大きな窓の内側で読書をする冬の日

例のスーパーのイートインに居る。『例のスーパー』と言っても、最近私の日記を読み始めた方々にはイマイチピンと来ないだろうか。過去日記、特に去年の晩冬から初夏辺りの日記を読んで頂ければわかると思うが、一時期、私は『例のスーパー』と呼んでいるこのスーパーにしょっちゅう訪れていた。お目当ては、店内の少し奥まった所にある南向きの大きな窓が特徴のイートインである。なので『例のイートイン』と呼んでいる日記も恐らくある。そのイートインで静かに読書をするのが、一時期の私の日課だったのである。この所は大相撲初場所が開催されていたりその他何かと用事があったりして、中々こうやってこのイートインに足を運べていなかった。今日はそんな場所へ久しぶりに訪れているのである。

店内に入ってまず目指した飲料コーナーには、相変わらず51円のお茶が山積みにされていた。諸々の物価が高騰している今日に於いてもこの500mlのお茶だけは元々の価格のままで、それはそれで何かと不安事が無い訳ではないが、率直な思いとして、私はこの値段を見てやや安心した。緑茶、麦茶、烏龍茶、そして最近は濃い緑茶もある。つまり、51円のお茶は合計4種類あるのである。今日の私はカフェインを若干摂取したくて、一方で緑茶が飲みたい気分でも無かったから、烏龍茶を手に取って会計所へ向かった。今日は初めて見る店員さんが会計をしてくれた。

南向きの大きな窓からは光が差し込んできている。しかし、よく目を凝らすと雪が降っている事がわかる。自宅から歩いてここに向かう道中でも雪は時折激しく降っていて、読書をしていたここ2時間程は知らないが、今もこうやって雪が降っているという事は、気温がそれなりに低いという事だろう。昨夜天気予報を確認した時は、また寒波が襲来しているとの情報が記載されていた。流石に先月末の寒波程の力は無いだろうが、まだこうやって雪を降らす事のできる程の力がこの冬にも残っている事を知って、少し嬉しくなっている。更に、雪が降っているにも関わらず空は然程暗くないと云う、この如何にも不安定な空模様が、今日はまだまだ春ではない事を知らせてくれている。

因みに、読んでいる本は、この前の名古屋滞在の期間に寄った豊橋駅前のブックオフで購入した『自壊する帝国(著、佐藤優)』である。こうして冬の間に、ソ連崩壊のドキュメンタリーであるこの本を読めている事が嬉しい。偏見かもしれないが、ソビエトが舞台であるこの本を、夏の暑い暑い日に読んでしまったら、私は恐らく後悔していたと思う。この本は小説でも何でもなく、ただ著者の佐藤優が実際に体験した事を綴っているだけのドキュメンタリー本である。されど、佐藤優の文章が素敵なのだろう。私にはこの本が、佐藤優と友人の生き方を記録した本だと思える。いや、寧ろ佐藤優は脇役である。サーシャやポローシン、シュベードらの友人達が、この動乱の時代をどう生きたかを記録しているという事がこの本の価値だと思う。後、結局の所この本は宗教書でもあるとも思う。宗教的な生き方で必死に前へ進んでゆく登場人物には、念仏者である私にとっては自分と重ねてしまう所がある。何れにしても、この本は生き方がテーマである本なのである。何度でも言うが、私は冬にこの本と出会えてよかった。幸せ者だ。

読書が一段落してこうやって日記を書いている訳だが、もう夕方もいいところであるのに、どうも一向に空が暗くならない。成程寒さはある。されど確実に冬は終わりに近付いてきているのだろうと思わされる。去年の今頃もこうやってこのイートインで読書を楽しんでいたが、確か、この時間に着ろへ就くと、家へ着く直前になると辺りの家々から様々な匂いがしてきた。そんな時間帯である。我が家でも、母親が晩御飯を用意して待っている。なので、名残惜しいが今日はこの日記を投稿し終えたら帰路へ就く事にする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?