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無口な歌詞

1,604
あの日から、やめられない作詞。 歌い出してくれたら嬉しいのに。
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2020年3月の記事一覧

night loop

夜の三ページ目
手が止まって
進まなくなった
.
夜の三ページ目
上の空で
迷い込んでいた
.
夜の三ページ目
同じ行を
何回も読んだ
.
理由もなく
でもただ
荷物はまとめておいた
.
世界は色に染まりやすい
だからと言って
ことある毎に
洗濯をしたところで
全てが落ちる訳でもないから
お洒落に見えるように
こちらの考えを変えてみる
.
.
夜の三ページ目
また戻って
栞を挟んだ
.
眠気はなく

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フルーチェ

フルーチェを作りたい人生だった
あのコマーシャルの中の
絵に描いたようなしあわせが
今さら恋しいなんてね
.
.
至って普通と思われる道を
特に大きな苦難もなく
ふらふらと通ってきたつもり
全然楽しかったしさ
.
ただずっと気になっていた
その実体が掴めないまま
大きくなった今日、ふと何かに触れた
.
たとえば
フルーチェを作りたい人生だった
あのコマーシャルの中の
絵に描いたようなしあわせを

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what

ツイッターに
書き込める文字数
ただそんなにも
要らないのかも知れない
.
憶えていられるものにも
限度はあるから
.
シンプルにシンプルに
すればするほどに
透き通ってくる筆圧
個性もこだわりも
らしさのある癖までも
綺麗になくなった文章から
何を受け取ってくれるのかな
.
だからまだ
余計なことまで
書いてしまう
.
.
気が済むまで
考える回数
もうそうなると
待てないのかも知れない
.

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桜の場合

桜が口を揃えて言う
「そんなに見つめないで」
恥ずかしがり屋のその花びらは
薄っすらと顔を赤らめながら
淡い風に背を向ける
.
無口であることが
唯一くらいの誇りだったのに
遅い春は来てしまった
.
朝も昼も夜も全て春
大きな声では言えないけれど
微笑みを止められない
幾つか季節を越えて
漸くあなたと逢えたのだ
裏腹な麗らかさの中に
今年も恋が咲き乱れている
.
.
終わりを待つことが
唯一くらい

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足許の宇宙

宇宙そのものが
僕の足許に転がる
.
綺麗だななんて
思ったことはないけれど
深そうだなと
気になったことはある
.
もともと夜が
本来の姿だとすると
この影の方が
本質的な部分だと
思えてならない
.
どれだけ雄弁に語ろうが
どれだけ豪快に暴こうが
どれだけ只管に浸ろうが
どれだけ一息に攫おうが
.
暖簾に腕押し
糠に釘
夜空に懐中電灯
.
手応えだけがない
.
.
暗闇が怖いのではなくて
光が

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ひとり

話しかけてこないから
猫が好きなのかも知れない
話を聴いてくれるから
犬が好きなのかも知れない
.
慰めたりしないから
鳩が好きなのかも知れない
近づき過ぎもしないから
蝶が好きなのかも知れない
.
淋しいことに変わりはなくて
けれども返事をする余裕はなくて
それでも妄想では心許なくて
.
誰かを捜しているつもりはないのに
頭の隅の方では何かが
ここぞとばかりに点滅して
そっと思い出させようとする

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www.co.jp

一夜明けないと
言葉にできないと思った
新鮮さとはまた違う
人肌の想いの丈が
新品のボールペンのよう
今になって出てくる
.
気の利いた話はできなくても
血が通った物語であれば編める
子守唄だと思って聴いて
.
また世界は二つに割れた
細胞が分裂するように
どんどんと増えていった
その一つ一つの世界が
懸命に息をするから
蔑ろにはできなくなって
もう既に一杯の懐に忍ばせる
.
.
一度止めないと

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掃除と煙草

心の中なんて
誰にも見られやしない
況してや自分さえも
.
詳しい場所だって
知らないけれど
小さな音が
カランカランと鳴る
その辺りだと思っている
.
どれもこれも詰め込み過ぎて
丸々と膨らんでいたり
雑多な内容に整理も儘ならなくて
殆ど手付かずのままだったり
まるで今の自分の部屋と
似ているような気がして笑えた
.
そろそろ掃除を再開しようと
煙草を消して部屋に戻った
.
.
おもちゃの銃なん

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ぼっちり

言い訳も程々に
逃げるように駆けてゆく
真っ先に話したいと
向かった海沿いの一角
.
声には出さない
聴いてもらうだけ
いつも独り言
.
空は高いでしょ
夜は怖いでしょ
何ともなしにそんなことを
ふと考えるだけの
余裕が今ではあるから
心配しないでね
抱きつけない背中に
白い雲が映る
.
.
淋しさもそのままに
捨てるように落ちてゆく
真っ直ぐに帰れないと
上った高台の坂道
.
顔には出さない

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ghost

星空を見上げて
一つでも理由を捜す
.
誰に知られることもなく
たった一筋の彗星が
人の生き方を変えてしまう
まだ殴り書きの
ノートの中の物語
.
声なき声に声を
.
空想にも外せない拘り
繊細なタッチで
掴まえてゆくゴースト
恐れられるのは
きっと知らないから
そんなものばかりだから
一つでも未来を遺す
.
.
他と比べるまでもなく
僅か数行の粗筋が
次の行き先を変えてしまう
まだ眠たそうな

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久々の朝

静寂が歌わせる
何を伝えたいのか
一度きりでは
掴みきれないような
癖のあるうた
.
聞こえていたものが
聞こえなくなって
聞こえなかったものが
聞こえはじめる
.
詞になって
やっと見えそうな
でもまだ少し遠い朝
輪郭は人の形
仄かに温かい空気
揃いも揃って
僕に何を知らせたいのか
.
.
感情が曇らせる
何を降らせたいのか
局地的では
当てにならないような
含みある顔
.
憶えていたものが

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聞きたくないの
ラブソング
等閑にされた
青い写真の頃から
置き去りにしてきた
君がいつも歌っているから
.
テレビを消して
街へ繰り出す
.
雨ざらしの星という星が
奪っていった心も
尻すぼみの盛り上がりに似て
いずれまた帰りたいと
その唇が熱っぽく
幽かに動いたら
何も言わず迎えに行くだけ
.
.
泣きたくないの
アーカイブ
お座なりが過ぎた
長い手紙の文字から
目印にしてきた
君がいつも笑っ

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闡明

窓を開けた途端に
勢いよく吹き込む風が
大抵のものを飛ばしてしまう
.
それを背中で受け止めて
何かを守るのに
その光景だけは克明に
瞳に焼き付いて残っている
.
手を離さなかったら
帰ってこられない
一つ一つが仕掛けのように
繋がっているのだから
反応はしても
反抗は程々に
やがて今日の日を懐かしむ
それはきっと幾つになっても
.
.
角を曲がる手前で
勢いよく吠え出す犬が
託された用を攫ってし

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フェンス

空にフェンスはない
だからなのか
鳥を見つけると
暫し黙ってしまう
ひとりだとより
.
自由が作ったなんて
皮肉みたいだ
.
こっちがあるから
あっちがあると
知るにはまだ早いなんて
そのR指定は
一体いつまで続くの
ただの自主規制
そのモザイクのフェンスを外して
.
.
前にフェンスはない
だとしたらば
距離を感じると
暫し悩むことすら
ひとりよがりか
.
自分が作ったなんて
コントみたいだ
.

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