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[800字コラム] 話の長い人たち

「カレシの元カノの元カレを、 知っていますか」

公共広告機構のエイズ啓蒙のコピーと記憶しているけど、新型コロナウィルスもまた、知らないところで知らない人から知らない人へと、世界規模で感染が拡がってしまった。

先日、会社の近くで食事をしていたら、カウンターの一席ごとにアクリル板がついてるのに、横並びに座っていた、かつては美人だったかもしれない女子たちが、わざわざその手前で顔を突き合わせて、延々くっちゃべってた。食事が終わってもマスクは外した状態で。

彼女たちはまぁそういう種族といおうか、お店が混んでいようが、コロナ禍の中だろうが、周囲が黙々と食事をしていようが、自分たちだけが世界の全てであって、周囲で何が起きていようと、視界にも脳内にも入らず、自分たちの声のボリュームも気にすることなく今の会話を楽しむことが大事なのだろうし、女子校状態だった大学の学科で僕自身この手の生き物はたくさん見てきたのでその態様に驚きはしなかったけれど、彼女たちのどちらかが保菌者だった場合、飛沫が店内に拡散したあのお店は確実にクラスター化しただろうと思う。

店内で長時間大声で話をしていても、
「ウチらは何も悪いことをしていない」
「ウチらの時間を自由に使っているだけ」
という言い分はもちろんあるだろうし、
「ウチらは外食で経済を回してるのヨ」
と威張る人もいるかもしれない。

しかしながら、悪いことをしたつもりがなくても他人に迷惑を掛けるおそれは、コロナに限らないよろずの場面であり得ることではあるまいか。

そのことを常日頃心に留めているか、或いは自分だけの自由や自分だけの考えを貫いて他人のことなんて知らないと居直るか、という思慮の分かれ道は、政策や法令が決める以前の問題、自分の行動を律するのは自分自身でしかありはしまい。

個人の自由を突き詰めれば後者こそが正しいことになるけれど、少なくとも僕は前者でありたいと思ってしまうのだが。

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