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短篇集

10
創作をまとめておきます。
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『紛うことなき冬だ』

『紛うことなき冬だ』

太陽が昇って
斜めのひかりに照らされて
影が伸びて、
それだけで幸せになれる私はお気楽な奴だ。
過ぎゆく時間を眺めて時計の音を聞いた。
斜めに差し込む光が私を刺す。
止まった思考。

冬は影ばかりが長く伸びる
誰かが追い抜きざまに私にぶつかる
何かに突き放されてゆく
遠くで誰かがわらう
日和見の私、斜めのひかり、伸びた影。
肩を叩かれて振り向いた背後に誰も居ない、
伸びた影が私をわらって、

嗚呼

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『電話線とミルキーウェイ』

『電話線とミルキーウェイ』

真夜中にしんと沈んだ街、街灯はどこへ導いてくれるわけでもなくぼんやり白く光る。

電話ボックスの四隅には、真昼間にも夜が澱んでいるんだよ、とマスターは珈琲豆を挽きながら歌うように言っていた。本当かな。

今電話ボックスには、たぷんと夜が溜まっている。

コインを入れて受話器を取れば、私と同じように夜を啜る、誰かも分からない貴方に繋がる電話があれば良い。私は貴方に約束を取り付ける。
星と星を結ぶみた

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課題で出された通りのテーマで書いたつもりなのに微妙な反応を貰った短篇をここで消化します。

課題で出された通りのテーマで書いたつもりなのに微妙な反応を貰った短篇をここで消化します。

タイトルが長いんだわ。
以下、本文です。

『無題』
①目を開けると、少し遠くに天井が見えた。真っ白いそれは、氷が張ったかのようにひどく冷たく硬そうだった。私はぎこちなく布団から出ると、素足にスリッパを履き、その白い部屋から外に出た。空気が、乾燥している。廊下に出た瞬間に私の輪郭を撫でた風が、頬の水分を攫っていった。私のことを冷やかすようだった。廊下の突き当たり、体当たりをするように重たい扉を開け

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