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いつかの記憶、いつかの未来

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フルーツサンド屋「日々果」の日常、4作目。BLです。
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記事一覧

【BL連載】いつかの記憶、いつかの未来06

   城慧一・3

「城さんから、兄にもっと表に出るよう言ってくれませんか?」
 と、歩ちゃんが言ってきたのは、歩ちゃんが大阪に帰る当日のことだった。

 赤いキャリーケースを引いて店内に現れた歩ちゃんは、フルーツサンドを三つと甘夏サンドを二つ購入した。
「大阪まで?」
「はい。あ、でも、一つは帰りの新幹線で食べます」
 三、四時間くらいか。長時間の持ち歩きはオススメしないが、できる限りの対処はし

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【BL連載】いつかの記憶、いつかの未来05

   国吉轍・3

「こんにちは、フルーツサンドいただきました!」
 突然、スタッフルームから聞こえた声に、俺と濱くんの体が跳ねる。完全なる不意打ちだ。
 振り返ると、日々果の紙袋を掲げた歩がガラス越しに調理場を覗いて笑っていた。
 濱くんに一時作業を任せ、俺はスタッフルームの歩の元へ進む。
 ちらりと裏口を見ると、見慣れないキャリーケースが置かれていた。大阪に帰るのだろう。
 どうやら、あれから

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【BL連載】いつかの記憶、いつかの未来04

   城慧一・2

「菊ちゃんはさ、轍と初めて対面した時どうだった?」
 オレの質問は、菊ちゃんの丸い目をさらに丸くさせる。店に客がいない隙間だったから、轍の名前を出したが、それも菊ちゃんにとっては驚きだったのかもしれない。
「あらあら、また今回は。どうしたの、急に」
「んー……」
 子どもをあやすような口調になんだか情けない気持ちになるが、それと同じだけ甘えたい気持ちにもなる。大の大人だという事

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【BL連載】いつかの記憶、いつかの未来03

   国吉轍・2

 歩とは定休日の夜に夕飯を食べにいくことにした。休暇をとって戻ってきているから、平日でもいいと歩が言ったためだ。
 赤坂に美味しい店があるから行きたい、と歩が場所を決め、俺は言われるままついていく。この辺りは慧一が少し詳しいが、俺は全くの門外漢だった。パティスリーだと、駅から十分ほど歩いたところにシュークリームが絶品の店がある。夕食後にはもう閉まっているだろうから、それが残念だ

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【BL連載】いつかの記憶、いつかの未来02

   城慧一・1

 歩ちゃんと轍が向かい合って座ると、やっぱり兄妹だな、と思う。背丈も体格も全く違うが、まっすぐな眉や口元がよく似ている。
 さすがに轍と店内で話すことはできず、歩ちゃんは裏口からスタッフルームに入れた。午後の補充も一段落つき、轍が手を離しても大丈夫な時間帯だったのがありがたい。
「日々果って結構いろんなところに載ってるんだね、わたしも見たよ」
 歩ちゃんはテーブルに置かれた雑誌

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【BL連載】いつかの記憶、いつかの未来01

   国吉轍・1

『日々果』から自宅に帰ると、こもった熱気が充満している。リビングダイニングのドアを開けると、西日の熱で蒸された空気に息苦しさをおぼえた。ベランダに続く窓を開け、夜の涼しい空気を部屋に入れこむ。
 俺が扇風機のスイッチをつけると、郵便物を手に慧一がリビングダイニングに入ってきた。
「轍、実家からきてるぞ」
 実家から?
 心当たりがない。
 怪訝に思いながら手を差し出すと、そこに

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