西川

エッセイ、短編小説、映画や本の紹介など。

西川

エッセイ、短編小説、映画や本の紹介など。

記事一覧

投げられた石にとって、上っていくことが良い事でもないし、悪い事でもない

自省録にはこんな言葉がある 「投げられた石にとって、上っていくことが良い事でもないし、悪い事でもない」 と。 ぼくは最初にこれを読んだ時、馬鹿にするような気分にな…

西川
4日前

目標達成という自傷行為

目標を達成する、したい、と思うことはある意味で、 今の自分ではダメだ、と思うことであり、 現在の自分への自傷行為だと言える。 では目標は達成しない方がいいのか、 …

西川
8日前

誰を信じるのか

「誰も信用できない」 と言ったり、 「裏切られてもいいから、皆を信頼する」 と言ったり。 理想はやはり、全員を信じることだろう。 一片の疑いもなく。 この世のみん…

西川
8日前

完璧は不完全

完璧って不完全だよね。 矛盾しているんだけど、例えば完璧に見える人って どこか偽物感がある。 だって、この世に完璧なもんなんてないだろう? マトリックスのセリフに …

西川
10日前
2

「ポンコツで天才!」エセイ

私たちは「ポンコツで天才」である。 というか、 そう思った方がいいと、ぼくは思っている。 「自分はポンコツで馬鹿で無能なのか?」 それとも 「もしかして天才?」 と…

西川
2週間前

「自己責任論への抵抗」エッセイ

「他責は無能」 ぼくはこういった言説に異を唱えたい。 完全否定したい。 自己責任論は、大抵頭がいい人、社会的に地位の高い人達が 唱えているように思う。 実際頭は良…

西川
2週間前
5

「誰でもない私」エッセイ

ふと、 「自分は一体、何者なのだろう」 と、底の抜けたような不安感に襲われることがある。 自分が何者かなんて、答えは決まっていて、自分は自分でしかない。 今見え…

西川
2週間前

「正論」エッセイ

正論は仕事などの真面目な場面で、独裁的に襲い掛かる。その反対側にあるのが人間性、かわいらしさ、許し、みたいなものかな。 人間性はときにただの我儘として処理されて…

西川
2週間前

映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」感想ネタバレあり

映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」という映画をみた。 この映画のテーマを一言で言うと、 「大儀に対する犠牲は、呪いとなり襲い掛かる」 というような所かと思う。 舞台は…

西川
2週間前

「普通って普通じゃない」エッセイ

ふと、普通って普通じゃないな、と思う。 一般的に言われるいわゆる”普通”って、たとえば大学に入って、新卒で就職して、最初は20万くらいもらって、結婚して子供つくっ…

西川
3週間前
3

エッセイ「世間とは必要な茶番」

世間体や社会、一般的な評価。 これらが一体何なのか、正直よくわからなかった。 それなのに、自分に対して、なぜか影響力だけはあった。 いや、わからなかったからこそ、…

西川
3週間前
3

SS「花曇り」

春の頃、花を養う空を養花天と呼ぶらしい。 「薄雲がかかってるな」 「だね。お花見って感じじゃないわねえ」 「ま、桜さえ綺麗なら花見だろ」 「まさか。酒が美味ければ…

西川
1か月前
2

ショート「毎日」

新社会人。大人になると、社会が途端に牙をむき、俺を痛めつけ始めた。結婚しろ!税金払え!仕事しろ!親孝行しろ! ウンザリだ。 毎日が辛く、苦しく、無意味に感じる。復…

西川
2か月前
1

エッセイ「目の前」

アルバイトを頑張っている人を見ると、近視眼的だなとか、動物的だな、とか、ネガティブなことを思う。 それと同時に、彼らのような人々が、”いい人間”であり、結果的に…

西川
2か月前
4

エッセイ「就活」

皆が出来立てほやほや、即席の 「志望動機」や 「就活の軸」や 「求めているやりがい」 などの専門用語を用いて、 フィクションを創り上げる。 さも、何年も前から持ってい…

