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【50】 静かなミソちゃん、どうしましたか

三週に一度の抗がん剤(ハーセプチン)も、残すところあと数回。
一年に渡る治療のカウントダウンの音が聞こえてきて心が躍ります。


そんなある日、ふと気づきました。

「ねえ、最近、ミソちゃんて静かだよね……」

「……静か? え、どういう意味?」
脳みそのミソちゃんが首を傾げます。

「いや、ミソちゃんて、これまで超うるさかったのに、どうしたの……?」
「……え、ミソって、うるさかったっけ?」
ミソちゃん自身も、自覚がないようです。


はっきり言って、ミソちゃんは、これまでの人生で、ずっとずっとうるさかった。うるさいなんてもんじゃなかった。

いつも、なんかかんか、アラートを出し続けるミソちゃん


考えてもどうにもならないことをくよくよと考え続けたり、過去の失敗、未来の不安、心配事を思いついてはそのことにとらわれ、ふらふらと思考がさまよって、どこかへ消えて、今度はまた新たなネガティブなことを考え始め、怒りを覚える……と思ったら、今度はまた別の……と思ったら、また別の不安……。


うるさい!
疲れる!
いい加減にしろ!

私はミソちゃんのポンコツっぷりに、ずっと腹を立ててきました。


この状態を、脳科学的には、マインドワンダリング(心の迷走)と言うそうですね。

「今ここで考えても仕方のないこと」を思い出し、この現在に引っ張り出してきて、気にして悩んで落ち込んだり不安になったりする。

例えば、土日で仕事が休みなのに、ずっと仕事のことを考えてしまう。そんなとき、カラダは休養していても、脳は休めておらず、常にアイドリング状態にあり、脳のエネルギーを減らしてしまうそうです。

アイドリングは、すぐに次の行動ができるという高度な脳の機能とも言えるようですが、だからこそ、かなりのエネルギーを消耗するそうです。


「なんかいつも疲れているなぁ」と感じるのは、勝手に「カラダが弱いから。自律神経失調症だから」と決めつけてきましたが、「ミソちゃんの疲労」が原因のひとつだったのではないか?


いつも思考がさまよい続けて、「今」を生きない私。

「私は、いったい、いつを、生きてきたのか……」


そのことに気づいてみれば、少し唖然としてしまいます。

老後の不安は、未来のことなのに、なぜか今現在、不安になって気持ちが沈んでいる。

次の通院日のことを考えて、「イヤだなあ、怖いなあ」という気持ちを、「今」味わって、「今」の幸福を下げてしまっている……。

「未来の不安は、未来にとっておけ」とよく言いますが、どうしても、それができなくて、困っていたのですよね。

ネガティブからネガティブへと、サーフィンしながら生きてきた私。

だからこそ、最近のミソちゃんの静けさに、気づいてびっくりしているのです。

余計なアイドリングが、減ってきたのかもしれません。


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