近くて遠い

今日もまた、アパートのドアをそっと締め、

ハイヒールを鳴らさないように家を出る。

眩しいおひさまの暖かい光も、小鳥がさえずる朝も

黒いカーテン越しには、何も届かない。

一晩中あなたのそばにいて、こんなにもあなたは近くにいるのに、

寂しいなんて感じる私はわがままなのかな。。

近くて遠い。

近くて遠い。

だーれもいない家に帰ってくるたび、

あなたがいなくなってしまったような気がして、

一人暮らしだった時なんかよりもずっと、

さみしくって恋しくて、あなたを遠くに感じるの。

せっかく作った夕飯もあなたは食べてくれないし、

口を開けば喧嘩になる。

ずっと好きだったあなたの声さえ、鼻歌なんか歌ってるのが

なんだか悔しくって、もう嫌いになってしまいそう。

きっと寂しいのなんて私だけなのね。

近くて遠いこの距離に、もうこのままじゃ、

胸焦がれすぎて灰になってしまいしそう。

だから今日で最後にするね。

明日からは、あなたのいない部屋に一人帰るけど、

もう泣いたりなんてしないわ。

遠いだけだったときよりも、近くて遠い方が

ずっとずっと寂しいって分かったから。

明日から私、毎朝ハイヒールを鳴らして家を出るの。

カーテンだって全開にして、おひさまの光を浴びるのよ。

あなたがいなくったって、きっとだいじょうぶ。

涙なんていつか乾くもの。

近くて遠い、近くて遠い。。。

今夜めいいっぱいあなたのことを抱きしめて、

そっと鍵を置いていくわ。

大好きだったけど、あなたはいつも近くて遠かった。

誰よりもきっと側にいたけど、あなたはいつも近くて遠かった。

ずっと一緒にいたかったけど、あなたはいつも近くて遠かった。

ずっと近くにいたはずのあなたは、いつも毎日遠くにいて、

今ではほんとに遠くなった。