西川
2か月前
3

ショート「飴やスルメ」

 窓外。雨粒が教室の箱を打ち付けて、二人に流れる空気を圧迫している。ふいとこちらを覗いたような、それとも、もう少し先を覗いたような彼女の目が、判断もつかぬ間にま…

西川
2か月前

投げられた石にとって、上っていくことが良い事でもないし、悪い事でもない

自省録にはこんな言葉がある
「投げられた石にとって、上っていくことが良い事でもないし、悪い事でもない」
と。
ぼくは最初にこれを読んだ時、馬鹿にするような気分になった。
なぜなら、僕たちは石ではないからだ。
単なる客観的な物体ではなく、主観が存在する。
だから、こんな言葉は無意味だと思った。

しかし、最近はその主観においてさえ、石のように、
昇ることも落ちていくことも、無意味なのだという
感覚が

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目標達成という自傷行為

目標を達成する、したい、と思うことはある意味で、
今の自分ではダメだ、と思うことであり、
現在の自分への自傷行為だと言える。

では目標は達成しない方がいいのか、
というと、そういう事が言いたいわけではない。

僕が好きな夏目漱石の言葉に

”花は咲く。馬は走る。人は書く。
自分自身に為りたいが為に。”

という言葉がある。

要するに、自分ではないもの、になるのではなく、
自分の中に元々ある、ポ

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誰を信じるのか

「誰も信用できない」

と言ったり、

「裏切られてもいいから、皆を信頼する」

と言ったり。

理想はやはり、全員を信じることだろう。
一片の疑いもなく。
この世のみんながそうなったら、こんなに温かく
平和な世の中はない。

しかし、現実はそういうわけには
いかないだろう。

ぼくはこの現実を生きるにあたって、
「全員を信じる」
のも
「全員を信じない」
のも、
どちらも不誠実であると思う。

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完璧は不完全

完璧って不完全だよね。
矛盾しているんだけど、例えば完璧に見える人って
どこか偽物感がある。
だって、この世に完璧なもんなんてないだろう?

マトリックスのセリフに
”完璧すぎてまるで偽物”というセリフが登場するが
まさに共感する。

完璧に見えるものって、どこか偽物臭が漂う。
きっとどこかに、嘘や、隠れている部分がある。
大抵、それは凝縮された醜さで、
ただの醜さとは異質の悪臭がする。

完璧で

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「ポンコツで天才!」エセイ

私たちは「ポンコツで天才」である。
というか、
そう思った方がいいと、ぼくは思っている。

「自分はポンコツで馬鹿で無能なのか?」
それとも
「もしかして天才?」
とか。
なんかそういう事って、たまに気になって考える。
それに、ただ気になるだけではなく
自分の生きる態度にも、そういった自己認識は
関わってくる。

天才だとしたら、もっと前に出て頑張った方がいいのかな?とか。
馬鹿なら馬鹿なりに出し

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「自己責任論への抵抗」エッセイ

「他責は無能」

ぼくはこういった言説に異を唱えたい。
完全否定したい。

自己責任論は、大抵頭がいい人、社会的に地位の高い人達が
唱えているように思う。
実際頭は良いのだろうけど、心が見えているのかな。

僕は自己責任論にドップリと浸かっていた人間だ。
いや、浸かろうとしていた人間だ。
でも無理だった。
だってどう考えたって違和感がある。

自己責任が良いとされる理由は
「他人のせいにしても何も

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「誰でもない私」エッセイ

ふと、

「自分は一体、何者なのだろう」

と、底の抜けたような不安感に襲われることがある。

自分が何者かなんて、答えは決まっていて、自分は自分でしかない。
今見えている自分。現実。過去。
未来まで含めるとややこしくなってくるけれど、
まあ、今のところ自分というのは、
自分の身体であり
自分の声であり
自分の所属する団体であり
自分の考えや感情、発言、
時間の使い方やお金の使い方、であるわけだ。

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「正論」エッセイ

正論は仕事などの真面目な場面で、独裁的に襲い掛かる。その反対側にあるのが人間性、かわいらしさ、許し、みたいなものかな。

人間性はときにただの我儘として処理されてしまう。でも正論だけがまかり通る社会ってどうなんだろう。
だって僕たちは人間で、機械じゃない。正しい事ばかりやっていられないし、そんな風になるべきでもないと思う。そんな世界に意味はないと感じる。
僕はどちらかと言うと、正論を言う側の人間だ

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映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」感想ネタバレあり

