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妖怪が人間に伝えたいこと。気配。予感──水木しげる『のんのんばあとオレ』
誰もいないはずなのに、どこからともなく音がする……。
見えないはずなのに気配だけは感じられる……。
道ばたの小石が語りかけてくるものがある……。
予感とも言えないけれど胸騒ぎがする……。
これは水木さんが少年時代に身近に感じられたことです。子ども同士のケンカが日常茶飯事であったように、こんな不思議なことが満ちあふれていました。主人公しげー(茂)にその不思議の正体をおしえてくれるのが、のんの
2人の天才が求め続けたもの、それは〝絶対〟といったものだったのではないでしょうか──小山慶太『光と重力 ニュートンとアインシュタインが考えたこと』
アインシュタインが一般相対性理論を発表してから今年は100周年にあたります。光と重力の問題を対象にしたこの理論ですが、アインシュタインより200年以上前に、おなじ光と重力を研究対象にした物理学者がいました。ニュートンです。この本は2人の天才物理学者がどのようにその研究に取り組み、彼らがもたらしたものでどのように物理学、天文学の世界が広がっていったかを一望できる通史ともなっています。
ニュート
怒りをこめて語られる〝平和的生存権〟というもの──川口創 大塚英志『今、改めて「自衛隊のイラク派兵差止訴訟」判決文を読む』
本書のあちらこちらからとても力強さを感じてきます、と同時に怒りも。
今回書き下ろされた大塚さんの「はじめに」にこのような一文があります。
「何より、9・11以降、この国では他人の理念を嘲笑い、足蹴にし、執拗なまでに攻撃するという態度に慣れ親しみすぎている。戦場ジャーナリストの死に対し、所詮は金儲けのために戦地に行った、自己責任と切り捨てる態度も同じだ。今回のシリアでの出来事でも繰り返された
自分だけのお守りにしたくなる言葉のかずかず──吉本ばなな『おとなになるってどんなこと? 』
「大人になんかならなくっていい、ただ自分になってくだい」
この思いを使えるために吉本さんはたくさんの、けれどもむずかしい言葉を使わずに綴られたものです。中高校生向けに書かれたものですが、
「気持ちがぶれてしまったときや自分でも自分が信じられないほどに落ち込んでしまったとき、この本を手にとりしばらく読み返せばいつのまにか自分の内面が調律できる、もとの軸に戻れる。そういうお守りみたいな本が作りた
いつまでも読み継がれてほしい、戦争を忘れないためにも──野坂昭如 黒田征太郎『小さい潜水艦に恋をしたでかすぎるクジラの話 戦争童話集~忘れてはイケナイ物語り~』
すべての作品が8月15日という日付から始まります。その日は終戦(敗戦)の日なのにこの物語の中では戦争は終わることなく続いているかのようです。
8月15日以後も戦闘があったかどうかということではありません。戦争の影は無くなることがなかったということなのでしょう。
戦死した父親が作ってくれた防空壕。その中にいると少年は、辛い戦禍の日々が続いても、父親のことを思い出し、生きる勇気が出てくるのでし
なぜ多くの日本人がそこに居住し、玉砕・集団自決の悲劇が生まれたのか──井上亮『忘れられた島々 「南洋群島」の現代史』
太平洋戦争に敗れるまで日本の委任統治領、事実上の領土となっていた南洋群島。天皇、皇后のパラオ共和国への慰霊訪問やペリリュー島等の死闘も大きく話題となりました。この南洋群島で「なぜ太平洋の島々で日本は戦ったのか。なぜ多くの日本人がそこに居住し、玉砕・集団自決の悲劇が生まれたのか」を追求した力作です。
第1次世界大戦の戦勝国として、旧ドイツ領の南洋群島を委任統治領とした日本、その後のドイツとの同