すべてが記憶通りという訳ではないだろうな、という直感もあった。コロナ禍があったとはいえ、富山を離れてから今回の訪問まで、3年半も経ってしまっていたのだ。  「あなたの話を聞いていたら富山に行きたくなってきたかも。ゴール

          <旅行記>新・総曲輪通りでつかまえて――3年半ぶりの富山(前編)

          【園館訪問ルポ】動物園・水族館・アスレチックの交わる汽水域ーーアクアマリンふくしま「えっぐの森 どうぶつごっこ」(福島県いわき市)

           2022年夏の訪問で鮮烈な印象を残し、再訪を心に決めていたアクアマリンふくしまにふたたび足を運んだのは年末になってからでした。真冬の小名浜港は透き通る光がたっぷり降り注いでいました。  初訪問時は日本の水族館の伝統的な展示形態である「汽車窓水槽」をアップデートした展示群が深く印象に残っていましたが、ゆっくり時間を取って施設内をくまなく歩いた2度目の訪問では、水族館の枠組みを超えて動物園、さらにフィールドアスレチックとも接続される「体験の場」に目を奪われました。日本中の水

          【園館訪問ルポ】動物園・水族館・アスレチックの交わる汽水域ーーアクアマリンふくしま「えっぐの森 どうぶつごっこ」(福島県いわき市)

          【短歌】羽根はなくても

          晴れたなら光が入るはずだろう津田沼パルコ曇天の下 大寒にケトル震わせ海竜の今際の声を放ちつつ朝 三万円 罰金刑に処せられるのも怖いから 束ねたら薔薇 ぬるま湯で溶いたじごくにまみれそう やわこく地獄、めんこく地獄 板橋と呼んでほとんど差し支えないほど北の、そうなの、来たの さざんがく、さざんがくって唱えたら散々な夜にひらくさざんか 豆の数だけ歳を取り 鳩、ぼくら、よわよわしくていい、と書くメモ 「飛翔」去る桜通りのロータリー 羽根はなくても歩み続けた

          【短歌】羽根はなくても

          【短歌・自選百首】幻猿図鑑

          むかしむかしあるところにはあるという愛を探した柴刈りでした 世界一美しい猿も水辺にてわれは猿だと思うだろうか 海獣の骨格だけが知っているかつて入江であった日のこと パーで勝つ。パイン、パインと歩みよる。ち、よ、こ、れ、い、と、を、ぼくにください 翼よ、とリンドバーグになり切って指差す名無き街や街の灯 カテーテルつながれた駅 地下鉄も持病抱えて走り続ける 【取り急ぎ】【至急】【緊急】わくらばが深く沈んだフォルダの湖底 もう春の息吹が薫るトンネルを夢見心地でくぐって

          【短歌・自選百首】幻猿図鑑