nokto etapo 01
テヤルト・レドの主人であるマダム・ルイーゼは、カウンターの奥からその少年を見やった。
金茶色の短い髪、そして編んだベストや装飾品から判断するに、北のウアナティール王国の出だろう。未発達な背丈や体格、そして幼く生命力にあふれた顔は、成人もしていない年頃。毎日、様々な客を見てきたルイーゼは、己の目に疑いを持たない。
「で? ぼうや」
「フィーロです」
「そう。で、フィーロ。うちの舞台に立ちたいって?」
はい、と口で言うよりも速く、彼は首を縦に振る。そこに物怖じや遠慮はない。