夏原武

ライターです。漫画の原案・原作もやります、というか、最近はそっちがメインになってます。

夏原武

ライターです。漫画の原案・原作もやります、というか、最近はそっちがメインになってます。

最近の記事

身元保証会社

現代日本では個人を判別するにまずは、その所属を問う。つまり、「誰であるか」よりも「どこの誰か」が優先するということである。これは何も人間関係だけに限った話ではなく、あらゆるフェイズで問われることになる。もっとも分かりやすい例で言えば、不動産を借りるとき、クレジットカードを作るとき、「どこの誰か」を問われる。「どこの」を持たない人間はここで差別され不利益を被ることになる。 例えば筆者も含まれるフリーのライターやエディター、風俗産業に勤める女性、法人化されていない個人起業家などが

    • 公平で残酷な業界

       皆さんご存じの通り、私はもともとフリーランスのライターです。いわゆるノンフィクション系ライターと呼ばれるジャンルで、別冊宝島を中心に多くのルポを書きました。単著もあります。  その後、漫画の原作・原案を依頼されるようになりました。私の一番最初の漫画作品は、白泉社ヤングアニマルに連載された「事件屋 征四郎」という作品です。一巻分で終わりましたが、その後、コンビニ版単行本にしていただけました。  この仕事は単発でして、基本的には物書きの端くれとして過ごしていましたが、その後

      • lie lie lie(映画に関連して頼まれた原稿)

        正確なことは覚えてない(テキストの日付は1997年)。映画関連で頼まれたような気がするのが、以下のテキスト。 大手商社の代表取締役を名乗る男が実は稀代の詐欺師だった-豊川悦司演じる相川は胡散臭さたっぷりに登場する。この相川が行った詐欺というのが「取り込み詐欺」である。映画の中で行われた手口をご覧になれば、おおよその見当はつくと思うのだが、そもそも「取り込み詐欺」とはどんな行為をさして言うのだろうか。これは「品物を取り込」んで金を払わずにトンズラすること、と思って貰えばいいだ

        • オカルトと詐欺

          現在「カモのネギには毒がある」(グランドジャンプ・甲斐谷忍)を連載していますが、詐欺と悪徳商法のしぶとさには呆れると同時に、やはり、なぜ騙されるのかを考えてしまいます。 そこで、ちょっと考えていただきたいことがあります。それはオカルトです。厳密な意味でのオカルトの定義ではなく、いわゆる霊感商法などにも通じる非科学的な話です。 私はオカルトが大嫌いです。正確にはオカルトを信じている人間が大嫌いです。たとえば占い。血液型、星座、四柱推命……いったいなぜ信じられるのか本当に不思

        身元保証会社

          クロサギ2022 詐欺解説最終話

          さて、最終話です(個人的事情で遅くなりました)。 出てくる詐欺はファンドを装った融資詐欺ですね。融資詐欺というのは多くて、小さなものから巨額のものまで様々です。基本的には、融資を受けたいと思っている相手から、担保や保証金などの名目で金をだまし取ります。 勘の良い方なら思い浮かぶと思いますが、これはM資金詐欺が源流にあります。M資金とは日本を占領していた米軍のマーカット少将が、隠匿物資などを押収した資産を基にした巨額の資金を融資するという詐欺です。この詐欺は現在でも類似詐欺

          クロサギ2022 詐欺解説最終話

          クロサギ2022 詐欺解説第九話

          今回もあまり詐欺の話は出てきませんでしたね。「クロサギ」は基本、どのエピソードも詐欺がフィーチャーされてます。とはいえ、ドラマはまた別物ですから。 唯一詐欺っぽい話が、黒崎が海外ファンドの偽装日本法人を作るところでしょうか。 これはいわゆる「詐欺は門構え」というやつでして、ハッタリをきかせればきかせるほど、人は信じてしまう、そこを狙っています。 皆さんはご存じかどうか分かりませんが、一時期、商店街などで一部店舗が撤退した跡地を「レンタルスペース」として貸し出して、「卵一

          クロサギ2022 詐欺解説第九話

          詐欺に遭わないために

          なんであんなものに騙されるんだ。 詐欺被害を取材していると周辺人物から出るのが、これです。しかし、そんな疑問を打ち消すように誘導するのが詐欺師です。 絶対に誤解してはいけません。悪いのは騙すやつです。騙された人に対して「欲があったんだろ」「儲けたかったんだろ」といった批判は、詐欺師以上にたちが悪いです。セカンドレイプです。天地がひっくり返らない限り、悪いのは「騙したやつ」です。 それを踏まえた上で、私の取材経験から言えることが少しだけあります。決して「だからあなたは騙さ

          詐欺に遭わないために

          詐欺被害に遭われた方に

          詐欺、あるいは悪徳商法に被害を受けた方へ。 クロサギはあくまでもフィクションの話です。詐欺に対して詐欺を行えば、残念ながら犯罪になります。 私は偉そうに「儲けようと思ったんだろ」「欲をかくからだ」「自業自得」とは思いません。騙すやつが悪いに決まっています。 ただ、心の隙間を狙われるということは覚えて欲しいなと思います。日本のようにゼロ金利政策が続く国では、どうしても「より効率のよい資産形成はないのか」と思ってしまいます。 私が子供の頃は定期預金で年7%ぐらいの配当があ

