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#ほろ酔い文学

絶望の夜、抱きしめた憂鬱

絶望の夜、抱きしめた憂鬱

暗闇が手招きしている。やさしい黒は、わたしのことをどこまでも引き込んで、いつのまにか溺れてしまう。苦しみを言葉にするたびに、どうにか息が吸える気がする。鬱は今日も絶好調、治ることなんてありえないんじゃない?と笑えるほど。素敵な言葉ばかりを紡ぎたいのに、そんな風に上手くはいかない。人生ってたぶんこんなもん。憂鬱な夜ばかりを過ごすことにいつまで経っても慣れなくて、毎回新鮮な気持ちで堕ちてしまう。馬鹿み

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"もし僕らの言葉がウイスキーであったなら"

"もし僕らの言葉がウイスキーであったなら"

「これはね、村上春樹が愛したお酒なんだ」そう言って、ウイスキーグラスに注いでくれるカティサーク。帆船に黄色のラベルが目印、ブレンデッドウイスキーと呼ばれるそれをひと口。胸が熱くなって、どきどきするのはお酒のせい?それとも、なんて想いながら見つめ合う瞬間。そんな夜を、愛していた。



昨日は越してきて初めて、夜の街へ出かけた。地元のお洒落な場所なんて行き尽くしたと思っていた高校時代。大人になって

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生きてるうちに、好きと言え

生きてるうちに、好きと言え

夜中のコンビニ、スウェットですっぴん眼鏡も慣れたものだ。
びゅーびゅーと吹く風が、火照りを冷ますから、子犬のように身を寄せ合って歩く。
冬は君の手をポケットにお招きできるからいい、とバンプが歌っていたな、と思い出しながら、彼のポケットに手を突っ込む。
あたたかいおでんと一年ぶりに再会して、彼は「柚子胡椒をつけるとうまいんだよ、しってる?」と笑う。
安い缶チューハイに、暖かい部屋で食べると最高なアイ

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限りなく透明に近いブルー【日記】

限りなく透明に近いブルー【日記】

ふと見上げると都会の喧騒の中、じっと静かに佇むように満月が光っていた。月が綺麗ですね、と口に出してつい言ってしまう、そんな、魔法の夜。夏目漱石が"I love you"を"月が綺麗ですね"と訳した、というのはたぶん嘘だ。でもそんな嘘を信じたくなるくらい、ロマンチックで素敵な言葉だと思う。あなたなら、I love youをどう訳す?

私なら、「寒いね、寒いね」。冬のしんしんとした夜に、そう言い合え

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