映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」という映画をみた。
この映画のテーマを一言で言うと、
「大儀に対する犠牲は、呪いとなり襲い掛かる」
というような所かと思う。

舞台は戦後間もない日本で、タバコを吸っている人ばかりなのが、現代とのギャップとしてよく表れていた。
主人公の水木は退役軍人で「玉砕命令」で大義の為に死ぬことを課された過去のある男。
戦争は終わったと思いきや、それは暴力戦争のはなしだった。形相

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「普通って普通じゃない」エッセイ

ふと、普通って普通じゃないな、と思う。
一般的に言われるいわゆる”普通”って、たとえば大学に入って、新卒で就職して、最初は20万くらいもらって、結婚して子供つくったいり、昇進したり、転職したり、みたいな。

でも、そういう”普通”を手に入れるためには、結構頑張らないといけない。
そもそも大学の進学率は全体の半分くらいだ。この時点で普通とは?と思う。
最近では奨学金で苦しめられる学生が声を挙げたりし

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エッセイ「世間とは必要な茶番」

世間体や社会、一般的な評価。
これらが一体何なのか、正直よくわからなかった。
それなのに、自分に対して、なぜか影響力だけはあった。

いや、わからなかったからこそ、怖かった。だから従うしか
無かったのだろうと思う。

世間とは、社会とは、一般とは。

僕はこれらが、必要な茶番だと考える。
茶番だが、必要なのだ。

例えば学歴。
学歴は一般的に賢さの指標として使われる。しかし、学歴や偏差値が物語るの

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SS「花曇り」

春の頃、花を養う空を養花天と呼ぶらしい。

「薄雲がかかってるな」
「だね。お花見って感じじゃないわねえ」
「ま、桜さえ綺麗なら花見だろ」
「まさか。酒が美味ければ花見よ」
「天気の話は」
前を歩くとぼけ顔の、もう少し奥に悠々と風が吹く。白い鱗がひらひらと泳いでいるのが見えた。
冬を惜しむ、薄寒い初春の陽気の中、寝ぼけ眼の桜花は未だ見ぬ客を、今か今かと、目配せしてどよめき、迷い待つ。

「少し時期

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ショート「毎日」

新社会人。大人になると、社会が途端に牙をむき、俺を痛めつけ始めた。結婚しろ!税金払え!仕事しろ!親孝行しろ!
ウンザリだ。
毎日が辛く、苦しく、無意味に感じる。復讐しよう。オレが社会を搾取する番だ。
手始めに生活保護を不正受給した。親の金も盗んだ。どんどん大胆に、盗みや、殺しもした。女も子供も。今度はオレが社会に牙をむき、痛めつけてやった。しかしまだ、毎日が辛く、苦しく、無意味に感じる。オレを痛め

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エッセイ「目の前」

アルバイトを頑張っている人を見ると、近視眼的だなとか、動物的だな、とか、ネガティブなことを思う。
それと同時に、彼らのような人々が、”いい人間”であり、結果的には、優秀とされるのだろうと思う。

オレはアルバイトに全力になれる人達の気持ちがわからない。揶揄しているわけではなく、本当にわからないんだ。
時給性のアルバイトは手を抜くほど自分にとって得だし、誰がどんな風にやっても大して変わらないと思って

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エッセイ「就活」

皆が出来立てほやほや、即席の
「志望動機」や
「就活の軸」や
「求めているやりがい」
などの専門用語を用いて、
フィクションを創り上げる。
さも、何年も前から持っていた
信頼性の高いもののように
面接官に掲げる。

面接官は
「なるほど。」
という顔付でそれを
評価して、メモをとる。

「面接ではこう答えるもの」
というひな形にそって、
創り上げたに過ぎないのに、
なにを納得しているのだろう。

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ショート「飴やスルメ」

 窓外。雨粒が教室の箱を打ち付けて、二人に流れる空気を圧迫している。ふいとこちらを覗いたような、それとも、もう少し先を覗いたような彼女の目が、判断もつかぬ間にまた窓の外に向けられた。
ただ数舜の出来事も、強く、早く波打つ鼓動が長く感じさせる。

「百合川さ、知ってる?鼠の寿命は短いけど、脈動数は人間と同じくらいなんだ。」
「ふうん。」
「だからさ、きっと人間とは時間の感覚が違って、たとえ一瞬でも、

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