見出し画像

(6/100)台湾新幹線をめぐる人々の物語『路(ルウ)』(吉田修一)

「路」という文字は本来、石に蹴つまずき、それを転がしながら歩む細い横道を指すのだという。

2007年、台湾新幹線が開通する。『路(ルウ)』は、2001年受注に成功した時から開通までの6年間の物語。しかしこの物語には「台湾新幹線建設秘話」のようなエピソードは出てこない。

新幹線を輸出するために台湾に住み始めた商社勤務の春香。春香が学生時代の台湾旅行で一日だけ知り合ったはずの台湾人青年、人豪。日本で建築家として働く人豪が知り合った、台湾から戦後引き揚げて、日本の高速道路を造ってきた葉山。葉山と幼馴染の台湾人中野。登場人物の人間模様がすべて、台湾や台湾新幹線開通に関わる物語。

春香が台湾に出向するきっかけは、人豪への恋だった。人豪も同じ気持ちで東京に来たが、10年すれ違う二人。台湾時代、幼馴染の中野に酷い言葉をかけてしまったことを悔い続けた葉山。妻となった曜子を巡って中野とは恋敵でもあった。

台湾新幹線が大きな道だとしたら、主人公春香をはじめとした登場人物たちの人生や台湾での出来事は、それぞれが蹴つまづいた石だったのだろうし、それを転がしながら歩いてきた細い道なのだろう。

僕たちの人生は、時代や仕事に翻弄される。生きたいように生きていたとしても、その時代の中でという制約付きだ。僕が生きてきた過去やこれからの生き方も、まさに「路(ルウ)」なのだ。

画像1

でもなんだか、台湾っていいところみたいだなぁ。文中に「流れる街の景色が世界一なのが香港、立ち止まった時の街の景色が世界一なのが台湾」というセリフがある。

一度行ってみたくなった。

Shinichi/Miyazakiは個人の日常
オトカツは地元葛飾を盛り上げるアクションネームです。
ブログ: https://otonano-katsushika.blogspot.com/
Twitter: https://twitter.com/otonakatsushika
Instagram: https://www.instagram.com/otokatsugram/

この記事が参加している募集

#コンテンツ会議

30,767件