エッセイ「就活」

皆が出来立てほやほや、即席の
「志望動機」や
「就活の軸」や
「求めているやりがい」
などの専門用語を用いて、
フィクションを創り上げる。
さも、何年も前から持っていた
信頼性の高いもののように
面接官に掲げる。

面接官は
「なるほど。」
という顔付でそれを
評価して、メモをとる。

「面接ではこう答えるもの」
というひな形にそって、
創り上げたに過ぎないのに、
なにを納得しているのだろう。

周りの就活性を見ていると、
自分自身でも、それを
本当に自分の
「志望動機」や
「軸」
だと思っている人までいる。
数か月考えたところで、
そんなものがあなたの本質に
一ミリでも触れているなんて、
思い上がりもいいところだ。

就活というのは、
フィクションをいかに創り出し、
いかにそれを信じる、
もしくは、如何に嘘を平気でつけるか
というゲームだ。

本当に真面目に人生を考えてきて、しかも
運が良かったり容量が良いごく少数と、
いい加減な人が有利であり、
ただ真面目な人間が
最もまずい。

だからって、新卒一括採用は
しょうがないシステムだともいえる。
何のスキルもない大学生をどんな基準で
評価しろというのか。
かといって、
企業は簡単にその人間を解雇できないから、
適当に選ぶわけにもいかない。
難しい世の中だ。
この茶番は起きるべくして起きている。

それを割り切れる人か、それに気が付かない鈍感な人が
強い。

しかし考えてみれば、
それは就活に限った話ではなく、
社会全体がそうであると言える
かもしれない。

大人になるとは単に成長することではなく、
大人というひな形に沿って、成長させる部分は
成長させ、
邪魔になる子供らしさは退化させていくことだ。



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