クロサギ2022 詐欺解説最終話

さて、最終話です(個人的事情で遅くなりました)。

出てくる詐欺はファンドを装った融資詐欺ですね。融資詐欺というのは多くて、小さなものから巨額のものまで様々です。基本的には、融資を受けたいと思っている相手から、担保や保証金などの名目で金をだまし取ります。

勘の良い方なら思い浮かぶと思いますが、これはM資金詐欺が源流にあります。M資金とは日本を占領していた米軍のマーカット少将が、隠匿物資などを押収した資産を基にした巨額の資金を融資するという詐欺です。この詐欺は現在でも類似詐欺が見られるほど、息の長い詐欺です。

大企業の役員なども騙された巧妙な詐欺ですが、基本としては無利子あるいはごく低額の利子で、数十億から数百億を融資するというものです。その課程で保証金や紹介料など、様々な名目で金銭を要求してきます。

架空の巨大資産を利用した詐欺は世界中にあります。ヨーロッパでも薔薇十字団の資金、中東カダフィの隠し財産、東南アジア系では山下財宝(旧日本軍の山下将軍の秘匿資産)なども有名なところです。他にもユダヤ資本、客家資本…まあ、よく考えるものですね。むろん、すべて嘘ででたらめです。

これら虚構の資産を利用した融資詐欺では、銀行の預金証書や保証小切手など仰々しい道具が多数登場します。もちろん偽造されたものです。しかし、海外発行のものとなると、その真偽を見極めるのもなかなか大変です。薬品をかけると元に戻るブラックドル(黒いドル紙幣)なんてのもありましたよね。

いずれにしても、それらしい名目で近づき、融資を前提としてお金を引っ張るタイプの詐欺は、現在でも普通に横行しています。

それを個人タイプに落とし込んだものがロマンス詐欺を代表とする国際系の詐欺ですね。SNSの発達によって世界は狭くなったそうですが、近づいてきたのは詐欺師ばかりというのは皮肉な話です。有名なクヒオ大佐などは、その元祖かもしれません(彼はSNSは使わないものの、電話などで巧みに嘘をつきまくりました)。

クロサギでは融資条件として担保を要求しているので、まだまだまともな詐欺と言えるでしょう。宝条ほどのやり手が引っかかるだろうか? という疑問もあるかもしれませんが、人は追い詰められると冷静な判断ができなくなります。原作ではカジノ関連などを題材に政界との絡みをより深く描いているので、その当りも読んで貰えると嬉しいです(我田引水ですが、あの時代に今日のIR汚職に近いことを描いたのは、ちょっと自慢です)。

今回でこの解説も終わりです。たいしたことは書けませんでしたが、今後も、折に触れて、詐欺や経済事件など、気になることがあったら駄文を投稿しようかなと思っております。

十回にわたってのお付き合いありがとうございました。

どうぞ、よいお年をお迎えください。

「赤の他人が儲け話を持ってくることはない」こともお忘れ無く。

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