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気になる本たち「感性に従え!」

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自分の書評、気になった書評をまとめています。
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2020年1月の記事一覧

(6/100)台湾新幹線をめぐる人々の物語『路(ルウ)』(吉田修一)

(6/100)台湾新幹線をめぐる人々の物語『路(ルウ)』(吉田修一)

「路」という文字は本来、石に蹴つまずき、それを転がしながら歩む細い横道を指すのだという。

2007年、台湾新幹線が開通する。『路(ルウ)』は、2001年受注に成功した時から開通までの6年間の物語。しかしこの物語には「台湾新幹線建設秘話」のようなエピソードは出てこない。

新幹線を輸出するために台湾に住み始めた商社勤務の春香。春香が学生時代の台湾旅行で一日だけ知り合ったはずの台湾人青年、人豪。日本

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(5/100)虫嫌いな僕が感動した一冊『風の中のマリア』(百田尚樹)

(5/100)虫嫌いな僕が感動した一冊『風の中のマリア』(百田尚樹)

百田尚樹の作品は、デビュー作が太平洋戦争を描いた『永遠のゼロ』だからだろうか、右翼思想の文学のイメージがあるかもしれない。

しかし、彼の作品はどれも「運命にまっすぐ生きた人たち」の物語なのだ。

第一部「帝国の娘」この本について、なんら事前情報もなく読み始めたこともあり、はじめのページにあるこのタイトルを見たとき、「今回も戦争ものか」と思いながら活字を追った。

読み進めると昆虫の話じゃないか。

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(4/100)『最後の秘境東京藝大~天才たちのカオスな日常』を読む

(4/100)『最後の秘境東京藝大~天才たちのカオスな日常』を読む



この写真は、昨年の東京藝大学園祭の様子です。
「牛頭馬頭」という地獄の番人を模した発泡スチロールのオブジェです。

Twitterでこの写真を見た時、「藝大すごいなぁ」と思い、気になっていたところに、今回の本と出くわしたわけです。文中にもこの学園祭のことが書かれていますが、この学生が着ている法被。このデザインも縫製も手作りなのだそうです。
図書館で順番を待つうちに年を越してしまいましたが、読み

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小泉進次郎さんの育休取得は、周囲に良い影響を与える? そのエビデンスをご紹介します。

小泉進次郎さんの育休取得は、周囲に良い影響を与える? そのエビデンスをご紹介します。

皆さんこんにちは。

小泉進次郎さんと滝川クリステルさんに、第一子が誕生されたとのこと。
「母子ともに健康」とのことで、まずはおめでとうございます!

小泉進次郎さんが、育児休暇を取得されるというニュースも、先日来報じられています。

これについてはいろんなご意見があるようですが、ここでは昨年7月に刊行した東京大学教授・山口慎太郎さんの『「家族の幸せ」の経済学』という新書から、

「育休は伝染する

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(2/100)人生の最後の生き方を描く『そうかもしれない』(耕治人)を読む

(2/100)人生の最後の生き方を描く『そうかもしれない』(耕治人)を読む

今年2冊目です。目標は年間100冊。ジャンルを選ばす気になった本を読んでいきます。

あらすじ痴呆症となった妻の介護と格闘する夫。作家としての人生を歩みながら、妻には無理なことを言い続けてきた。そんな反省と、自分も年老いて思うように介護できない現実。1986年から3回に渡って雑誌に掲載されてきた介護の現実を書き綴った作品。妻をケア施設に預けた後、自分もがんで入院してしまい、絶筆となっている。入院し

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(1/100)異なるものを認める、愛する『カモメに飛ぶことを教えた猫』はSDGsにも繋がる話だった。

(1/100)異なるものを認める、愛する『カモメに飛ぶことを教えた猫』はSDGsにも繋がる話だった。

今年1冊目です。目標は年間100冊。ジャンルを選ばす気になった本を読んでいきます。

あらすじカモメのケンガーは、油で汚染された海に浸かってしまい、やっとの思いで猫のゾルバが住む家のベランダに降り立つ。ケンガーは死の直前に卵を生み、ゾルバに卵を孵して空を飛べるようにしてほしいと頼む。

ゾルバは、仲間の猫たちの協力を得て卵を孵す。ひな鳥の名前はフォルトゥナータ。ゾルバたちは、フォルトゥナータを食べ

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