クロサギ2022 詐欺解説第三話

第三話で扱われたのは「知的財産詐欺」、原作では新クロサギ12巻に収録されています。

知的財産…あんまりピンとこないですよね。でも、この新クロサギの時代はもちろん、現代ではより注目を集めています。知財裁判所という専門の司法機関まであります。

ドラマの中でも出てきたように、海外では特許権を巡っては莫大な賠償金が支払われています。これは法律の違いによるもので、特にアメリカは先発明主義を取っていて、特許を取得せず、権利者以外の商売が軌道に乗ったところで訴えるという手法です。世界的には先願主義(先に届けを出したものが権利を有する)なので、このやり方は非難されることも多いのですが、これまでの裁判例を見る限り勝つことはできません。

さて、今回のシロサギが何をしようとしたのか。詳しい説明がないので、分かりにくいですよね。原作をお読みの方は分かると思いますが、少しだけ説明しますね。

知的財産の権利には著作権や特許権などがあります。先頃、最高裁で判決が出たJASRACに対するものもその一つです。教室裁判とも呼ばれたもので、音楽教室で生徒がJASRAC管理の楽曲を演奏した場合に、使用料を払うかどうかというものです。結果、生徒の演奏は支払い義務なし、となったんですけどね。

この権利を複数で共有し、権利から得られる収入を配分しようという話を持ちかけて、実際には収入も発生せず、さらには権利侵害の賠償金なども発生しないというかなり悪質なものです。これの原型、お分かりになりますか?

社長が斬殺されて話題になった「豊田商事事件」です。実際には「金(ゴールド)」などないのに、権利だけを売りさばいたペーパー商法で、多くの被害を生み出しました。つまり、今回のシロサギは、ありもしない権利の所有者になれますよ、というペーパー商法をやっていたわけです。

こうした商法は、その後、和牛預託商法やジャパンライフ事件などへとつながり、手を替え品を替えて存続しています。絵に描いた餅は食べられない、これは誰もが知っていますが、なぜか、投資や権利ビジネスになると、絵に描いた餅に飛びついてしまいがちです。さらに海外での展開などという話が出てくると盛り上がりますが、これにも詐術があります。

かつて、南米のエメラルド鉱山の採掘権をネタにした詐欺がありました。また、ラスベガスのカジノ運営権というのも。どちらも、被害を生み出しましたが、こうした海外を舞台にした詐欺の最大の問題点。それは、確認することがとても難しいことです。現地に行くこと自体が大変です。ハワイの投資マンション詐欺なども同じです(有名人もやられました)。

対する黒崎が仕掛けるのは会社売却詐欺、MA詐欺です。これは割とありがちなのですが、モノローグにあったように「詐欺師は実業家になりたいという野心があり、表に出られるなら出たいという虚栄心がある」ので、単純でありながら引っかかり安い詐欺と言えるでしょう。

因みに、特殊詐欺(オレオレ詐欺)で億を稼いだある詐欺師は「警察庁の偉い人が逮捕状を消してくれる」と言って、数千万騙されました。払う前に電話を受けた私は「それ詐欺だろ」と言ったんですけどね。やっぱり逮捕状取り消しなら、総理大臣クラスじゃないとね(ははは)。

個人的理由で、第四話以降、12月初旬までこの解説、当日更新できないこともありますが、更新はしますので、暇で興味のある人は読んでくださると嬉しいです。

「最も流行に敏感な人種、それが詐欺師だ」(12巻あおり」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?