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パリ条約4条F 優先権

 パリ条約4条Fでは、複数優先、部分優先が規定されています。複数優先は、複合優先と呼ばれることもあるようです。
 これらの規定は、基礎出願と優先権を伴う出願との間における「客体の同一性」を緩和するための規定です。


1.複数優先

 複数優先は、特許出願で主張することができます。実用新案、意匠、商標登録出願については規定がありませんので、保護を与えるか否かは各国の自由です。

 複数優先を主張する場合、基礎となる出願が複数です。具体的には、2以上の出願に基いて別々に発生した複数の優先権を伴った出願を行います。この複数の優先権には、2以上の国でなされた出願に基づいて発生した優先権が含まれます。

2.部分優先

 部分優先は、第二国出願の「一部」について優先権を主張することです。
パリ条約4条Fに規定された「優先権の主張の基礎となる出願に含まれていなかつた構成部分」の判断は、第一国出願の請求の範囲だけでなく出願書類全体から判断します。

3.効果

 いずれの同盟国も複数優先、部分優先を理由とした優先権否認や拒絶はできません。言い換えれば、優先権とは関係ない理由での出願拒絶はできます
 
 第二国出願に発明の単一性が「ない」場合でも優先権否認はできません。一方、発明の単一性が「ない」場合は、拒絶査定等の処分は可能です。
単一性違反が指摘された場合、補正又は分割(パリ条約4条G)による救済を受けることができます。わが国でも単一性違反に対応するための分割(特許法44条)は可能です。

 優先権主張を伴う出願をする際には、第二国出願(後の優先権を伴う出願)で、第二国出願に第一国出願の内容が記載されている必要があります。
優先権主張の手続き(パリ条約4条D)は別途必要です

・パリ条約4条F 優先権

F
いずれの同盟国も,特許出願人が2以上の優先権(2以上の国においてされた出願に基づくものを含む。)を主張することを理由として,又は優先権を主張して行つた特許出願が優先権の主張の基礎となる出願に含まれていなかつた構成部分を含むことを理由として,当該優先権を否認し,又は当該特許出願について拒絶の処分をすることができない。ただし,当該同盟国の法令上発明の単一性がある場合に限る。
優先権の主張の基礎となる出願に含まれていなかつた構成部分については,通常の条件に従い,後の出願が優先権を生じさせる。


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