中村明裕

/ナカムラ= アキ]ヒロ/。在野の自称言語研究家。日本語の形態音韻史を研究しています。

中村明裕

/ナカムラ= アキ]ヒロ/。在野の自称言語研究家。日本語の形態音韻史を研究しています。

記事一覧

もうすぐ百周年! 四角号碼

この記事は「言語學なるひと〴〵 Advent Calendar 2023」の2日目の記事として書かれました。 忙しい方のためのまとめ四角号碼索引が使えると、『大漢和辞典』で、読み方も…

中村明裕
5か月前
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「さらえる」は標準語? それとも方言?

はじめにX(旧Twitter)で、このようなポストを見かけました。一応日本語学に関わってきた者として、お答えしてみたいと思います。 「標準語」に厳密な基準はない容器の中…

中村明裕
6か月前
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スライドを捨てよ。予稿集を読み上げよう。

現在、学会発表と言えば、プレゼンテーションソフト(主にパワーポイント)でスライドを映して話をする形式を採る人がほとんどだ。 だが、そういう発表の9割以上は、スラ…

中村明裕
9か月前
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ミ語法の品詞

瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ (川の流れが早いので岩にせき止められた滝川のように、別れても最後には逢おうと思う。) ――崇徳院 ミ語法と…

中村明裕
4年前
3

夏来たるらし

数日前まで暖房が必要なほどだったのに、数日でいきなり冷房が必要なほどになった。暑くて仕方がない。世の中は引き続き騒がしいが、それはさておき、こんな季節に相応しい…

中村明裕
4年前
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ðə dó:ɡ_in ðə méindʒɚ

ゲルハード式発音記号による文章の例です(アメリカ発音)。英語の発音の練習にどうぞ。_は続けて読む記号です。 ðə dó:ɡ_in ðə méindʒɚ ə bǽdtémpɚd dó:ɡ…

中村明裕
4年前
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ゲルハード式発音記号のすゝめ

この記事ではゲルハード式発音記号をご紹介します。 ゲルハード式発音記号は、音声学者のロバート・H・ゲルハード(国際基督教大学名誉教授)によって考案された英語の発…

中村明裕
4年前
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英語の不規則形容詞・副詞を暗記するための表を作ってみた

英語の不規則形容詞・副詞を暗記するための表を作ってみました。 英語の不規則形容詞・副詞は数が少なく、暗記するのはそれほど難しい作業ではありません。しかし、インタ…

中村明裕
4年前
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【読書メモ】松倉昂平氏「福井県北潟方言の後部3拍複合名詞のアクセント」

暑い日々が続いている。ここのところ雑事に忙殺されていて学術書や論文を読む精神的余裕がなかったが、なんとかかんとか一段落ついたかなという昨日27日、ちょうど『日本語…

中村明裕
4年前
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【読書メモ】澤村美幸氏『日本語方言形成論の視点』第4章

図書館で澤村美幸氏の『日本語方言形成論の視点』という本を見かけた。その第4章が「意味変化の地域差と方言形成―「スガリ〈蜂〉〈蟻〉」を例として」というものであった…

中村明裕
5年前
3

日本郵便の送料まとめ(私家版)

日本郵便には色々な送料プランがあって分かりにくいので、まとめてみました。といっても私がネット古本屋なので、ネット古本屋向けに特化。冊子でないものはゆうメールでは…

中村明裕
5年前
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note開始

noteを始めることにしてみた。 今まで日々の記録で公開できるものはTwitterに書いてきたし、公開できないものは日記帳に書いてきた。まとまったものを書くことはあまりな…

中村明裕
5年前
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もうすぐ百周年! 四角号碼

もうすぐ百周年! 四角号碼

この記事は「言語學なるひと〴〵 Advent Calendar 2023」の2日目の記事として書かれました。

忙しい方のためのまとめ四角号碼索引が使えると、『大漢和辞典』で、読み方も部首も画数も分からない漢字を高速で引くことができるよ!

「四角号碼入門」と「WEB支那漢」がおすすめ。

はじめに四角号碼は漢字の四隅の筆画を数字に変換して漢字を検索する方法だ。読み方も部首も画数も分からなくても漢

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「さらえる」は標準語? それとも方言?

「さらえる」は標準語? それとも方言?

はじめにX(旧Twitter)で、このようなポストを見かけました。一応日本語学に関わってきた者として、お答えしてみたいと思います。

「標準語」に厳密な基準はない容器の中身を全て取り出すことを「さらえる」と言うことがあります。この「さらえる」は標準語か、というのがご質問です。

ここで問題になるのは、そもそも「標準語」「方言」とは何か、ということです。

まず、「方言」とは何でしょうか。言語学では

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スライドを捨てよ。予稿集を読み上げよう。

スライドを捨てよ。予稿集を読み上げよう。

現在、学会発表と言えば、プレゼンテーションソフト(主にパワーポイント)でスライドを映して話をする形式を採る人がほとんどだ。

だが、そういう発表の9割以上は、スライドなど使わずに予稿集をただ読み上げるだけにした方がはるかにましな発表になるように思われる。

聴衆の手許に情報がない多くの学会の大会では、予稿集というものが用意されるか、資料(ハンドアウト)が配布される。その上でスライドを使って説明され

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ミ語法の品詞

ミ語法の品詞

瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ
(川の流れが早いので岩にせき止められた滝川のように、別れても最後には逢おうと思う。)
――崇徳院

