集団面接で引きこもりの話をした。
今から二年半前、引きこもりと転職を繰り返して自分に自信が持てず24歳にもなって接客業の経験もしないまま時が過ぎていた。
自分の容姿が嫌で人前に立てず、人を前にすると言葉が出てこなくなる。
そんな自分が嫌で醜くてもう変わりたかった。
ふと、来年は25歳、もう20代も折り返しに入るのに何も成し遂げていない、思い返してこれだけは頑張ったというものがなくて、とても情けなくなったのと同時にこのまま終わっていいのかと急に自分に対してとてつもない憤りを感じた。
何かしなくちゃ、何をしよう
考えて真っ先に思いついたのは痩せることだった。
人生で一度でいいから痩せた自分に出会いたい
痩せて自信をもって外を歩きたい
人前で容姿を気にせず笑って食事を摂りたい
痩せて人前に出る仕事がしたい
自分の中で信じられないほど活力が湧いてパーソナルジムを探し入会してダイエット生活が始まった。
ちなみにこの頃は食品工場で働いていたけど劣悪な環境にお局の嫌がらせも当たり前で挨拶を無視されたり陰口を言われたり食事制限をしていたことから食べているものを見ては遠回しに嫌味を言われ笑われていたけど痛くも痒くもなかった。
自分の中で揺るがない闘志のようなものが芽生え人生で初めてイキイキしてると感じた。
お世話になっていたトレーナーは私と一歳しか変わらないのにそのジムの店長だった。大手ジムで当時もそこそこ有名だったけど今では全国展開のスピードも速くあちこちにあるようなジムだ。
初めてそのトレーナーとあった時、あまりの輝きに驚いたのを覚えている。
自分でいうのも変な話だけど繊細で感受性が強いせいか、人から発せられるオーラや気にとても敏感でそのトレーナーから出ていた光のような眩しさは今も本当に忘れられない。
この時初めて人を尊敬してこんな風になりたいと思った。
パーソナルトレーナーという職業はただ筋トレを教えるだけではなく
その人が何を求めてどうなりたいのか
その為にたった数ヵ月でトレーナーとして何が出来るか
多額の大金に伴う結果の提供もそうだが
代謝や体の反応を見て摂るべき栄養の指示
メンタルのケア、息遣いの粗さでメニューの変更をしたり
その日の体調やその日の要望によって限りある時間を有効に使い満足させる
場合によっては命を預かる責任も伴う
トレーナーという肩書きの奥にある自分という人間が試されているようでやりがいという言葉だけでは表せないほど深い職業だと感じている
パーソナルジムに通う大半がコース終了後や目標達成後も契約を延長する理由はトレーナーとの相性や人柄に価値を感じているからだ。
会うだけで元気になれる
家族や友人とは違うけど何となく近しい相手
個人的には自分の体重やスリーサイズを晒した相手に隠すことなんてあるか、と開き直っていたが為によく人間関係や自分のコンプレックスについてトレーナーに相談していた。
通い始めて半年が経つ頃には10㎏近く痩せていて自分でも見違えるほど見た目は変わり周りがキラキラして見えていた。
服を買うのも楽しい
おしゃれも楽しくて
友達とランチしていても心から楽しくて
今まで外の世界は灰色のように見えていたのにまるで世界が色づいたように見ている景色が180°変わった。
別の記事でも書いたけど私は転職に前向きになっていて次の仕事は絶対にパーソナルトレーナーになると決めいていた。
自分のように見た目に自信が持てないせいで、自分が嫌いなせいで色んなことを否定してチャンスを逃し経験を逃して、変わりたいのに変われなくて苦しんでいる人がもしこの世にいるのならば今度は自分が背中を押したいと、そう強く思っていたからだ。
パーソナルジムの面接に行ったとき講習のように色々と企業の説明を聞いた後に面接の流れと聞いていた。
会場について知ったが集団面接で自分の座る席の後ろにはおそらく偉いであろう方々が沢山いて今までこんな人前で話したことがなかった私は考えていた志望動機の内容も全部吹っ飛んでしまった。
周りはこれまでのキャリアやトレーナーとしての実績、経験を明るくてハキハキと話していた。思い出せる限りだけど自分の番が来たとき沢山の人の前で私は次のように話した。
恥ずかしい話ですがずっと引きこもりでした。所謂ニートです。この歳になっても接客業すらしたことがないです。この業界に相応しい人材かわからないですが自分も変わりたい一心で痩せて世界が変わり今、人前で話しています。自分が実際に痩せて今度は自分と同じように体のコンプレックスで色んな経験を失う人がいるならば同じ目線で悩み、理解してその人たちの背中を押したいです。
恐らくこんなことを言った。引きこもりだったなんて、ニートだったなんて言うつもりはどこにもなかったし自分の用意してきたメモにも書いてなかった。その場で聞いてる人たちもきっと驚いたと思う。
帰りにそのままジムで無心で筋トレをして帰宅した。
後日、二次面接の連絡が来てそこで転職歴が多いことも引きこもりだったことも再度聞かれ素直に話しとてもインパクトのある話だったっと笑われてしまった。
面接は合格して晴れてトレーナーという肩書きを手にしたけど現実は本当に厳しく運動生理学の勉強に接客の勉強、私は人と比べて色んな経験が遅かったことから本当に苦労した。
それでも絶対に悩んでいる人と同じ目線で在り続けることだけ忘れないように毎日を過ごし、自然と顧客が出きて、いつの間にか店舗でのパーソナル指名が何ヵ月も連続でもらえるようになり自分を指名してくれるお客様で毎日がとても忙しくなっていた。
ジムに一歩踏み出す勇気はとても凄いことでそれはずっと蓋をしてきた自分のコンプレックスと向き合うことでもある
体と心は繋がっている
体と向き合うということは心と向き合うということ
自分と向き合うことで本当は何がしたかったのか
自信がつくことで挑戦してみようという気持ちにもなれる
自信は経験を積まなければ手にすることができないもので少しでも自分と向き合えた人は確実に自信が積み重なりやがて大きな成功をする。
この仕事を通して私はそのようなことを改めて学び出会ったお客様全員にその想いを乗せて接してきた。
後から聞いた話だけど集団面接は40~50人近くが応募して受かったのはたった4人だけだったらしい。なぜ自分が選ばれたのか、入社してから少し経って店長に聞いたら
一番ユーモアがあると思ったから
とのこと、絶対この子は磨けば凄くなると思ったから選んだんだよと言われた。
私がこの仕事を選んだわけはコンプレックスをと向き会うことで本来の自分に出会えたり、自分の事を少しでも好きになれる人を増やしたいと思ったから、無理に向き合うことはなくても一つでも少しでも自分の自信があることや自分の好きなところがあれば今日が少し浮かない日でもそのことを自分だけが分かっていれば、胸にあれば、明日もちょっとは頑張れるし自分が好きでいられるから。
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