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不競法13条 当事者尋問等の公開停止

 憲法の裁判公開の原則(憲法82条)に基づいて、裁判は公開で行われるのが原則です。

 しかし、営業秘密についての不正競争の裁判で、その営業秘密が公開されると、裁判を行う意味が無くなってしまいます。このような事態を放置しておくと、営業秘密についての不正競争事態を抑制することが不可能になるとも考えられます。

 ここで憲法の裁判公開の原則(憲法82条)の趣旨は、裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し、裁判に対する国民の信頼を確保するためとされています。
 しかし、上述のように、裁判の公開が原因で、実質的に裁判自体が行えなくなる(裁判を行う意味がなくなる)ような事情がある場合も考えられます。このような、営業秘密との関係で裁判の公開が困難となるやむを得ない事情があり、さらに、裁判の公開により適正な裁判を行うことができない場合にまで、憲法が裁判の公開を求めていると解するべきではありません。

 そこで、不競法13条で、裁判の公開停止を行う条件等について規定しています。

 当事者尋問等の公開停止の決定がなされる場合の営業秘密等の条件は、
①当事者等が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより当該営業秘密に基づく事業活動に著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述ができないこと(不競法13条1項)、
②当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該事項を判断の基礎とすべき不正競争による営業上の利益の侵害の有無についての適正な裁判をすることができないこと(不競法13条1項)、
の2個です。

 裁判の公開停止の決定をする際には、「決定前」に、当事者等の意見を聴く必要があります(不競法13条2項)。これは、営業秘密等について、公開の法廷で十分な陳述をできないか否かは、当事者等の意見を直接聴かなければ判断が難しいためです。

また、インカメラ手続きの規定も設けられています(不競法13条3項、4項)。インカメラ手続きの際に、相手方に書類が見られる可能性がありますので、秘密保持命令の申立てができます。


・不競法13条

(当事者尋問等の公開停止)
第十三条 不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟における当事者等が、その侵害の有無についての判断の基礎となる事項であって当事者の保有する営業秘密に該当するものについて、当事者本人若しくは法定代理人又は証人として尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該事項を判断の基礎とすべき不正競争による営業上の利益の侵害の有無についての適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。
2 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者等の意見を聴かなければならない。
3 裁判所は、前項の場合において、必要があると認めるときは、当事者等にその陳述すべき事項の要領を記載した書面の提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書面の開示を求めることができない。
4 裁判所は、前項後段の書面を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書面を開示することができる。
5 裁判所は、第一項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない。


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