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[800字コラム] 需要と供給

かつて、僕は商社でウランの輸入をしていた。

日本の原発で使う燃料は全量輸入に依存しており、僕はカナダのウラン会社の販売代理店として全国の電力会社に営業していた。
今にして思うと、実に貴重な体験だったと思う。
後の原発事故で福島県民に土下座することになる電力会社の副社長が、当時は部長で超威張っていたっけ。

それはさておき……

僕がウランの仕事を始めた2003年頃、市場価格は1ポンド10ドル程度だった。米国はスリーマイル島事故以降原発を建設せず、米エネルギー省は備蓄したウランを市場に放出していたし、旧ソ連の軍事用ウランを原発の燃料に転用するプロジェクトもあり実需に対して供給過多だった。
しかし、いわゆる原子力ルネッサンスが起こり、ウラン価格は突如上昇した。いつの間にか20ドル台から40ドル台に上がり、僕が原子力の仕事から一旦離れた2007年には何と130ドル超に達した。その後、リーマンショックで40ドル程度に落ち着き、そして現在は20ドル前後にまで落ちている。それでも2003年から見れば2倍。

ウランという、いささか奇異な商品を通じて僕が教訓にするのは、市場は常に水物だということ。
需要が高まれば入手は困難で価格は上がるし、輸入となれば為替変動も考えねばならない。しかし増産が実現する頃には市場は冷えているかも知れない。

最近、使い捨てマスクが安く流通し始めたことで、政府支給の布マスクは不要だとか届くのが遅いとかいう批判を賢しらに言い出す人たちがいる。
しかし言わずもがな、緊急事態宣言が解除になったからといってコロナウィルスが死滅したのではないし、感染が再び広がるリスクは存在し続けている。

今後いつまたマスクの供給が逼迫するか分かったものではなかろうに、今この時点だけを見て、なにゆえ全てを知ったようなことが言えるのか、そうした人種の、知性の欠片もない薄っぺらな思考回路を、僕は全く理解できずにいる。

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