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虹乃ノラン
2024年5月10日 20:44
第一章動かない猫「いってきまーす!」 スニーカーを履いて玄関から飛び出すと、四月の風が頬をなでる。通いなれた道を歩いて今年で六年目。満開まであと少しの桜と日差しが、気持ちいい。 急にぽかぽかしてきた陽気のせいなのか、ベンチで眠りこけてるお年寄りや、バスが来てるのにぼーっと立ち尽くしているスーツ服のお姉さんなんかで目白押しだ。 大人になると忙しすぎて、みんな疲れちゃうのかな。 そんなこと
2024年5月12日 22:20
第三章魚海町シーサイド商店街 タイムカプセルらしき銀色の球を掘り出した場所から数十メートル先には、じっと座ったままの白猫が、まだこちらを見つめていた。「不思議な猫だなー。ボクたち初めて見るのに、前にも見た気がするなんて」 白猫を見ながらマルコがつぶやくと、ミチルが言った。「わたしはなんだか、今日って日が始まったときから、ずっと不思議な気分がしてるわ」 相変わらず逃げようとしない白猫を眺
2024年5月26日 20:17
第十二章五人の写真「さて、じゃああんたたち、一体どんな料理が作れるの?」 紅葉がみんなの顔を眺め回す。ジョージはサラダ中心のヘルシーメニュー。僕は和え物中心のお年寄り受けメニュー。紅葉はおかずの概念を無視したご飯物オンリーのセット。マルコにいたっては、食べたい料理の名前をあげているだけ。「いやぁ……ハッハッハ。予想はしてたけど、このDグループは絶望的だな⁉ いっそピザでも注文しようぜ」