          詐欺被害に遭われた方に

          クロサギ2022 詐欺解説第八話

          今回は医療法人を相手にした詐欺です。大手病院の多くは医療法人化しています。それには様々な理由があるわけですが、やはり、経営と医療の切り分けによる効率化、経営状態の改善が大きな目的の一つになります。医は仁術、とは今時誰も信じないでしょうが、いかに真面目にやっても、赤字では病院は維持できませんからね。 以前に取材したある医師はこう言っていました。 「はっきり言って、いまの保険制度では技術料というのはとても安いですからね。簡単に言えば、下手な医者ほど儲かるんですよ。たとえば歯科

          クロサギ2022 詐欺解説第八話

          クロサギ2022 詐欺解説第七話

          第七話に出てくる詐欺は二つですね。 一つは前話から続いている「導入詐欺」ですが、これは正確には導入預金詐欺です。バブル末期にはよく見られたやり方です。 バブル末期、総量規制が行われて不動産業者は融資を受けられなくなりました。しかし、土地はあるわけで、その資金として様々な手法がとられました。そのひとつが「社員に住宅ローンを組ませて、その金で不動産売買を行う」というものです。 私が取材したケースでも、銀行ではなく銀行傘下のファイナンスが融資し、その保証会社がこれまた銀行系列

          クロサギ2022 詐欺解説第七話

          クロサギ2022 詐欺解説第六話

          第六話、前話の分というわけではないでしょうが、いろいろ詐欺がでてきましたね。 クレジットカードで現金を作る、というのは「ショッピング枠現金化」として、登場しました。キャッシング枠よりも高額枠なので、それを利用しようというわけです。元々は借金で困った人が、手持ちのクレジットカードで現金化できる商品を購入して換金していました。新幹線の回数券が有名ですね。しかし、自転車操業ですから最後はパンクします。クレジットカード会社側もそれに気づき、クレジットカードでの商品券や新幹線回数券な

          クロサギ2022 詐欺解説第六話

          クロサギ2022 詐欺解説第五話

           さて、第五話では……と書こうとして、はたと困りました。詐欺、ほとんど出てきませんね(笑)。原作では御木本が仕掛ける詐欺などを扱っているのですが、ドラマ版ではほぼ出てきません。これでは「解説」のしようがないのです。  一瞬、話だけが出てくる「銀行で関係者を装って受け取る」というのは、古くからある「籠脱け詐欺」というやつです。銀行など信頼が得られそうな場所を利用し、あたかも、そこの人間であるかのように装って、金を受け取って逃げてしまうというものです。  この詐欺では、たとえ

          クロサギ2022 詐欺解説第五話

          クロサギ2022 詐欺解説第四話

          今回登場する詐欺は「ヘッドハンティング詐欺」と「M&A詐欺」です。御木本が登場していること、白石が黒崎に協力していること、オヤジが気にしていることなどから、四話にしてかなり、なんというか、ダイナミックな感じになりましたね。 さて「ヘッドハンティング詐欺」ですが、これはバブル前後から増えた詐欺で、本来のヘッドハンティングが増えたことにも由来しています。今の自分が本当に評価されているのか、もっと評価されるのではないか、そういう思いを持っている人が引っかかる詐欺ということになりま

          クロサギ2022 詐欺解説第四話

          クロサギ2022 詐欺解説第三話

          第三話で扱われたのは「知的財産詐欺」、原作では新クロサギ12巻に収録されています。 知的財産…あんまりピンとこないですよね。でも、この新クロサギの時代はもちろん、現代ではより注目を集めています。知財裁判所という専門の司法機関まであります。 ドラマの中でも出てきたように、海外では特許権を巡っては莫大な賠償金が支払われています。これは法律の違いによるもので、特にアメリカは先発明主義を取っていて、特許を取得せず、権利者以外の商売が軌道に乗ったところで訴えるという手法です。世界的

          クロサギ2022 詐欺解説第三話

          クロサギ2022 詐欺解説第二話

          第二話は複数の詐欺が登場します。 「出会い工作詐欺」「送りつけ詐欺」「カード詐欺」の三種ですが、メインは「出会い工作詐欺」です。 この詐欺はかなり根深いものでして、探偵や興信所が関わる詐欺として知られています。出会える、だけではなく、いわゆる「別れさせ屋」も同じカテゴリーに入ります。 ※ドラマに直接触れることはしませんが、今回はちょっと驚きました。ジャニーズのアイドル主演でこのネタをよくやったな、という意味ですが、まあ、この辺で。 さて、出会い工作とは何か。簡単に言え

          クロサギ2022 詐欺解説第二話

          クロサギ2022 詐欺解説第一話

          毎週金曜日22時放送の「クロサギ」で扱われている詐欺について、補足や解説をしようと思っています。 まずは、第一話で扱われた「セミナー詐欺」から。 原作では「フランチャイズチェーン開業詐欺」として扱われたエピソードを現代風にアレンジしたものです。原作連載時にはフランチャイズチェーン開業を謳い、退職金などを狙った詐欺が横行しました。職種は様々で、簡易印刷業や清掃業、携帯代理店などがありました。 今回は「セミナー」を利用した詐欺です。これもまた、独立起業を謳い、早期退職者や起

          クロサギ2022 詐欺解説第一話