ミ語法というものがある。「[名詞句] を [形容詞語幹] み」で、「…が…ので」の意味になる。この「み」を辞書や参考書などで調べてみると、「み」は「接尾辞」だと言っている。

しかし、接尾辞であるからには、「『はや』は形容詞の語幹で、『み』は接

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夏来たるらし

夏来たるらし

数日前まで暖房が必要なほどだったのに、数日でいきなり冷房が必要なほどになった。暑くて仕方がない。世の中は引き続き騒がしいが、それはさておき、こんな季節に相応しい浮世離れした話題でも。

持統天皇の有名な御製がある(『万葉集』28番歌)。

春過而 夏来良之 白妙能 衣乾有 天之香来山
(春過ぎて夏来たるらし白妙の衣干したり天の香具山)

『新古今和歌集』『小倉百人一首』には「春過ぎて夏来にけらし白

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ðə dó:ɡ_in ðə méindʒɚ

ゲルハード式発音記号による文章の例です(アメリカ発音)。英語の発音の練習にどうぞ。_は続けて読む記号です。

ðə dó:ɡ_in ðə méindʒɚ
ə bǽdtémpɚd dó:ɡ wə́n déi fɑ́und_iz wéi_intu_ə méindʒɚ_ənd fɑ́und_it sóu nɑ́is n kə́mfɚtəbl ðət_i: méid_əp_iz mɑ́ind tə stɑ

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ゲルハード式発音記号のすゝめ

ゲルハード式発音記号のすゝめ

この記事ではゲルハード式発音記号をご紹介します。

ゲルハード式発音記号は、音声学者のロバート・H・ゲルハード(国際基督教大学名誉教授)によって考案された英語の発音記号です*1。簡単で分かりやすいため、学習用の発音記号に適しています。

以下、ゲルハード式発音記号を [ ] で囲って示すことにします。

子音ゲルハード式発音記号は次の子音記号を使います。

[p, b, t, d, k, ɡ, m

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英語の不規則形容詞・副詞を暗記するための表を作ってみた

英語の不規則形容詞・副詞を暗記するための表を作ってみました。

英語の不規則形容詞・副詞は数が少なく、暗記するのはそれほど難しい作業ではありません。しかし、インターネット上や書籍の中にある表には、まだ工夫の余地があるように思われました。第一に、表をより簡潔に出来ると思いました。第二に、声に出して読んで覚える以上は、でたらめではなくある程度正確な発音で覚えたいものです。この2点に対して工夫をしてみま

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【読書メモ】松倉昂平氏「福井県北潟方言の後部3拍複合名詞のアクセント」

暑い日々が続いている。ここのところ雑事に忙殺されていて学術書や論文を読む精神的余裕がなかったが、なんとかかんとか一段落ついたかなという昨日27日、ちょうど『日本語の研究』第15巻2号が届いた。見ると、松倉昂平氏の「福井県北潟方言の後部3拍複合名詞のアクセント」という論文が載っていたので久々にのんびりと論文を読むことにした。

日本語アクセント研究の最も面白いところの一つは、文献研究から得られる情報

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【読書メモ】澤村美幸氏『日本語方言形成論の視点』第4章

図書館で澤村美幸氏の『日本語方言形成論の視点』という本を見かけた。その第4章が「意味変化の地域差と方言形成―「スガリ〈蜂〉〈蟻〉」を例として」というものであった。「スガリ」という語の語誌には以前から非常に興味があったので興味深く読んだ。概要と感想を書きつけておく。

正直に言って、私は中国語学や分類学等に暗いのでよく理解できなかった点が多い。これらに明るい方のご教示を得たい。というよりちょっと勉強

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日本郵便の送料まとめ(私家版)

日本郵便には色々な送料プランがあって分かりにくいので、まとめてみました。といっても私がネット古本屋なので、ネット古本屋向けに特化。冊子でないものはゆうメールでは送れませんし、クリックポストはYahoo! JAPAN IDが必要です。

日本郵便のサイトを見ながらちまちま表にしたものなので、写し間違いや読み間違いも多いと思います。この表を利用する際はご自身で日本郵便のサイトでご確認ください。間違いに

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note開始

noteを始めることにしてみた。

今まで日々の記録で公開できるものはTwitterに書いてきたし、公開できないものは日記帳に書いてきた。まとまったものを書くことはあまりなかったのでブログのようなものは必要なかった。が、個人事業として古本屋を始めつつ言語学の研究を続けるにあたって、ときどき見返しつつ何度も手を入れたいような事柄を書くのに、ブログのようなものが一番便利だと思ったのだ。

というわけで

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